LILI LIMITが最新作で広げた“表現の幅” 『LAST SUPPER EP』にこめられた仕掛けを読み解く

写真拡大

 国内外の様々な音楽を昇華したアイデア満載のサウンドと、日常に根差した歌詞の世界観で、サカナクションらを筆頭にした音楽とアートが深く関わり合う日本のロックバンドの系譜に連なる5人組・LILI LIMIT。昨年デビューアルバム『a.k.a』をリリースしてツアーを開催し、今年は4月からCzecho No Republic、フレンズ、ねごとを迎えて対バン形式の東名阪ツアーを回ってきた彼らが、2017年の第一弾作品にふさわしい『LAST SUPPER EP』を完成させた。

 アルバム『a.k.a』ではストリングスなども前面に押し出して重層的なサウンドを鳴らしていた彼らだが、このEPではむしろドラムやギター、キーボードなどが織りなすアップビートでダンサブルな魅力を全開に。4月のツアーファイナルでも演奏されたリード曲「LAST SUPPER」はまるでテクノを彷彿させる四つ打ち&キーボードの音色や洒脱なカッティングギターが印象的で、『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)のEDテーマになった2曲目の「LIKE A HEPBURN」は、イントロの東洋風のシンセやエレポップ風の音を経てギターサウンドが広がるLILI LIMIT流の四つ打ちダンスロック。続く3曲目「ERAION」では大胆にデジタルビートを導入し、4曲目「STREET VIEW」でも他3曲よりはスローテンポながらドラムビートや終盤のピアノソロでアクセントを加えるなど、全編を通してまだ見たことのない、LILI LIMITの新たな表情が感じられるような作品になっている。

 とはいえ、本作の大きな魅力に思えるのは、それがいつものLILLI LIMITらしい、日常の機微を宿し歌詞と一緒になることで生まれる独特の雰囲気だろう。それを支えているのはやはり、牧野純平(Vo)が手掛ける歌詞の世界観だ。彼の歌詞には独特の言語感覚や言葉遊びを持ったものも多いが、すべてに共通しているのは、パーツ一つひとつを取ると普遍的な言葉でありながら、その並べ方や語り方/音とのコントラストを工夫することでカメラの画角を少しずらすようにリスナーの想像力を刺激する、独特の視点を持っていること。今回の「LAST SUPPER」ではアップビートな音に「別れ」をテーマにした歌詞を乗せることで、ただ別れを嘆くのではなく、むしろ様々な「出会い」と「別れ」が重なって日常が進んでいくような風景が豊かな余韻を持って目の前に浮かんでくる。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』にオマージュを捧げたMVなども含めて、音/歌詞/アートワーク/MVなどすべてが密接にかかわりながら楽曲の世界を広げていく様子もこのバンドならではだ。

 また、全編を通して聴くと、それぞれの楽曲が一部のモチーフを共有していたり、テーマとして繋がっているように感じられるのも、このバンドならではだろう。これまでも『Etudes』で各曲の繋ぎにノイズやSEを使い全編が繋がっているような構成にしたり、『a.k.a.』ですべての曲名の頭文字を並べ替えると「also known as」になるというユニークな構成で作品を作ってきた彼らだが、今回は「LAST SUPPER」での「別れ」や「最後の晩餐」に通じるモチーフが他の楽曲にもちりばめられ、「LIKE A HEPBURN」では「晩餐」と対比するように「朝食」のモチーフが出てきたり、「ERAION」ではナイフとフォークの音を表現したような音を挿入。この辺りは〈だんだんと足音響いて〉という歌詞に連動するかのようなドラムの音色も含めて、『a.k.a』収録曲「A Short Film」で映画の効果音をつけるフォーリー・アーティストをテーマにしていたこととも繋がるようだ。また、ラスト曲「STREET VIEW」では、「出会い」という単語を登場させることで、「LAST SUPPER」と対をなすような楽曲で作品を締めくくっている。

 4曲を聴いて改めて感じるのは、LILI LIMITの音楽には誰もが夢中になれるような間口の広い大衆性と、細部までこだわり抜いた仕掛けやアイデアが、それぞれの楽曲の中で自然に同居していること。音楽的には新たな挑戦をしながらも、それがあくまでバンドが過去に積み重ねてきたキャリアの延長線上に花開いているような雰囲気からも、LILI LIMITらしい魅力が浮かび上がってくるようだ。いわば、過去のキャリアや、バンド本来の魅力を大切に残したうえで表現の幅を広げた最新モード。このEPをたとえるなら、こんな言葉が似合うのではないだろうか。

 9月2日からは全国5都市を回るツアー『LILI LIMIT presents Archive』も開催予定。音楽性がさらに豊かに広がりつつある今の彼らがそこでどんなステージを見せてくれるのかも、今から楽しみで仕方がない。(文=杉山 仁)