ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)の社名の由来は、創業者CEOの小川賢太郎氏の「全部で勝つ」という思いから生まれたとされている。だが同社をウオッチするアナリストからは「では、川中の流通部門の現状はどう説明するのか」とする声が聞かれる。

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 ゼンショーの今日は、M&A戦略を軸に築き上げられてきた。母店のすき家はともかく「ココス」「はま寿司」「華屋与兵衛」などの主たるブランドの多くは買収によって手にしてきた。こうした流れは「今後とも貴重な経営戦略」という形で中長期計画など各種の計画に、謳われている。

 しかし実はゼンショーは川下ばかりでなく、川中(流通)分野も展開している。主にマルヤ・マルエイ・尾張屋そして昨年10月には、群馬県のローカル食品スーパーのフジタコーポレーションを傘下に入れた。いずれもいわゆる「ブランド」スーパーではない。業界を知る向きは「比較的小ぶりな規模で、地域の勝ち組企業とは言い難い。それだけに何故買収するのか理解しがたい」とする。

 小川氏はビジネスビジョンとしてMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)を掲げている。要するに「食」に関する生産者から消費者までのバリューチェーン(価値の連鎖)の構築である。小川氏の言葉を借りれば「原材料の調達から製造、加工、物流、販売までのすべてを自社の管理下で行う」(ゼンショーホームページより)。

 それだけに疑問が膨らむのが「物流」の相対的な脆弱さである。しかしアナリストの間では「流通(食品スーパー)ルートは増やしていく予定だろうが、これまで同様の規模・ブランドの範疇に止まろう」とする声が強い。それでは「全部で勝つ」ことにならないのではないか。その答えのヒントは、他ならぬ同社のOBから得た。「ゼンショーはM&Aの企業。そのことを頭に考えれば答えは出てくると思うよ」。恥ずかしながら、即座にはピンと来なかった。数日を経て至った結論はこうだった。

 川下(料飲店)では、国内屈指と言って過言ではない。ゼンショー傘下の川下店と「太いパイプを持ちたい」とする食品スーパーも少なくないはず。現に先のOBによれば「提携を」という話が持ち込まれることも少なくないという。大が小を呑み込むだけがM&Aではない。背景に巨額な資金さえスタンバイしていれば「小」による「大」の買収も十分にありうる。傘下の「小ぶり・非ブランド」スーパーが川下の頭抜けた状態を武器に、中堅・準大手スーパーを呑み込むことは容易。

 ゼンショーにとり、全ての段階で勝つ必要はないのである。