完全に本調子でなくても、クビトバは優勝候補の一角 [ウィンブルドンPreview]

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 ペトラ・クビトバ(チェコ)は、まだ左手の強さを完全には取り戻していない。それは、彼女がラケットを振るのに使っている手であり、彼女はその手で2度、ウィンブルドンのタイトルを獲得した。そしてそれはまた、昨年末、チェコの自宅で侵入者によりナイフで刺された手でもある。にも関わらず、この暴行による負傷のわずか7ヵ月後、クビトバはもう、オールイングランド・クラブでの優勝候補に限りなく近いステイタスを運んでいる。そこで、月曜日からグラスコートでのグランドスラム大会「ウィンブルドン」が始まるのだ。

 理解できることに、2011年、2014年にウィンブルドンで獲得したトロフィに、さらなるひとつを加えられるか否かは、今年の彼女の最大の関心事ではない。

 クビトバはAPへの電子メールの中で、「私はそんなふうにことを見ていない」と綴った。「私は、コートに戻ってこられたことが、ただただうれしいの」と彼女は言った。「私は自分に集中し、最初の試合より先のことは考えないようにするわ」。

 最初、もしかすると二度と同じようにプレーすることはできないかもしれない、と言われた者にとって、大会に出て戦っていること自体が、それだけで成就なのだ。先の12月に彼女の左手の指は5本ともナイフで傷つけられ、彼女は手術を受けなければならなかった。

「2度とプレーできなくなるのでは、という疑念は、間違いなく私の頭にあった。なぜってそれが医師の何人かが言ったことだったから」とクビトバ。「でも、私がカムバックできるか否か疑う人々の言葉を聞けば聞くほど、私はモティベーションを掻き立てられた。私は、それらの人々が間違っていることを証明したいと感じ、思うにそれが、私が回復のプロセスで頑張り抜く原動力になっていたのよ」。

 世界2位にまで上がったことのある27歳のクビトバは、ウィンブルドンで第11シードとなった。彼女は5月、全仏オープンの数週間前に練習を再開したに過ぎなかった。彼女はぎりぎりで全仏に出場することを決め、初戦に勝ったのちに2回戦で敗れた。

 カムバック後の2番目の大会となるグラスコートのバーミンガムで、クビトバは、決勝で13本のサービスエースを奪い、4-6 6-3 6-2でアシュリー・バーティ(オーストラリア)を下して優勝を遂げた。

 これはクビトバにとって、強力なサービスとパワフルなフォアハンドによってグラスコートで成功をおさめた、かつての自分に近づきつつあるというサインだった。

 彼女は腹筋の故障を理由に、今週のイーストボーンの大会を棄権したが、それもイギリスのブックメーカー(賭け屋)たちが彼女をウィンブルドンの優勝候補の一角と考える妨げにはならなかった。例えばウイリアム・ヒルは、クビトバを優勝候補のトップにリストアップした。

「確かに、自分がどれほどいいプレーをしているかに驚いているわ」とクビトバ。「これは本当に素敵な驚きよ。私は、かつてと同じようにハードヒットするための握力があるのか、確信が持てないでいた。でも私はバーミンガムで、私のサービスも、フォアハンドも変わらず強いということを示して見せた。指が強くなっていくにつれ、どんどんよくなり続けていくよう願っているわ」。

 妊娠中のセレナ・ウイリアムズ(セレナ)は、シーズン残りの期間、プレーを休止しており、マリア・シャラポワ(ロシア)は左腿の故障でウィンブルドンをスキップした。そのため、今回の出場者の中で、過去のウィンブルドン優勝者はふたりだけ。それはクビトバと、セレナの姉で5度の優勝経験を持つビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)だ。

 グランドスラムで18度優勝した元女王、クリス・エバート(アメリカ)は、クビトバは、この誰にもチャンスがあるオープンな女子のドローの中から浮上し得る、と考えている。

「大会に、あまり多くの----それも、もし、いたとしたら、だけど----グラスコート・スペシャリストがいないことを鑑みると、皆が注意を払わねばならないのは彼女だと思うわ」と、ESPNの解説者を務めるエバートは言った。

「彼女が潜り抜けたのは、本当に恐ろしい経験だった。そのことで、彼女は以前よりもずっとテニスを愛し、その価値を自覚するようになった。彼女は間違いなく、よりリラックスしているわ。彼女の記者会見、彼女の話し方を見ていればそれがわかる。彼女は、ただそこにいられることをうれしく思っているのよ。そしてそのおかげで、彼女は解放され、ベストテニスをプレーできるようになっているの」

 クビトバは言うまでもなく、現在の自分のテニスの質をうれしく思っている。そして、よりうれしいことは、ツアーで彼女を待っていた歓迎だ。

「ここまででもっとも素晴らしかったことのひとつは、他のプレーヤーたちからの反応なの。多くの選手たちが私のところまでやって来て、声をかけ、抱擁してくれた」とクビトバは言う。「バーミンガムで優勝したとき、本当に多くのお祝いのメッセージを受け取ったわ。それにパリで私が復帰後、最初の試合をプレーしたとき、非常に多くのプレーヤーたちがロッカールームで感情的になっていたと聞いた。だから、皆にふたたび会うことができ、選手仲間からそういうポジティブなエネルギーを感じることができて、本当にうれしいわ」。(APテニスライター◎ハワード・フェンドリック)(翻訳◎テニスマガジン)

※写真は「ウィンブルドン」(7月3日〜16日)のWTAプレ・パーティに出席したペトラ・クビトバ(チェコ)(写真◎Getty Images)
Photo: LONDON, ENGLAND - JUNE 29: Petra Kvitova attends the annual WTA Pre-Wimbledon Party at The Roof Gardens, Kensington on June 29, 2017 in London, United Kingdom. (Photo by John Phillips/John Phillips/Getty Images for WTA)