ヤフーが提供しているディレクトリ型検索サービス「Yahoo!カテゴリ」が、2018年3月29日に終了することが発表された。

Webニュースなどでは、「1つの時代の終わり」的な文脈で取り上げられている。

しかし、多くの人にとっては、
「そもそもディレクトリ型検索サービスって何?」
という感じではないだろうか。

いまWebにおいて、誰もが自由に知りたい情報にアクセスできるのは、Googleなどの検索サービスが、世界中のあらゆるWebサイトの情報を蓄積し、検索キーワードに関連付けして、検索結果として表示してくれるからだ。

利用者であるユーザーは、どの情報がどこにある、という所在をわざわざ知っておく必要はない。

しかし、最初から現在のように便利だったわけではない。

インターネット初期には、誰がどんな情報を発信しているかを知る術は、はっきり言ってなかったのだ。

◎ディレクトリ型検索が始まる前は電話帳をめくっていた!?
では、何で情報を得ていたかというと、
まず、個々人が集めたブックマークやリンク集である。

インターネット活用を謳った雑誌にはさまざまな記事でWebページが取り上げられていた。
また、リンク集だけを本にした「Web版イエローページ」といった類の書籍が何種類も発売されていた。これは、Web上のページをカテゴライズして電話帳のように見せる本である。
いまではちょっと信じられないが。

もちろん誌面で紹介するURLは、ブラウザで手入力しなければいけない。
そこで、少しでもその手間を省こうと、リンク集をHTMLファイルにまとめたCD-ROMを付録で付いたり、長いURLを手打ちしなくても済むよう、5桁〜7桁の数字と変換するサービスを利用したりしていた。

今のインターネットしか知らない世代には、想像もできないほど不便に感じるだろう。

そんな頃、登場したのが「Yahoo!」なのだ。
Yahoo!は、ポータルサイトとして、Webサイトのリンクをカテゴリで分類し、階層的にたどれるという「ディレクトリ型検索サービス」を始めたのだ。

これは当時、画期的なサービスであり、あっという間に世界中に広まった。

日本でもソフトバンクグループがヤフー株式会社を設立し、「Yahoo! JAPAN」を開始する。
Yahoo!に続き、ほかにも数多くのポータルサイトが登場した。ポータルサイトのトップページには「アート」「コンピュータとインターネット」「教育」など、カテゴリ名が並び、ユーザーはそこから自分の知りたい情報に行き着くことができた。

ディレクトリ型検索サービスは、階層的な分類構造を持ち、それぞれの分類に適したWebページが登録されている。なかには、オープン公開され、誰もが好きにWebページを登録できる類の検索サービスもあったが、当時のディレクトリ型検索サービスの主流は、
ユーザーが登録を申請する
→可否や分類を人が判断する
という流れであった。
登録をする・しないの判断をするのは、担当する人間だった。
人の判断により情報の精度を担保するのだ。そこに価値が発生していた。

◎「クローラー」ロボットが収集した情報
一方、Googleが提供する検索サービスは「ロボット型」と言われ、自動的にWebをクロールするクローラーが収集した世界中のWebページをデータベースに蓄積する。
そしてユーザーが入力した検索キーワードに対し、独自のアルゴリズムで検索結果を表示する。

「検索キーワードがタイトルや本文テキストにただ含まれています」というだけではなく、コンテンツの中身にも関連があるとされる結果を出すのだ。ページランクの詳細は公表されていないが、どれだけほかのページからリンクされているかなどで重要度を測るものとされている。
このほかにも複数の指標を用いて、精度の高い検索結果を導き出す。

GoogleのほかAskやBingなど、検索エンジンもいくつかあり、現在のポータルサイトでは、こうした検索エンジンが導入されている。

そして今や、検索エンジンがなくては、Webで必要な情報を探すことはできないといっても過言ではないだろう。
なかでも、Googleのシェアは一強で、Googleに検索されないというのは、
・誰もWebサイトに行き着けない
・Webでの存在がないも同然の情報
になってしまうとまで言われる。

◎インターネットの入り口は、ポータル(ブラウザ)から検索システムへ
「Yahoo!カテゴリ」サービスの終了は、時代が本当に変わってしまうのだと思い知らされるニュースなのだ。

1996年4月1日のサービスの開始時に約15,000だった登録サイトもいまや約80万サイトにのぼる。もちろん、その過去資産としての価値はどうなるのか? あるいは、フェイクニュースが席捲するWebにおいて、人手を介した精度の高い情報は、今こそ必要なのに……という声も多くある。

しかし、そうした声があっても、冷静に考えれば、
現在のインターネットの入り口という役割は、ポータルサイトから検索エンジンに置き換ってしまっているのだ。

さらにスマートフォンの登場で、「Siri」や「OK Google」など、音声入力でローカルデバイスとインターネットの境界を意識せず、さまざまな情報にアクセスできるようにもなっている。しかも、個別のアプリを直接用いない形で、だ。

そう考えると、ブラウザでの表示に最適化されたディレクトリ型検索サービスは、やはりこれまでの見せ方ではもう成り立たないのだろう。

同じ仕組み(人が判断するプロセスを含める)をモチーフとして使うにしても、どう使われるかの部分をリデザインする必要があるといえるだろう。


大内孝子