相談役や顧問の廃止を魔女狩りにしない! 実効性のある見直しを

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 日本の企業ガバナンスが揺れている。東芝の不正経理発覚以後再三伝えられる不祥事によって、世間の耳目を集めてきた相談役や顧問の存在と役割に対する疑問が、大きなうねりになって来た。

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 相談役や顧問という役職は英語に翻訳しにくい言葉で、日本企業に特有の制度であることを象徴しているが、ソニーは2006年、東京電力ホールディングスは2012年に顧問制度を廃止した。阪急阪神ホールディングスや、大手デパートの大丸や松坂屋を運営するJ.フロント リテイリングも今年の株主総会で定款を変更し廃止、日清紡ホールディングスも29日の株主総会をもって廃止した。

 武田薬品工業には2004年半ばから相談役や顧問は存在しないが、長谷川会長が相談役に就任することになり、報酬や役目について説明書簡を株主へ送付した。その書簡の中では、報酬・待遇の具体的な内容や、「事業判断に関与する可能性がほとんどない」ことについて記述するなど、異例の内容となった。しかし、今後は武田薬品のケースを前例として対応をする企業が、増えるものと予想されている。

 機関投資家側の株主総会への姿勢も変わって来た。上場企業の相談役や顧問の肩書で役員経験者が居座ることについて、機関投資家側が懐疑的な姿勢を強めている。国内外の機関投資家からは「企業との対話を活用して相談役の役割や有無を確認する」といった声が聞こえてきた。また、米ISSのように、議決権行使助言会社の中には相談役・顧問制度の新規導入に反対を推奨する方針を明確にするところもある。

 経済産業省は既に金融庁や東京証券取引所と協議を開始。相談役や顧問の役割を明示するよう上場企業に促す、ルールづくりに乗り出した。経産省は相談役や顧問の役割を、企業が東証に提出する文書(コーポレート・ガバナンスに関する報告書)に新しい項目を設けるような仕組みを検討している。

 以上のように、相談役や顧問を取り巻く環境は大きく変化した。肩書は変わっても、過去の栄光を引き摺って、周囲から持ち上げられ続ける時代は終わりを告げようとしている。しかし、魔女狩りにしてはならない。魔女狩りは存在そのものを憎み、排除することが目的になる。必要性に自信があるのであれば、武田薬品工業のようにきっちり説明して就任させる見識もまた必要である。日本社会に特有の横並びに終わるのであれば、日本社会全体で払った膨大なコストの意味がない。実効性のある相談役・顧問の見直しになって欲しい。