ドライバーの待遇改善は本当に進むのか 撮影:横田増生

「横田さん、株主だったんですかっ!」

 6月23日、ヤマト運輸を傘下に収めるヤマトホールディングスが開いた株主総会。私が株主の代理として会場に入ると、すぐに、顔見知りの広報担当が飛んできた。

 用意していた代理出席の委任状を見せると、一度は引き下がった広報だが、次は法務部や総務部が出てきて、代理人による出席は認められないと退席を命じられたのだった。

 私が、総会で質問したかったのは、未払い残業代の件だ。

 総会2日前、ヤマトは未払い残業代の支払いが40億円増えて、合計230億円になると発表した。理由は、「申告者の増加」。

 現役ドライバーたちは私にこう漏らしていた。

「申告したくても、上司のプレッシャーで全額は申告できそうもない」「金額の計算方法に疑問がある」「半年前から休職しているが、会社から支払いに関して連絡がない」

 朝日新聞によれば、総会でも、未払い残業代がさらに増えるのではないかと質問が飛び、山内雅喜社長が「ほぼめどがついた」と答えたという。

 私が今後のヤマトの経営を左右する大問題と考えるのが、「変形労働時間制」だ。

 ヤマトが、全社的な未払い残業代の処理に追い込まれたのは、2人の元ドライバーの告発がきっかけだった。昨年夏には、神奈川県内の労働基準監督署から是正勧告を受け、労働審判では、ヤマト側がほぼ要求通りの額を支払うことで今年3月に和解した。

 和解のポイントは、変形労働時間制の適用が認められず、未払い残業代がヤマトの想定の約3倍に上った点だ。

 変形労働時間制は、残業代圧縮の切り札だ。通常、1日8時間を超えると生じる残業代を、1カ月間など一定期間の平均を週40時間に収めれば支払わなくてよい制度だからだ。だが、適用を受けるには、1カ月前までに勤務時間を確定するなど、厳格な運用が求められている。

 これまで、ヤマトが全国で支払った未払い残業代は、同制度を適用した上で算出されてきた。しかし、もし適用されなければ「支払い額は2倍前後に増える可能性もある」と元ドライバーの代理人を務めた穂積匡史弁護士は語る。

 未払い残業代の問題は、いまだ終わっていないのだ。

(横田 増生)