少子化に歯止めがかからない。厚生労働省の人口動態統計によると、一人の女性が一生のうちに産む子どもの数(合計特殊出生率)は1.44で、前年を0.01ポイント下回った。人口維持に必要とされる2.07に遠く及ばない。

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少子化に歯止めがかからない。厚生労働省の人口動態統計によると、2016年に国内で生まれた日本人の子どもの数は97万6979人で、年間の出生数で初めて100万人の大台を割り込んだ。一人の女性が一生のうちに産む子どもの数(合計特殊出生率)は1.44で、前年を0.01ポイント下回った。人口維持に必要とされる2.07に遠く及ばない。

厚労省によると、出生数減少の主因は出産適齢期の女性が減ったこと。さらに30〜34歳の出生率が11年ぶりに低下。2016年の婚姻件数は前年より1万4633組少ない62万523組で、戦後最少である。初婚年齢の平均は男性が31.1歳、女性が29.4歳でともに前年と同じ。初婚年齢が上がる「晩婚化」のペースは和らいだが、結婚をしない「生涯未婚」を選ぶ人も増えたという。一方で離婚件数がこの10年余り毎年16万〜20万件と高い水準で推移していることも影響しているようだ。

また民間団体の「働く女性の意識に関するアンケート調査結果」でも、「人生は楽しむもので結婚や仕事が絶対とは思わない」が多数を占め、その他結婚や子どもは二の次というような答えもあったのに対して、「結婚して子どもを育てることが人生最大の目的」とした女性はたったのは3割にとどまっている。

このデータから見てとれる少子化や未婚率の増大・晩婚化は確かに女性の職場進出や高学歴化、教育費や子育て費用の負担増などが背景にあるが、それ以上に現代の女性が従来の「女性らしくそれなりの役割を果たせればよい」という抑圧された世界から解放されて、人生に違った価値や生きがいを見いだした結果であろう。

「子どもを持ちたいと希望する人が安心して産み育てることができる環境や条件整備をする」だけで、少子化問題を解決できるのか疑問である。

半面、われわれは発展途上国の人口増を問題にしているが、地球的視野で考えた場合、果たしてあの国の人口増は悪くてわが国のそれは良いという選民意識は通じないのではないかと思う。

数年前には、ある国があの調子で人口が増えると大変だなあと思っていたが、今や高齢者が増えているわが国と違って、若年層が増えていることを羨ましく思うようになったのは、私の年のせいかもしれない。

とにかく長期的に超高齢化社会へのシナリオがはっきりしているだけに、国という単位がいったいどうあるべきかまでも考える必要があるように思う。多くのイタリアの友人たちが国を超えての養子縁組をして、幸せに暮らしている事実のみを紹介しておきたい。

■立石信雄(たていし・のぶお)
1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長、財務省・財政制度等審議会委員等歴任。北京大学日本研究センター顧問、南開大学(天津)顧問教授、中山大学(広州)華南大学日本研究所顧問、上海交通大学顧問教授、復旦大学顧問教授。中国の20以上の国家重点大学で講演している。