【原ゆみこのマドリッド】成長が著しすぎて…

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▽「これはもしや渡りに舟?」そんな風に私がポジティブに考えようとしていたのは木。ガメイロが恥骨炎の手術を受け、全治2カ月。その間、前線でグリーズマンとペアを組める選手がフェルナンド・トーレスとコレアしかいないという状態で、アトレティコはリーガ開幕を迎えるという記事を読んだ時のことでした。いえ、FIFAからの処分で新規加入選手は望めないものの、7月6日に始まるプレシーズンにはビエット(昨季はセビージャにレンタル)が戻って来ますけどね。

▽他にも昨季のレンタル先であるポルトで活躍していたらしいジオゴ・ジョタ、さらにテネリフェで1部昇格プレーオフ決勝まで頑張ったカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)のアマトら、幾人かFWのアテがない訳ではないんですよ。

▽ただ、、ズラタン・イブラヒモビッチ(マンチェスター・ユナイテッドを退団)はまあないかと思いますし…。ジエゴ・コスタ(チェルシー)やビトロ(セビージャ)がやって来られる1月まで、シメオネ監督も腹をくくるしかないかと。その期間は、U21ユーロのスペイン代表を率いるセラデス監督同様に、サウールをもっと上の位置で使って、チームの得点力アップに役立てようと思ってくれるかもしれませんね。

▽ちなみにどうしてそういうことになったのか、お話ししていくことにすると…。先週、3連勝でグループリーグを突破したスペインはこの火曜、準決勝で強豪イタリアと対決。といっても相手には大人の代表程、有名な選手はいなかったんですが、前半は拮抗した展開が続きます。それどころか、GKケパ(アスレティック)がペッレグリーニ(サッスオーロ)のシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)して救われるという危ない場面もあったんですが、大丈夫。このRojita(ロヒータ/U21スペインの愛称)には優れた人材が溢れているんです。

▽その中でも、「Llevaba bastante tiempo esperando este momento/ジェババ・バスタンテ・ティンポー・エスペランドー・エステ・モメントー(この瞬間をずっと待っていた)。自分の人生にとって最も大事な試合の1つで、それを利用することを知っていた」と意気込むセバジョスが52分にも敵エリア前で何人ものDFをかわしてサウールにラストパス。すると、初戦のマケドニア戦、2戦目のポルトガル戦でも先制点を決めていたアトレティコのカンテラーノはこの日も的を外さなかったんです!

▽おまけにその5分後にはガリアルディーニ(インテル)が一発レッドで退場し、これでスペインは決勝に向かってそのまま突っ走るかに思われたんですが、もちろん世の中、そんなに簡単には行きません。ええ、イタリアでは1人、図抜けて存在感があったベルナルデスキ(フィオレンティーナ)が守備陣の乱れを突くと、62分にエリア前からシュート。このボールがバジェホ(昨季はアイントラハトにレンタル、マドリーに復帰予定)に当たり、同点ゴールになってしまうとは、まったく油断ならないじゃないですか。

▽そこですぐさま流れをスペインに引き戻したのがサウールで、その3分後に今度はエリア外からGKドンナルンマ(ミラン)を破ってしまったから、私も呆気に取られたの何のって。いえ、それどころか、74分にもアセンシオが折り返したボールをネットに収め、とうとうハットトリック達成って、ちょっと!! そんなクリスチアーノ・ロナウドやメッシ、アトレティコならファルカオ(現モナコ)やグリーズマンら、スーパーFWだけの専売特許技ができるなら、何でMFなんて名乗っている?

▽いえ、グループ1節のマケドニア戦で3ゴールを挙げたアセンシオもMFですけどね。彼はジダン監督のBチームメンバーでプレー時間もそれなり。となると、恐るべきは「El hambre que tiene cada vez que viene con nosotros es tremenda/エル・アンブレ・ケ・ティエネ・カーダ・ベス・ケ・ビエネ・コン・ノソトロス・エス・トレメンダ(ウチに来る時、毎回の彼のハングリー精神は凄まじい)」(セラデス監督)のもありますが、あれだけシーズン中、人手不足のアトレティコで出ずっぱりだったにも関わらず、この時期になっても衰えないサウールの体力だったかも。ええ、これには先週末の1部昇格プレーオフ2ndレグに柴崎岳選手との交代で出場。最後はヘタフェに及ばなかったものの、そのテネリフェで2部の超ロングシーズンを過ごしたお兄さんのアーロンもビックリしていたんじゃないでしょうか。

▽そのままスペインが3-1で勝利、決勝進出を果たした後には、「Es el primero que consigo y lo voy a cuidar muy bien/エス・エル・プリメーロ・ケ・コンシーゴ・イ・ロ・ボイ・ア・クイダル・ムイ・ビエン(初めてのハットトリックだから、よーく面倒看るよ)」と、いそいそと試合球をお持ち帰り。そんな素晴らしい活躍を見せているサウールについて、アトレティコのセレソ会長は「サウールはアトレティコと長期契約をしているから、no se va a ir a ningun sitio/ノー・セ・バ・イル・ア・ニングン・シティオ(どこにも行かない)」と断言してくれましたし、契約破棄金額も今の8000万ユーロ(約103億円)から、グリーズマンやオブラク並の1億ユーロ(約128億円)に上げるようですしね。できれば、新スタジアムのミックスゾーンで私も来季、お目にかかりたいかと。

▽え、これでドイツと王座を懸けて戦うことになったスペインだけど、他の選手たちが目標だった決勝進出を叶えて喜ぶのに留めているのと対照的に、サウールだけが「Este equipo se merece ser campeon/エステ・エキポ・セ・メレセ・セル・カンペオン(このチームはチャンピオンになるに値する)」と強気だったのは印象に残らなかったかって? まあ、アトレティコではあと一歩というところで、なかなかタイトルが獲れませんからね。その分、彼も周りに上手な選手の多い代表では貪欲になってしまうんだと思いますが、今回、スペインがツイているのは、相手のドイツは現在、コンフェデレーションズカップにも出場中。

▽そちらにはクロース(マドリー)やエジル(アーセナル)、ケディラ(ユベントス)、ミュラー、ノイアー(バイエルン)といった、来年開催のW杯予選を戦っている主力メンバーを呼ばず、大会最少の平均年齢23.8歳という若手チームで挑んでいるため、U21に出ている選手たちなど、輪をかけて、馴染みのないメンバーになっていることですが、まあ決勝は決勝で結果の読めない試合ですからね。木曜にコンフェデ準決勝でメキシコを4-1と圧倒したドイツBチームも相当、強かったですし、今回のCチーム、U21ドイツの選手たちも「スペイン相手には汚いプレーをしないといけない。小さなファールから始めて、楽しくサッカーする気分を失わせないと」(メイヤー、シャルケ)とか、「ちょっとホットな戦いをしてやれば、彼らは嫌がるだろう」(ポーラースベック、2部のカイザースラウルテンからハンブルクに移籍)なんて、物騒なことを言っているため、用心は必要かと。

▽一方、予定が大きく変わってしまったのはその前日、水曜のコンフェデレーションズカップ2017準決勝でプレーしていたロナウド。いやあ、チリと0-0で延長戦に突入したまでは良かったものの、まさか続くPK戦でクアレスマ(フェネルバフチェ)、モウチーニョ(モナコ)、ナニ(バレンシア)がGKクラウディオ・ブラボ(マンチェスター・シティ)を前に次々と失敗。相手はアルトゥーロ・ビダル(バイエルン)、アランギス(レバークーゼン)、アレクシス・サンチェス(アーセナル)が3人とも成功したため、当人まで順番が回らず、0-3で負けるって、ほとんどありえないシナリオじゃない? うーん、確かに彼には2012年ユーロ準決勝のスペイン戦でも最後のキッカーを買って出て、結局、蹴る前に負けが決まった経験がありますけどね。

▽昨年のCL決勝ではそれこそ、ファンフランがポストに当てた後、マドリーの5本目を決め、ウンデシマ(11回目のCL優勝のこと)を引き寄せた記憶の方が、2012年のCL準決勝バイエルン戦で第1キッカーを務め、見事にノイアーに弾かれたことより新しい出来事となれば、この順番を選んだのも決して責められないかと。まあ、日曜にはコンフェデ決勝観戦を楽しむつもりだった私もマドリッド勢のいないチリvsドイツになってしまった不運を嘆くしかありませんが…。また、開催時間も午後2時(日本時間午後9時)と丁度いいし、3位決定戦でのリベンジを期待していたロナウドファンには残念なお知らせが。

▽というのもこの試合の直後、ポルトガルサッカー協会は彼の代表離脱を許可。子供が生まれたばかりなのに参加していたからだそうですが、え、そうだったんですか? 丁度、当人もこれがいい機会だと思ったのか、自身のフェイスブックで「ようやく息子たちと初めて一緒にいられることになって嬉しい」と公表していましたが、でもまた代理母出産なんですよね。

▽実はすでにその噂は3月頃からあって、サン(イギリスのタブロイド紙)などでは双子の男女でマテオ君、エバちゃんと名前まで出ていたんですが、どうやら6月8日には無事出産が済んでいたよう。7歳になる長男のクリスチアーノ・ジュニア君同様、ロナウドの母、マリア・ドロレスさんがアメリカまで迎えに行ったとかで、うーん、これって、かつての彼女、ロシア人モデルのイリーナさんもそうでしたが、現カノのジョルジーナさんもまったく立つ瀬がないんじゃないかと思ってしまう女性はきっと、私以外にもいるかと。

▽まあ、それはともかく、木曜の夕方には2人の赤ちゃんを抱いているロナウドの写真も投稿されている状況なので、マドリッドで待っているペレス会長がロナウド慰留のため、話す機会を設けるのもまた、ちょっと先になってしまうかもしれませんが…。幸い、水曜夜にラジオ出演した会長は「Estoy convencido de que va a seguir/エストイ・コンベンシードー・デ・ケ・バ・ア・セギール(彼が残留することを確信している)」と楽観的。何せ、ロナウドが動けば、「Si traemos a Mbappe, quien sale?/シー・トラエモス・ア・ムバッペ、キエン・サレ(もしムバッペ獲ったら、誰が出て行く?)」と彼が言っていた、モナコの18歳を1億3000万ユーロ(約167億円)出して、本当に獲っちゃうかもしれませんし、そしたらイロイロ玉突きで強豪チームのFW大移動が始まる可能性も…。

▽その一方で、7月11日になれば、ジダン監督もチームを率いて、こちらは本家、アメリカのロサンジェルスキャンプに出発しないといけませんし、23日のユナイテッド戦を皮切りにプレシーズンマッチではバルサ戦、カカやビジャ、シュバインシュタイガーといった大物も出場するかもしれないMSL選抜戦と、面白そうなカードが幾つもあるとなれば、できれば7月上旬ぐらいは静かであってほしいと願ってしまうんですが、さて。とりあえず一時の猛暑は収まり、ここ数日は涼しすぎるぐらいになってしまったマドリッドなだけに、私もバケーションの計画を練るのに最適な環境をゲット。その間には大きな移籍騒ぎは起きないでほしいものです。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。