最初は勝ちながらも半信半疑だった。しかし、勝つたびに確信を深めていく。それは自信となって、チームを後押しした。サッカーはつくづくメンタルスポーツだ。

「戦い方がはっきりとしてきた」

 
この日で140試合連続フル出場、横浜F・マリノスの守備を牽引する中澤佑二(中央)

 横浜F・マリノスの主将、齋藤学は試合後にそう明かしている。

 J1リーグ第17節。横浜は大宮アルディージャの本拠地に乗り込み、1-2と勝利を収めた。前半戦の折り返しで5連勝。順位は暫定で4位に上がり、首位も視野に入っている。

 では、横浜はどんな勝利パターンを身につけたのか?

 大宮戦の横浜は序盤、相手にペースを握られている。

 大宮は1トップの江坂任が巧みなポストワークで、MFと上下にスライド。ギャップでボールを受けては両サイドにボールを弾く。前線のプレーメーカーとして、抜群の能力の高さを見せた。チームとしてボールゲームを掲げ、プレスにもパワーをかけ、終始主導権を握ろうとするスタイルで、ぎゅうぎゅうと横浜をねじ込んだ。

 しかし、前半15分を過ぎると互角の展開になる。

「難しいゲームになると予想していました。マリノスとしては組織を作り、辛抱強くプレーするのが大事でした。前半は相手がプレッシャーを掛けてくるだろうから、慌てずプレーしようと。(それをしのいでからは)ボールを持って、ラインを下げさせられました」(横浜のエリック・モンバエルツ監督)

 横浜は戦略プランを着々と遂行する。ボランチの中町公祐が際どいディフェンスで守備のフィルターになり、中澤佑二、パク・ジョンスのセンターバックが屈強さを顕示。ボールは持たれても、相手の攻撃を吸収し、決定的瞬間をほとんど作らせない。

 もっとも、マリノスも攻撃は単発だった。DFとFWラインの距離は遠く、可能性の低いロングボールを蹴り込み、前線のウーゴ・ビエイラ、齋藤学、マルティノスの3人のキープやスピードに託すしかない。

 しかし後半になって、「辛抱」をベースにした戦い方がはまる。

 59分、相手の攻撃をしのいだ後、中澤が懸命に入れたくさびのパスを、センターサークル近くでウーゴ・ビエイラが反転。マーカーと入れ替わって前を向いてボールを運び、左サイドを走るマルティノスにパスする。マルティノスは齋藤とクロスしながらインサイドに切れ込み、右足を一閃(いっせん)した。

「後半は必ずチャンスがくると思って、それを見極められた」

 マルティノスはそう洩らしているが、貴重な先制点になった。

「後半、いい流れで入ったが、ミスからの失点で流れを失った。マリノスの試合巧者ぶりが……」(大宮の伊藤彰監督)

 その約10分後、横浜は敵陣でのパスカットから山中亮輔が左足を振り抜き、ゴールに叩き込んだ。

 0-2とされた大宮は3バックに変更し、両ワイドをえぐる作戦に変更。これが奏功した。特にスライドが追いつかない右サイドを攻め立て、FKから菊地光将がヘディングで1点を返す。マテウスが放った左足シュートは際どかったし、右CKからのヘディングも横浜陣営の肝を冷やしたはずだ。

 しかし、横浜はウーゴ・ビエイラに代えて走力のある富樫敬真を投入し、守備の強度を高め、試合をクローズしている。

 横浜の最近リーグ戦5試合の失点はわずか2。辛抱して刺す、という勝利パターンが確立されつつある。得点は10だが、実に後半に9得点を記録。相手の体力を奪いつつ、後半に仕留める戦法だ。

「我慢できる強さを、フロンターレ戦で得たことですかね」

 齋藤はそう説明する。

 第14節の川崎フロンターレ戦。横浜は前半、ほぼワンサイドで攻められたが、ブロックは崩れなかった。後半になってウーゴ・ビエイラが一発を沈め、その後は再び主導権を奪われるも、終盤に富樫が相手の背後を突くように追加点を決めた。

 守備の安定が、後半の攻撃の効率を高めているのが現状だろう。今シーズン途中、左利きのマルティノスが左、右利きの齋藤が右と”同足”になって、縦への推進力が高まり、手数を掛けない攻めの鋭さは増した。

 究極的なリアクションフットボールなので、先制された場合は苦しいだろう。しかし、ジリジリした展開だと威力を発揮する。1人、もしくは2〜3人で仕留められる齋藤やウーゴ・ビエイラを敵陣に潜ませておくことは、のど元にナイフを突きつけているも同じ。前がかりになった相手のミスを誘発できるのだ。

 指揮官であるモンバエルツは最後に、リーグ後半戦のカギについて語っている。

「セットプレーでの精度を、攻守で高めていきたい。なにより、自分たちのプレースタイルをどの試合でも発揮できるように」

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