千葉真一

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■俺をからめ捕った肉食系「野際陽子千葉真一インタビュー(上)

 女優・野際陽子が亡くなった。享年81。凛とした大物役者の死だけに、数多の著名人が哀悼の言葉を述べたが、彼女の素顔を最も知るのは、元夫・千葉真一(78)に違いあるまい。「日本一の姑」は「肉食系」だった――。以下は、22年間連れ添った千葉の追悼インタビュー。

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「ばぁか……。

 陽子にはそう言いたいね。

 仕事なんかやらなきゃ良かったのに。もうちょっとしっかりと休めば良かったのに。俳優は身体が第一だろ。それにもう年なんだからさ……。

 実は、俺は娘を通じて彼女にそう伝えていたんだ。でも聞いてもらえなかった。まぁ、あの人は仕事が好きで好きでたまらなかったんだよ。だからそれを全うしたということになるのかな」

千葉真一

〈そう語る、千葉真一。独特の口調に、アクション俳優ゆえの身振り手振りを交えて「元妻」を回想する。〉

「亡くなった(6月)13日は、俺は地方にいたんだ。陽子の死は、(娘の女優・真瀬)樹里からの電話で知った。俺より何より、樹里のショックが大きくてね。電話口でワーワー泣くんだよ。陽子は死ぬ前に、『ママの跡をしっかり継いでね』と言ったらしい。だから、俺は『見るまで信じない』と言ったんだ。本心かどうか、それくらいしか言葉が見つからなかった」

■「肉食系」の素顔

〈3年前、肺がんが発覚した野際は、以来2度の手術と抗がん剤治療を受けながら仕事を続けた。このクールもテレビ朝日「やすらぎの郷」に出演。茶の間に姿を見せ続ける中での“戦死”だった。

野際陽子

 千葉は、その野際と1994年に離婚するまでの22年間を夫婦として過ごした。しかし、訃報後は、一部のメディアにコメントしたのみ。今回、旧知の俳優・岡崎二朗氏を通じ、改めてインタビューを申し込んだところ、口を開いた。〉

「離婚後も、娘を通じて連絡を取っていたから、陽子の病気のことは知っていた。はじめはがんのことは、俺にも隠していたんだよ。でも2年前に入院してわかった。だから俺は娘を通して薬を送った。俺は身体が錆びない、永久に年を取らない水素水を飲んでいるけど、それを、ね。

 一昨年も体調が悪いのにスキーに行っていたと聞いてね。無理しちゃダメだよ、と伝えたんだ。本当は仕事なんてしないで、キチッと療養していれば良かったんだけど、あの人は仕事第一だったからな。昔からそうだった」

〈2人が結婚したのは、1973年のこと。キッカケはTBSドラマ「キイハンター」での共演だ。

 結婚は世間を驚かせた。千葉は日体大中退「肉体派」アクション俳優。他方、野際は「ミス立教」でNHKにアナウンサーとして入局。退社後はフランスに留学した「お嬢様」女優である。30代半ばでの結婚、しかも夫が3つ年下で、当時の週刊誌を繙くと「水と油」なんて表現が並んでいるが、〉

「違うんだよ。俺は嵌められたの。からめ捕られちゃったの。陽子ってね、めちゃくちゃ人見知りが強い子なんだ。気位が高そうに見えちゃうんだよね。だから最初はキライな女だった。でも、付き合ってみたらあんなに面白い女はいない。夜中の12時に『今どこにいるの?』『新宿だよ』『私、行く』って必ず来るんだよ。で、朝まで酒飲んじゃう。最近ちょっと俺に対する目線が違う、何だろう、気があんのかな、と思っていたら、ガンガン来たね。気が付いたら手を握られていた。『なんで握るんだよ』と言うと、『だってかっこいいもん』。この女とそんなことになっちゃヤベえと思っていたら、いつの間にかそんなことになっちゃって、『部屋に来ない?』って……。それが陽子が最期まで住んでいた(東京・文京区の)“川口アパート”だった」

〈付き合いも結婚も野際が“押す”。意外な「肉食系」の素顔が浮かび上がる。結婚式は、エーゲ海の客船上。こうして異色夫婦の新婚生活が始まったのだ。〉

■酒の横綱

「信じられないかもしれないけど、ほとんど夫婦喧嘩はしなかった。ホントだよ。陽子ほど男をうまく操る女はいないね。俺の性格を知っていて、接し方がうまいんだね。

 俺が機嫌が悪いとコロッと違うことを言って、笑わせたりするんだよ。

 バカさ加減が面白い。例えば、俺、陽子が俺の前に付き合っていた男を全部知ってるんだよ。何でって、陽子がしゃべるからさ。『この人』とは言わないよ。『この国の人』って。彼女は海外に留学していたからね。で、一部始終をベラベラしゃべるんだよ。あんまり言うから、『陽子、お前、そういう話を平気で俺にするけど、どんなに傷ついているのかわかってんのか!』と言うと、『あっごめんなさい。やっぱり傷つく? でも時効だから』。そりゃお前にとっちゃそうだけど、こっちは初めて聞くんだから! でもカラッとしているから、不思議と嫌味には聞こえない。『ま、いいか』で許せちゃう。だから喧嘩にはならないんだよ。

 それに酒豪でね。芸能界で『酒の横綱』と言われていた。俺の3〜4倍は呑んでいたよ。ワインが好きで軽く一本は空けていたな。一度、同じペースで呑んだら、ベロベロになって帰りのタクシーでやばいことになった。『あなたはお酒弱いんだから考えて呑まなくちゃダメよ』と窘(たしな)められたけど、朦朧とする中、『じゃあお前は考えてるのか!』と突っ込んだよ。ある時、『何でそんなに強いんだ?』と聞いたら、『私、胃下垂だから酔いが回らないの』。それを理由に呑みまくっていた。でも、酔いつぶれたりは一切しない。取り乱すこともなかった。陽子は楽しい酒だったよ。

 俺、トイレで本を読む癖があるのよ。陽子が帰ってきて、俺の姿が見えないと、『あなた!』『あなた!』と言いながら、部屋中探し回るんだよね。ようやくトイレとわかって、コンコン、『いるの?』とノックしてくる。『そうだよ!』と怒ると、『何だクソか』。結局、あの人にかかると、全部笑いになっちゃうんだよな」

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(下)へつづく

特集「俺をからめ捕った肉食系『野際陽子』 元夫『千葉真一』インタビュー!」

「週刊新潮」2017年6月29日号 掲載