米カリフォルニア州サンタモニカのサンタモニカ埠頭にある「ルート66」の終点を示す標識(2017年5月21日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

写真拡大

【AFP=時事】米国の「ルート66(Route 66)」は何十年もの間、世界中の旅人たちの想像をかき立ててきた。人々が冒険とより良い暮らしを求めて旅に出た米国史の過ぎ去った時代が、この道路から垣間見える。

 1926年に建設された2車線の国道を、作家ジョン・スタインベック(John Steinbeck)は「マザー・ロード」と名付けた。イリノイ(Illinois)州シカゴ(Chicago)からカリフォルニア(California)州サンタモニカ(Santa Monica)まで8つの州を横断する道路には、米国のエッセンスが詰め込まれているようだ。

 だが1980年代、より広く、より速く走れる幹線道路に押され、ルート66は廃線となった。道路沿いにあった家族経営の小さな店や、大衆向けのモーテルや軽食レストラン、ガソリンスタンドなども次第に閉店し、ルート66は歴史のごみ箱行きの運命をたどるかのように見えた。

 NPO「アメリカ歴史街道ルート66連盟(National Historic Route 66 Federation)」の創設者で常任理事のデビッド・クヌードソン(David Knudson)氏は「街ごとたたまれてしまい、2400マイル(4000キロ)にわたって続いていたかつてのカーニバルは、2400マイルのゴーストタウンになってしまった」と説明した。

 だが近年、この象徴的な国道は多数の書物、映画、有名なルート66の曲、テレビシリーズなどで人々のノスタルジーをかきたて復活し、世界中の観光客を引き付けている。

■究極のドライブ旅行

「外国人がこの道路を旅しに来るのは、地方の個性がなくなる前の米国を体験する機会が得られるからだ」と語るのは、歴史家で「ルート66:ザ・マザー・ロード(Route 66: The Mother Road)」の著作があるマイケル・ウォリス(Michael Wallis)氏だ。

 ルート66は全てが予測不可能で、いまだ冒険にあふれた道だと同氏は言う。「例えば、マクドナルド(McDonald)で何が出てくるかは分かっている…だけど、ルート66のような古い2車線道路では、カフェや安食堂、パイ屋、軽食レストランと色々あって、何が食べられるか分からない」

 ウォリス氏によると、ルート66にやって来る観光客で最も急増しているのは中国人とブラジル人、それから欧州人。未開の土地というイメージに惹かれ、「生涯の思い出となるドライブ旅行」のつもりで来るのだという。

 年に2回、ルート66のドライブ旅行を主催しているジョルト・ナジ(Zsolt Nagy)さんは「参加者は20代から70代まで。皆、この道路に魅了されて、ドライブを体験するために、マスタング(Mustang)のコンバーチブルやハーレーダビッドソン(Harley Davidson)に乗りたがる」と述べた。ツアー料金は1人当たり8000ドル(約90万円)だ。「景気は上向きで、道路も良くなり、看板もきれいになり、生き返りつつある」と語る。

 ジョルトさんはハンガリー出身。10年ほど前にドライブ旅行にやってきてこの荒野の道の虜になった。「ルート66の伝説はとてつもなく大きくなってきていると思う」と語った。

■「日没街」

 米国の画家ノーマン・ロックウェル(Norman Rockwell)の作品に凝縮されているように、ルート66は多くの人にとって今よりも純朴な米国のイメージをかき立てることだろう。だが、黒人の旅人が見たルート66は、もっと暗い側面を持っていた。

 この国道に沿って位置する89の郡の半数は、アフリカ系米国人の日没後の通行を禁じた「サンダウン・タウン」として知られていた。

 作家のキャンダシ・テイラー(Candacy Taylor)氏は、ルート66の旅行ガイドを調べていたとき「ネグロ・モータリスト・グリーンブック(Negro Motorist Green Book)」を発見した。そのガイドには、ルート66沿いで黒人にとって安全とされる場所がリストアップされていた。

 さらにこのガイドは、観光客に人気のあるミズーリ(Missouri)州スプリングフィールド(Springfield)の「ファンタスティック鍾乳洞(Fantastic Caverns)」を運営しているのが白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」で、KKKが鍾乳洞の内部で十字架を燃やす儀式をしていたことも暴いていた。

「荒野の旅に出て自由をつかむという、いかにも米国らしい物語のすべて、そしてそれにまつわる記号や象徴は、黒人にとってはまったく別の物語だった」とテイラー氏は言う。「マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やエルビス・プレスリー(Elvis Presley)のように、ルート66は米国の象徴の一つ。でも、それは完璧でも光輝いてもいない。その象徴、その幻想の米国の姿には、多くの亀裂が入っている」
【翻訳編集】AFPBB News