『ゆとりですがなにか』『ぼくらの勇気 未満都市』……SPドラマの肝は“人物描写”にアリ

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 来たる7月2日と9日(日)の2回にわたって、宮藤官九郎脚本、岡田将生主演のスペシャルドラマ『ゆとりですがなにか 純米吟醸編』(日本テレビ系)が放送される。

参考:『ゆとりですがなにか』は宮藤官九郎の大きな転機にーー幸せな幕切れが示したメッセージ

 昨年4月から6月にかけて放送された連続ドラマ『ゆとりですがなにか』の続編にあたる本作。クドカン初の“社会派ドラマ”という触れ込みのもと、1987年生まれの若者たちーー“ゆとり第一世代”と呼ばれる若者たちが、仕事に家庭に恋に友情に、迷いながらも懸命に立ち向かってゆく様子を描いたこのドラマは、平均視聴率8.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、数字的にはあまり奮わなかったものの、岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラというメインキャストを中心とした役者たちの絶妙なアンサンブル、そして“ゆとり世代”というこれまであまり誠実に扱われることのなかったテーマ性が高い評価を獲得。今年3月には、本作の成果が認められ、脚本家・宮藤官九郎が、「芸術選奨 放送部門 文部科学大臣賞」に輝くなど、ある意味数字を超えて多くの人々に愛され評価された秀作ドラマであった。

 今回のスペシャルドラマでは、その最終回から一年後の世界が描き出されるという。ここで改めて、その最終回を振り返っておくとーー7年勤務した食品メーカーを退職し、家業の酒蔵を手伝うことにした正和(岡田将生)は、長らくつき合ってきた茜(安藤サクラ)と結婚。小学校教師の一豊(松坂桃李)は、紆余曲折を経ながらも、教育実習生の悦子(吉岡里帆)と交際することを決意した。そして、おっぱいパブの客引きをしていたまりぶ(柳楽優弥)は、11浪目にして、遂に大学受験に成功。内縁の妻・ユカ(瑛蓮)との婚姻届けを提出した。それから一年後、“ゆとり第一世代”である彼らは、どんな30歳を迎えるのだろうか。そして、彼らの下の世代にあたる若者たち――正和の会社の後輩であり、“ゆとりモンスター”の異名を持つ男・ひろむ(太賀)、就活に悩んだ挙句、ガールズバーでバイトしたり、妻子持ちのまりぶと不倫関係になったり、何かと家族を騒がせていた正和の妹・ゆとり(島崎遥香)、さらにまりぶの舎弟をしていた金髪の男・吉男(長村航希)は、それぞれどんな道を歩んでいるのだろうか?

 ところで、この『ゆとりですがなにか』も含めて、現在日本テレビは“スペシャルドラマ“の制作を積極的に行っているようだ。単発のオリジナル作品ではなく、いわゆる“シーズン2”でもなく、以前放送した連続ドラマの“その後の世界”を描いた、基本的には一夜限りのスペシャルドラマの制作。今年5月26日には、『帰ってきた家売るオンナ』として、昨年7月から9月にかけて放送された北川景子主演のドラマ『家売るオンナ』の“続編“が放送された。もともと平均視聴11.6%、全回視聴率二桁超えという安定した人気を獲得していたドラマではあったものの、5月に放送されたこのスペシャル版は、レギュラーシーズンの最終回と同じ、平均視聴率13.0%を記録。同時期に放送されていた民放連続ドラマの多くを上回る数字を叩き出すなど、一度視聴者から愛されたドラマは月日が経っても高い注目度をもって受け入れられることを、改めて示す結果となった。

 さらに日本テレビは、来たる7月21日(金)、KinKi Kidsの2人が主演した“伝説のドラマ”の20年後を描くスペシャルドラマ『ぼくらの勇気 未満都市 2017』の放送を予定している。1997年に放送され、平均視聴率16.8%を記録した『ぼくらの勇気 未満都市』。その最終回で、奇しくも「20年後、またこの場所で会おう」と言って別れた登場人物たちが、その約束を果たすべく、実際に20年が経った今、再会を果たすとあって、往年のファンはもちろん、多くの人々から大注目集めている、この夏必見のスペシャルドラマだ。そして、この秋には、昨年10月から12月にかけて放送され好評を博した、石原さとみ主演のドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』のスペシャル版が放送されることを早々と発表。どうやら、この流れは、しばらく続くものと思われる。

 上記のドラマに共通しているのは、主要キャストの多くが引き続き出演していることはもちろん、「ドラマ終了後から何年後」といった具合に、いずれも劇中世界の人々が、視聴者と同じペースで年をとっている点にあるように思われる。ドラマが終わったあと、あのキャラクターたちは、どんなふうに生きているのだろうか? そんな視聴者からの素朴な問い掛けに応える同時代感と、そう思わせるに足る魅力的な登場人物たちの造形。それこそが、この手のスペシャルドラマを実現させる、何よりの決め手となるのかもしれない。

 ちなみに、こうした形の“スペシャルドラマ”で、最も成功した事例を挙げるなら、やはり『北の国から』(フジテレビ系)になるだろう。1981年から1982年にかけて全24回が放送されたあと、1983年から2002年に至るまで、実に合計8本ものスペシャルドラマが作られた『北の国から』。その脚本家である倉本聰は、現在放送中のドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)のなかで、自身をモデルとしているであろう主役の石坂浩二に、奇しくも先日、こんな台詞を言わせていた。「(テレビ)局がそう仕向けているのかもしれないけど、今の脚本屋は、人を描くことより、筋が大事だって勘違いしてるんだ。視聴者は、本当は、筋を追うよりも、人間を描くことを求めているのにな」。

 筋を追うよりも、人間を描くことが大事。なるほど、上記のスペシャルドラマの魅力は、案外その“あらすじ”にあるのではなく、“人間”そのものが描かれている点にあるのかもしれない。だからこそ、多くの人に求められ、そして愛されるのだ。ということで、まずは7月2日の『ゆとりですがなにか 純米吟醸編』である。当代きっての人気脚本家のひとりであり、2019年には、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の脚本を担当することも決定している宮藤官九郎は、今回のスペシャルドラマのなかで、“ゆとり第一世代”の3人を、どんなふうに描き出してゆくのだろうか。クドカン自身も「思いの強い」ドラマだと公言している本作だけに、その内容に激しく期待したい。(麦倉正樹)