By Zhao !

機械が壊れたときには修理する、というのがごく自然な対応といえますが、ソフトウェア化が進んだ近年の電子機器は著作権が障壁となって内部に手を出せず、修理ではなく交換という対応をとらざるを得ないケースが存在しています。また、著作権を拡大解釈的に持ち出すことで、例えばコピー機の交換トナーカートリッジで他社製品が認められない、純正ディーラーによるサービスしか受けられない、という状況も生じています。そんな中、アメリカでは機器を「修理する権利」を法的に確実なものにし、なおかつ永久的に認めるべきだとする動きがおこっています。

The US Government Wants to Permanently Legalize the Right to Repair - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/d3zbnz/the-government-wants-to-permanently-legalize-the-right-to-repair

2017年6月22日、アメリカの著作権庁はある(PDF)報告書を発表しました。この報告書では、あらゆる機器を所有する全ての所有者がそれらを修理することを永遠に合法化するためにアメリカ政府は行動を起こすべきだ、という意見が示されているのですが、それはたとえ目的を達成するためには機器のソフトウェアをハッキングする必要があったとしても同様であるという点も画期的であるといえます。

アメリカで1998年に制定されたデジタルミレニアム著作権法(DMCA)は、音楽などの著作物を保護すると同時に、著作権保護技術を無効化することが可能な技術的手段を公開することをも禁じるなど、非常に強力な条項を含んでいることで知られています。特にDMCAのセクション1201では「著作権保護システムの回避」について記載されているのですが、この条項が存在するために、スマートフォンなどソフトウェアを内蔵して動作する機器を修理する際にソフトウェアの保護を解除するケースが生じたとしても、作業を継続することが違法であるという事態が生じています。



By Ronan

この制限は、徐々に高まりつつある「リペア・ムーブメント(機器の修理を推奨する動き)」の大きな障害となって立ちはだかっています。じつはこの「セクション1201」の規定を回避する方法が存在しているのですが、そのためには非常に複雑な法的プロセスを経る必要があるうえに、その有効期間が3年であるために、常に更新に向けたプロセスを繰り返す必要があります。さらに、1つのプロセスで認められるのは「スマートフォン」や「自動車のソフトウェア」など細かい分野に限定されるため、多岐にわたる修理に対する要望を満たすために多くの申請を3年ごとに繰り返さなくてはならないという状況となっています。

その状況に対し、アメリカ著作権庁が対応を求めたのが先述の報告書です。とめどなく繰り返される法的プロセスの実態に異議を持つ同庁はその報告書の中で、「高まりを見せるセクション1201に関する救済措置への要望は、善意に基づく修理およびメンテナンス行為は法を犯すものではないという理解と関連するものです。修理という行為はしばしば、複数の著作権法の条項による侵害請求から保護されているものです」と述べ、法律によって真っ当な修理行為までもが制限されているという実態について触れています。

報告書はまた、適用される範囲が「自動車」など具体的な用語を用いて限定されるべきではないとも述べています。これは、テクノロジーの進化スピードがとても早く、次々に新しい概念が生みだされ続けるために法律の整備が追いつかない状況が生じ、結局は次々に対象となる用語を追加するという状況が生じることを懸念しているもの。

アメリカ著作権庁にはここ数年、DMCAセクション1201に対するパブリックコメントが多く寄せられるようになっており、2015年あたりで急増する流れを見せています。これはすなわち、DMCAの規定により修理活動が制限されて影響を受けている人が急増しているという現状を示しているものといえます。



修理行為を法レベルで認めさせることを目指して活動しているThe Repair Associationの主要メンバーの一人であるGay Gordon-Byrne氏もこの流れを歓迎しており、特にOEM製品の分野ではDMCAの条文は無効化が進んでいるとの見方を示しています。Gordon-Byrne氏は、「最高裁判所は、プリンター用インクトナーカートリッジを再利用する基本的権利を支持しています。GEは、テキサス州で行われた麻酔器の修理をめぐる独禁法違反事件裁判で敗訴しています。この動きは、著作権法の乱用により修理とメンテナンスの行為が不当に独占されているという我々の見解を裏付けるものとなっています」と、現在の流れを歓迎する意見を明らかにしています。

著作権庁が発表した報告書ではまた、DMCAはメーカーが自社に関連した修理業者による修理サービスを顧客に強制させることを認めるために書かれたものではないことが示されています。今回発表された報告書はあくまで「意見」とみなされる段階であり、実際に法律として明文化されるにはまだ多くのプロセスを経る必要がありますが、法制に向けた動きは少しずつ進んでいる状況となっています。