実際のところ、最近の磐田(●2-4)、鳥栖(●1-2)は真っ向勝負で敗れている。自陣を固めてカウンター一発に沈む、そんな過去の負けパターンと異なる。
 
 最近のいずれの試合もプレッシングの掛け合いから主導権を握られ、サイドの攻防でも劣勢を強いられた。西川やDF陣のミスがなければ異なる結果になっていたかもしれないが、失点が続いているのは事実。しかも最近は守備でリズムが狂い、攻撃まで機能度が落ちる悪循環に陥っている。
 
 とりわけ最近の2連敗では、ハーフコートゲームを狙うのか、バランスを重視するのか、守備ありきで割り切るのか……。そのあたりが曖昧になっている。
 
 そして鳥栖戦のあと、選手たちから共通して聞かれたのが、「考えすぎている」という声だった。
 
「こういう時は、考えすぎてしまう。あえて、何も考えないのも手のひとつだと思う。もちろん抵抗はあるが、力を抜いてやることも大切かもしれない」(西川周作)
 
「後ろのバランスを崩している。相手に良い選択肢を多く持たせてしまっている。一つずつ後手に回ってしまっている。『守備から』の意識が強すぎたかもしれない。もっとシンプルにプレーしてもいい」(遠藤 航)
 
「立ち止まるわけにはいかない。打開して進んでいかなければ。今はそういった状況。ちょっと難しく考えすぎているのかもしれない。一度整理しなければ。結果が出ていないとネガティブになってしまう。一度クリアにして、チームとして打開していきたい」(阿部勇樹)

 そういったコメントからも、選手たちに迷いが伝わってきた。
 
 監督を交代するには、大きな代償を伴う。しかも6年間積み重ねてきた特殊なスタイルをシーズン途中でリセットするのは、マイナス面のほうが多いように感じる。何より監督のみに責任をなすりつけて悪循環を断ち切ろうとしてきたクラブの悪しき歴史に、逆行するだけではないか。

 それより優先すべき作業がありそうだ。例えば選手から「原点」に戻るというコメントが聞かれたが、本当にそうすべきなのか? そもそも原点とはどこを指すのか? ハーフコートゲームは捨てるのか? そういった共有すべきビジョンは明確にして、整理することが先決ではないだろうか。

 もちろん、ペトロヴィッチ監督に、今、戦い方の決断が求められているのは事実。貫くべき信念とこの窮地を脱するための柔軟性。そのバランスの取れた何かしらの対策が求められる。

 では具体的(やや現実離れもしているかもしれないが……)な打開策について考えてみたい。
 
 今、チームの最大の問題点として、失点が止まらないこと、そして閉塞感が漂っていること、その2点が挙げられる。それでも指揮官はGKと3バック、ボランチの顔触れは変わらない。

 もちろん指揮官はキャンプ中から新戦力の融合を試みてきたが、独特なスタイルとあって、要求に応えるレベルに合う選手がなかなか現われてこなかったという。確固たる信頼関係。言い換えれば、盤石、そして無風区――。そのジレンマを打開するにはどうすればいいか。
 
▽阿部や青木拓矢のストッパー起用?
 
 ストッパーは槙野と森脇が不動のまま5年目を迎える。しかし今季、そのふたりが守備で後手を踏むプレーが増えている。福岡からレンタル移籍で加入した田村友は戦術にフィットしきれず、森脇の欠場中は宇賀神友弥が代役を務めていた。その宇賀神は現在負傷により別メニュー調整中。
 
 阿部や青木を実戦で起用してみるのは、ひとつの荒療法になるのではないだろうか。 青木はストッパー起用もあり得るとして14年に獲得している。ストッパーのみならずボランチの競争を促せるのはメリットだ。