楽天も出資の「中東のウーバー」Careem創業者が描くアラブの未来

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中東のウーバーとして知られる配車サービスがドバイを本拠とする「Careem」だ。同社はこの地域で唯一のユニコーン企業であり、アラブ地域ではウーバーの一歩先を行くポジションをとっている。

Careemの共同創業者のMudassir Sheikhaは39歳のパキスタン人。米国のスタンフォード大学で学んだ後、8年間をシリコンバレーのスタートアップで過ごした。中東発のCareemはアラブ地域の人々の需要に応え、モロッコからパキスタンまでのエリアをカバーしている。この地域の人口は7億人に及び、Sheikhaによると「将来的には1日に1億5000万から2億件の乗車回数が見込める」という。

設立から5年でCareemは、11カ国の60都市に1000万人以上の登録ユーザーを抱え、彼らが”キャプテン”と呼ぶ契約ドライバー、25万人を擁している。

Sheikhaは2012年に米国のコンサルティング企業、マッキンゼーに勤務していた時、スウェーデン人のMagnus Olssonと出会い、Careemを二人で共同創業した。中東初のライドシェア系のスタートアップであるCareemの企業価値は、今や10億ドルを超えている。

Sheikhaはライドシェアでアラブ世界に革命をもたらすことを目論んでいる。公共交通は未発達で自家用車の所有率もアラブ世界では非常に低い。米国での自動車所有率は80%だが、サウジアラビアでは40%、エジプトでは5%、パキスタンでは2%以下だ。さらに、サウジアラビアでは女性の運転免許の取得が認められていないという現実もある。

グーグルマップも役に立たない

2016年6月、ウーバーはサウジアラビア政府の公共投資ファンド(Public Investment Fund)から35億ドル(約3900億円)の資金を調達し、この地での勢力を拡大しようとしたが、Careemには地元企業としての先行者メリットがある。

2016年の年末の時点でCareemは、累計4億2500万ドル(約476億円)の資金をサウジテレコムや日本の楽天から調達していた。調達資金はウーバーよりは少ないがSheikhaは地元の顧客やドライバーのニーズを理解し、独自に作成した地図やコールセンターを構えることでウーバーに対抗できると考えている。

SheikhaとOlssonはマッキンゼーにコンサルタントとして勤めていた頃、各自の専属ドライバーを与えられてはいたが、約束の時間に運転手が現れず、道を知らない兄弟や親戚がやってくることも度々だった。「支払いは現金のみ。クルマに乗る度に値段交渉をするのも骨の折れる作業だった」とSheikhaは当時を振り返る。

ライドシェアでアラブ社会に革命をもたらそうという二人の思いがCareemを生んだ。Careemはアラビア語で気前の良さを意味する言葉だ。ドバイの企業向けの配車サービスとして始動したCareemは、徐々に個人ユーザーの支持を獲得し、空港への送迎に使われるようになった。子供を学校に送る主婦層の利用も広がり、Careemはコンシューマー向けサービスとしてのポジションを確立した。

Careemが最初に直面した課題は、ドバイではグーグルマップのカバー範囲も限られていることだった。これに対処するため従業員を小さな町に派遣し、独自のマップも作成した。Careemは今では地図製作の専門チームも編成し、ロケーション情報の蓄積を行っている。「グーグルやノキアの地図は偉大な発明だが、アラブでは役に立たないことも多い」とSheikhaは言う。

ウーバーとCareemの最大の違いは、Careemが地域に根ざしたサービスを目指している点だ。例えるならば中国におけるDidiや、インドにおけるOlaのように、シリコンバレーで生み出されたアイデアを地域にふさわしい形に適用していく事が、Careemが長期的視野で描いているゴールだ。