「Thinkstock」より

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 首都圏の新築マンション市場は昨年から売上が鈍化し、マンション分譲各社は新規販売を抑制し、価格もできるだけ抑え気味にしていますが、それでも月間契約率は70%を切る低い水準で推移しています。

 といって、建築費や人件費などが高止まりし、地価が上がり続けている現在、価格を下げるのも難しく、“打つ手なし”の八方ふさがりの状態に陥っています。

 それに代わって好調で、価格も上がってきたのが中古マンションだったのですが、それも最近は変調の兆しがみられるようになってきました。もう少し待てば、本格的な値下がりが始まるのかもしれません。

●中古成約件数が新築発売戸数を上回る

 このところの首都圏における新築マンションの停滞、半面での中古マンション人気を象徴するのが、市場規模の逆転現象です。図表1でわかるように、首都圏のマンション市場では長く新築が圧倒的なシェアを確保してきました。市場規模でいえば2000年初頭までは中古は新築の半分以下だったのです。

 それが、08年のリーマンショック後には新築の発売戸数が激減し、13年に再び増加したものの、そこをピークに再び減少しました。そのなかで、中古マンションの成約件数は安定的に増加を続け、ついに16年には両者の関係が逆転しました。

 15年の新築マンション発売戸数は4万449戸だったのが、16年には3万5772戸とバブル崩壊時以来の低水準まで減少したのです。それに対して、中古マンションの成約件数は15年の3万4776戸に対して、16年は3万7189戸で、新築マンションの3万5772戸を1000戸以上上回りました。

●東京都の新築マンションは年収の10.9倍

 首都圏のマンション市場においては中古マンションが主役の座に躍り出ようとしているわけですが、その最大の要因が新築マンション価格が上がり過ぎて売れなくなった点にあるのは論を俟ちません。15年の平均5518万円から16年は5490万円にわずかに下がりましたが、この程度では平均的な会社員にとっては相変わらず“高値”の花です。

 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、全国で最も年収の高い東京都でも16年の会社員の平均は606万円です。首都圏平均の価格は5490万円ですから、年収の高い東京都民でも年収の9倍以上です。しかも、都内で求めようとすると東京都の平均価格は6629万円ですから、年収の10.9倍にもなります。

 そこで注目されたのが中古マンションです。図表2でもわかるように、13年あたりから新築マンションが急速に上がり始めるまで、中古マンションは2500万円前後で極めて安定した動きを続けてきました。新築に比べて2000万円以上安く、たいへん魅力です。

●最近では新築との価格差が縮小傾向に

 この差は新築の激しい上昇によってより大きくなりました。図表3にあるように、15年の新築と中古の価格差は2500万円を超え、中古価格は新築の52.4%まで低下したのです。新築なら中古のほぼ半値で手に入る、そんな市場が出現しました。中古が人気になったのは当然のことです。

 しかし、新築につられて中古もジワジワと価格が上がり、16年には価格差が2500万円を切り、新築に対する中古価格の割合は55.5%に上がりました。まだまだその差は大きいとはいえ、中古住宅を買う人たちはある意味では、新築を買おうとする人たちよりはるかに価格に対して厳しい目線を向けています。

 まあ、考えてみれば5000万円の物件が500万円上がったら1割アップですが、2500万円が500万円上がれば2割の上昇です。価格動向により敏感な中古住宅取得層ですから、こうした動きがマイナスに作用するであろうことは否めません。

●新規登録価格の値付けも弱気に

 実際の価格動向にも微妙な変化がみられるようになってきました。図表4は、首都圏中古マンション成約価格を平方メートル単価でみたグラフです。棒グラフの平方メートル単価はなだらかな右肩上がりですが、前年比の折れ線グラフは13年から15年までは10%近い水準で推移していたのが、このところは5%前後まで低下しています。

 依然として上昇基調ではあるものの、決して強含みとはいえず、いずれ右肩下がりになるのではないかという不安を感じる動きといっていいでしょう。

 実際、新規登録時の平方メートル単価をみると、天井感が強まっています。図表5をご覧いただくとわかりますが、新規登録時の平方メートル単価の前年比を示す折れ線グラフは明らかに右肩下がりのカーブを描いています。17年に入ってからは前年比の数値が0%台の月もあります。まだプラスを維持しているとはいえ、早晩マイナス圏に陥るのではないかというレベルといってもいいのではないでしょうか。

●新規登録価格が在庫や成約価格を引き下げる

 中古マンションの市場における価格には3つの種類があります。実際に売買契約が成立した成約価格、在庫物件の平均価格を示す在庫価格、そして新規に登録される価格の新規登録価格です。

 市場が活性化していて、売手より買手が多い売手市場であれば、売手は強気の値付けをしてきます。新規登録価格は在庫価格とほとんど変わらないか、むしろ在庫価格より高い価格付けを行ってきます。買手が多ければそれでもすぐに契約が成立し新規登録価格のまま、値引き交渉もなく契約が成立します。下の図表6でみれば、14年の8月あたりから15年にかけてがそうだったといっていいでしょう。完全な売手市場です。

 それに対して、売手が多く買手が少ないと、なかなか売れません。売手はできるだけ早くお客が見つかるように、在庫価格より安い価格で新規登録価格を設定してきます。しかし、買手が少ないとそれでもなかなか契約は成立せず、場合によっては大幅な値引きを行って、なんとか契約に――という買手市場になります。図表6でいえば、11年5月から13年初頭あたりまでが、その買手市場の典型といっていいでしょう。

●売手市場から買手市場への転換点なのか

 17年5月現在の動向をみると、図表6にあるように、新規登録価格と成約価格が前月に比べて下がっています。それまで右肩上がりのカーブを続けてきたのが、ここへきて在庫と新規登録価格は頭打ち傾向がみられます。右肩上がりからほぼ横ばいに近づき、直近ではわずかに右肩下がりになっているわけです。

 成約価格はトレンドとして右肩上がりが続いているものの、17年に入ってからは足踏み状態、横ばい圏に入っているようにみえます。しかも、直近の5月は若干ですが落ち込んでいます。

 そろそろ売手市場から買手市場への転換点が近いのではないでしょうか。中古マンションの購入を考えている人は、価格動向をじっくりと見極めて、しっかりと値引き交渉した上で、より有利な条件で契約するようにしたほうがいいのではないでしょうか。

 本来なら、完全な買手市場になるまでしばらく待ったほうがいいかもしれませんが、そうすると今度は住宅ローン金利の上昇や消費税増税などの問題が出てきます。悩ましいところだけに市場の見極めと決断が求められる難しい時期に入っているといっていいでしょう。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)