NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』で、ナレーションを務める増田明美が「朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね、なんででしょうね」と語ったことで話題になった“変なおじさん”こと峯田和伸。有村架純演じる主人公・みね子の叔父・宗男として、作品に良いアクセントを加えている彼の魅力に迫る。

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 峯田といえば、ロックバンド「銀杏BOYZ」(現在は峯田一人だが)のボーカル・ギターとして活動し、多くのファンをもつミュージシャンであると同時に、出演作はそれほど多くはないが、俳優としてもドラマや映画で、非常に個性的な存在感を示している。

 俳優デビューとなったのは、田口トモロヲが初めてメガホンをとった映画『アイデン&ティティ』。ロックバンドのギタリストという、自身の立場と近しい主人公を好演した。この作品で峯田が演じた中島は一言でいえば、超のつくダメ男だ。彼女がいるのに女にだらしなく、理想ばかり追っているが、それを「ロック」という理由で片づけるなど救いようがない。しかし、ひとたびライブで歌声を披露すれば、その存在感に圧倒される。ミュージシャン峯田のポテンシャルを最大限に生かした作品だ。

 その後も、大槻ケンヂの原作をケラリーノ・サンドロヴィッチが監督した『グミ・チョコレート・パイン』ではAV男優役、宮藤官九郎監督作『少年メリケンサック』では、田口トモロヲ演じるバンドのボーカル・ジミーの若かりしころを若かりしころを演じた。

 どの役にも共通するのが“爽やか”とは正反対の“よどんだ”青春に劣等感をもつ男の悲哀だ。そんな峯田の特徴が最も爆裂しているのが、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』で演じた田西敏行だ。

 弱小玩具メーカーの営業マンとして働く田西は、人はいいものの、とにかくヘタレで素人童貞。そんな彼にも同僚の笑顔が可愛い、ちはると出会い純愛まっしぐら……かと思いきや、後半は地獄のような展開が続いていく。ここでも峯田は、恐ろしいほどに“格好悪い男”を悲哀たっぷりに演じている。

 格好悪い部分を包み隠さず、ストレートに表現しても、それが不快にはならず、逆に哀愁漂い、いつしか共感し、格好いいとも思えてきてしまう峯田マジック。『アイデン&ティティ』の中島も、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の田西も、格好いい要素ゼロなのに、観ているうちに感情移入し、応援してしまっているのだ。これは峯田のもつ、人に対する独特の距離感と間が影響しているのだろう。

 以前、ミュージシャンと俳優では、芝居において間の取り方が違うと語っていた女優がいた。確かに、峯田が主演した作品での対人物との間の取り方は特徴的だ。言葉を飲み込んでいるわけではないが、半拍程度、間がある。その間は、現在放送中の『ひよっこ』でもいえる。宗男が登場するシーンでは、確実に作品のテンポが変わる。一言でいえばタメができる。制作側もそこを引っ張って楽しんでいるように感じられるし、観ている側も余白を想像できる。ダメな男はよりダメに見えてしまう。

 例えば、今週、みね子の実家にやって来た宗男が木村佳乃や古谷一行と会話をするシーンも、演出上の音楽効果もあるが、シビアなシーンから一転するように雰囲気が変わった。そこには峯田の醸し出す間も影響しているのだろう。その後、電報、ビートルズの流れも、非常にスムーズで見ている人に期待を持たせた。

 「自身と役柄に境界線がないように感じる」と以前、峯田と共演した麻生久美子は舞台挨拶で語っていたが、役柄に憑依するというよりは、峯田に役柄が寄っていくということだろう。自身も本職はミュージシャンだという自覚があるようで、ロジカルに演じるというよりは、自身にシンクロさせているようだ。

 独特の間と、演じていないナチュラルさ、さらに格好悪ければ悪いほど漂う、悲哀の格好良さ。今後、宗男の見せ場も増えてきそうな『ひよっこ』だが、峯田が物語をどんなペースでかき乱してくれるのか――注目したい。

※公開時に一部誤りがありましたので訂正してお詫び申し上げます。

(磯部正和)