薬を飲むだけで頭がよくなるなんてうまい話が…(画像はイメージ)

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「馬鹿につける薬はない」などということわざがあるが、「飲むと頭がよくなる」とされている薬があることをご存じだろうか。

厚生労働省は2017年6月22日、海外から輸入された脳の機能を高める効果があるとされる「スマートドラッグ」と呼ばれる医薬品の中に、本来はてんかん患者やアルツハイマー患者の脳機能の調整の目的で用いられる医薬成分が含まれているとの報告を受け、「医薬品の個人輸入について、見直しの検討を進める」と発表した。

飲むと頭がスマートになる薬?

「スマートドラッグ」はその名の通り「頭をスマートな(冴えた)状態にする」効果があるとされる医薬品。日本国内では単純に「頭がよくなる薬」などと呼ばれることもある。もともとは欧米で大学生などが服用していたもので、スマートドラッグの利用法などを詳細に解説したウェブサイトが英語では多数確認できる。

特定の医薬品ではなく、脳機能の活性化や神経の保護、再生効果を持つとされるいくつかの医薬品がスマートドラッグとされている。広い意味ではカフェインやDHA、ビタミンといった栄養成分などを含むサプリメントもスマートドラッグに含めることもあるようだ。

当たり前の話だがスマートドラッグを飲んだからといって試験の成績が上がる、難関校に合格するなどという事例が確認されているわけでもエビデンス(科学的証拠)があるわけでもない。

米国のスマートドラッグ紹介サイトを見ると、服用することで集中力や記憶力の改善が期待でき、勉強などでも成果も上がりやすくなるとされている。確かに、脳機能の活性化や神経の保護といった作用によってこうした効果が得られる可能性はある。

では、厚労省が問題視しているのはなぜなのだろうか。同省が具体的に挙げているのは「ピラセタム」という医薬品だ。ピラセタムはスマートドラッグの中でも特に主流の医薬品のようで、海外の販売サイトなどでも頻繁にその名前が登場する。

ピラセタム自体は違法薬物などではなく、てんかんや脳梗塞、ADHDなどの治療薬として用いられるが、健康な人が治療目的以外で大量もしくは長期間に摂取した場合の有効性・安全性は確認されておらず、いくつかの副作用も確認されている。特定の病気の既往歴がある人が服用した場合、重篤な副作用も発生する可能性があり、気軽に飲んでもよいものではない。

また、厚労省は「保護者が児童・生徒に服用させる事例があると報道されている」とし、16歳未満の服用が禁忌とされているピラセタムを子どもが飲んでいる可能性があることにも危機感を示している。

個人輸入と称して実態は販売

厚労省は健康上の問題だけでなく、医薬品の流通面でも問題があるとしている。ピラセタムは医薬品医療機器等法(薬機法)で「処方箋医薬品」に指定されており、自由な売買は禁じられている。患者が医師からの処方箋を持って薬局で受け取るしかなく、誰もが服用できるわけではない。

しかし、一定量であれば本人が服用する場合に限って海外から個人輸入によって入手することが可能なのだ。つまり、薬機法の穴を利用してスマートドラッグとして購入することができる状態にある。さらに「スマートドラッグの個人輸入代行」などと謳い実質的な販売行為を行っていると思われる業者も存在しており、医師の指導下で服用すべき医薬品が自由に服用できる状態になってしまっているのだ。

最近は流通の穴を利用して偽造薬が出回った事件も話題になっており、医薬品流通の見直し、厳格化が求められているのも、今回の発表の一端にあるかもしれない。

厚労省によると現在対策案として「処方箋がなければ個人輸入も認めない」という方向性を示しており、インターネット上の情報をもとに「スマートドラッグ」のリスト化を進めると共に、医療団体や学会からの意見を踏まえ、具体的な規制方法を策定するとしている。