『続・哲学用語図鑑』(プレジデント社刊、田中正人著、斎藤哲也編集・監修)

写真拡大

11万部超のベストセラーとなった『哲学用語図鑑』から2年。ついに『続・哲学用語図鑑』(田中正人著、斎藤哲也監修)が発売となります。書籍に収録した全70人の哲学者のうち、今回は「英米哲学」のプラグマティズム、分析哲学、科学哲学という3つの分野から、6人を紹介します。その哲学がギュッと詰まったイラストをご堪能ください――。

■有用であれば真理「プラグマティズム」

知識とは結果予測のことであり、なおかつその知識が人間にとって有用であれば真理であるとみなす立場をプラグマティズムと呼びます。

パースにとって「何かについての知識(概念)」とは「その何かにどのような行動(行為)ができて、その結果どうなるかの知識」のことでした。たとえば、「氷」を「知っている」ということは、「氷そのもの」を「知っている」ことではなく、「氷はさわると冷たい」とか「氷は熱をあてると溶ける」ということを「知っている」ということです。

たとえ形や素材が「氷」であっても、さわって冷たくなければ、それは「氷」ではありません。つまり何かに対する知識とは、その何かに対する行動の結果予測だということができます。こう考えると、知識(概念)は検証可能なものとなります。知識を行為の結果と結びつけたパースの考えをさらに発展させたのがジェイムズです。

ジェイムズは、ある知識をもとに行動した結果が有用であればそれは真理だと言います。これが実用主義です。また、デューイは知識それ自体に価値はなく、人間にとって有用な道具でなくてはならないとする道具主義を唱えました。

▼パース

プラグマティズムを創始したアメリカの哲学者。マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれで、父は大学教授。ハーバード大学で数学、物理学を学ぶ。卒業後、ハーバード大学天文台、合衆国沿岸測量所の技師として活躍しながら、「形而上学クラブ」を創設し、数学や哲学に関する論文を発表した。離婚をめぐるスキャンダルが原因で大学への就職に失敗。貧困状態で中年以後の人生を過ごした。

▼ジェイムズ

プラグマティズムを発展させたアメリカの哲学者、心理学者。ハーバード大学で医学を学び、医学博士号を取得。その後、アメリカではじめて心理学の実験所を設立し、心理学や哲学も担当するようになった。「形而上学クラブ」でパースとともに活動し、パースの思想を継承してプラグマティズムを確立した。日本の哲学者、西田幾多郎にも大きな影響を与えている。

■哲学を言語に転回「分析哲学」

哲学は古来、「真理」「善悪」「神」などを問題としてきました。けれどもこれらはそもそも人間が作り出した言葉です。つまり「神」とは何かを考えるのではなく、「神」という言葉がどのような意味で使われているのかを分析すれば、「神」の問題は解決できるということになります。哲学の役割は「〜とは何か」を考えるのではなく、言語(文)の意味を分析することだとする哲学を(言語)分析哲学といいます。

分析哲学は独断的、主観的だった哲学を客観的な言語の問題に転回させました。これを言語論的転回といいます。分析哲学はフレーゲ、ラッセル、ムーアの哲学に由来し、ウィトゲンシュタインを経て、現代の英米哲学の主流となっています。

▼ウィトゲンシュタイン

オーストリア生まれの哲学者。分析哲学や言語哲学の形成と発展に決定的な影響を与えた。父はオーストリア・ハンガリー帝国の鉄鋼王。ベルリンの工科大学で航空工学を学ぶが、関心は数学や論理学にあり、ケンブリッジ大学ではラッセルに師事。兄4人のうち3人が自殺、自身も志願兵になったり小学校教員になったりと数奇な人生を送った。

▼フレーゲ

ドイツの数学者、論理学者、哲学者。バルト海沿岸ヴィスマルに生まれる。イェーナ大学の後、ゲッティンゲン大学に移り、数学の博士号を取得。1874年、イェーナ大学の講師に指名され、以後44年間、同大学で数学を教える(96年、教授就任)。算術を論理から導く論理主義は挫折したが、20世紀の記号論理学や分析哲学をラッセルと共に切り拓いた。1925年、死去。

■天動説は科学なのか「科学哲学」

「科学的根拠がない」とか「それは非科学的だ」というようなセリフを耳にしたことがあるでしょう。それでは、科学であるための条件とは何でしょうか?

誰も見たことがない天使の存在は非科学的といえますが、原子も誰も見たことはありません。また、天動説は間違いだったので科学ではないといえそうですが、ニュートン力学にも間違いが発見されました。科学と非科学の線引きは非常に難しいのです。それを考えるために生まれたのが科学哲学です。科学哲学は論理実証主義から始まったとされています。

▼ポパー

オーストリア生まれのイギリスの哲学者。科学哲学、政治哲学の分野で今なお大きな影響を及ぼしている。ウィーンのユダヤ人家庭に生まれ、ウィーン大学で哲学の博士号を取得。その後、ナチスの侵攻を逃れるために、ニュージーランドに移った。戦後はイギリスに住み、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授をつとめた。

▼クワイン

アメリカの哲学者、論理学者。オハイオ州アクロン生まれ。ラッセルに触発され、数学を専攻してオバーリン大学を卒業、ハーバード大学哲学科で博士号を取得した。その後、同校で教鞭をとり、1948年同大学哲学教授に就任。論理実証主義批判を通じて形成されたクワインの意味論、存在論は、20世紀後半の言語哲学、科学哲学、認識論に多大な影響を与えた。

----------

著:田中 正人(たなか・まさと)
1970年生まれ。ロンドン芸術大学ロンドンカレッジ・オブ・コミュニケーション卒業。
MORNING GARDEN INC.において、グラフィックデザインを中心に書籍の企画、製作を行う。
監修:斎藤 哲也(さいとう・てつや)
1971年生まれ。編集者・ライター。
哲学・思想から経済・ビジネスまで、幅広い分野の書籍の編集や構成を手がけるとともに、書評・ブックレビューなども執筆。

----------

(田中 正人、編集者・ライター 斎藤 哲也)