LOVE PSYCHEDELICO KUMIが今音楽で伝えたいこと「“LOVE”の本質がリアルになってきた」

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 LOVE PSYCHEDELICOが約4年ぶりとなるオリジナルアルバム『LOVE YOUR LOVE』を完成させた。「Good Times,Bad Times」(2014 ジャックスCMソング)、「Place Of Love」(映画『昼顔』主題歌)などを含む本作は、作詞・作曲はもちろん、録音、ミックスなど、ほぼすべての工程をKUMI、NAOKIのメンバー2人だけで手がけた作品。よりメロディアスになった楽曲、生々しさが伝わるサウンドメイクを含め、最新型のLOVE PSYCHEDELICOが明確に提示されたアルバムに仕上がっている。

 新たな傑作と呼ぶべき『LOVE YOUR LOVE』のリリースに際して、リアルサウンドでは、KUMI、NAOKIのソロインタビューを企画。第1回目はKUMI。「Good Times,Bad Times」で得た新たな手応え、『LOVE YOUR LOVE』というタイトルに込めたメッセージ、NAOKIとの関係性、さらにライブに対するスタンスまで、幅広く語ってもらった。(森朋之)

■「『次のアルバムは未知の世界になるだろうな』と感じていた」

ーーニューアルバム『LOVE YOUR LOVE』が完成しました。前作『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』から約4年ぶりの新作ですね。

KUMI:4年ぶり、というのは結果としてという感じですね。同時進行があまり得意なタイプでもないので。ベスト(『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I』『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST II』/2015年)の制作をしているときは曲作りがストップしていたし、それからアルバムを作り始めたわけだから、結果として4年経っていたと。

ーー2015年にベストアルバムをリリースして、高橋幸宏さんをドラマーに据えて全国ツアーを開催。さらにアジアツアーもありましたが、アルバムの制作はその後から?

KUMI:そうですね。ベストアルバムのツアーが2015年の春にあって、その後夏フェスにも出て、アジアツアーがあって。去年(2016年)の頭に「C‘mon,It’s My Life」と「This Moment」を制作して、アルバムのレコーディングは夏くらいから始めました。

ーーライブの時期が終わって、すぐに制作に入ったんですか?

KUMI:ちょっと休みもありました。ひとつの流れが終わると、1カ月くらい休みます。旅行に行くこともありますね。

ーー羨ましいです(笑)。旅行することで曲のインスピレーションを得ることも?

KUMI:どうだろう? “ネタ探し”みたいな意識は全然なくて、その時々で行きたいところに行く。後になってそのときの記憶が曲のなかに出て来ることもあるだろうけど、旅行中は楽しんでるだけだね。

ーーなるほど。今回のアルバム『LOVE YOUR LOVE』の制作にあたって、何かテーマのようなものはありましたか?

KUMI:特に制作の前からテーマを持っていたわけではないんだけど、「Good Times,Bad Times」がきっかけになっているかな。前のアルバムの後、最初に作ったのが「Good Times〜」なんだけど、そのとき明らかに「またひとつ新しい曲に出会った」という感じがあって。その後「Love Is All Around」と「This Moment」を作ったときも新しい扉を開いた感じが続いていたから、「次のアルバムは未知の世界になるだろうな」と。

ーー「Good Times〜」を作ったときに感じた「新しい曲に出会った」という感覚は、具体的に言うとどういう感じなんですか?

KUMI:感覚でしかないけど、楽曲としては、わりとメロディ中心なのかな。それに沿って、コード進行も多い。これまではギターのリフだったり、ロックな感じの楽曲が多かったんだけど、「Good Times〜」はそうじゃなくて、鍵盤で作ったかのような雰囲気もあって。実際はギターで作っているんだけどね。

ーーリフを中心にしたロックというより、ポップスに近いイメージなんですか?

KUMI:そうかもしれないね。70年代の良質なクラシック・ポップロック、たとえばキャット・スティーブンスやキャロル・キングのような。

ーーなるほど。確かに今回のアルバムはいままでと雰囲気が違いますよね。メロディが豊かになっている、サウンドの手触りも生々しくて。リスナーとしても、新しいLOVE PSYCHEDELICOに出会えたなって。

KUMI:よかった。

ーー制作はもちろん、このスタジオ(LOVE PSYCHEDELICOのプライベートスタジオ“GOLDEN GAREPEFRUIT STUDIO”)なんですよね?

KUMI:そうだね。10年前にこのスタジオを作って、4枚目の『GOLDEN GRAPEFRUIT』からここで制作をはじめて。それからはずっとここで作ってるんだけど、いままでと違うのは、ミックスまで自分たちでやったということかな。いままではレコーディングまで2人でやって、最後のミックスは信頼しているエンジニアと一緒にという感じでした。これまでは、商品としてちゃんと完成させるには仕上げは確かな腕を持ったエンジニアと一緒にと思っていたんだけど、だんだんと曲作り、レコーディングの延長でミックスまで自分たちでやってみたいなと思いはじめてね。

■「伝えたいのは、根っこの部分、言葉にできないところ」

ーー“こういう音にしたい”という理想のサウンドのイメージもあったんですか?

KUMI:はい。そのイメージがあったから自分たちでミックスまでやってみようと思えたわけで、“こういう音がいいよね”というのはNAOKIとも共有していたので。今回のアルバムの音が技術的に正しいかどうかはわからないけど、自分たちのイメージする音作りはできたのではないかと思っています。

ーーKUMIさんのボーカルもいままで以上に生々しく伝わってきました。歌も2人で録ってるんですよね?

KUMI:そうだね。NAOKIがディレクションしてくれるんだけど、「もうちょっと弱く歌ってみようか」とか「そういう感じで歌うんだったら、こっちを調整するね」っていう話をしながらレコーディングして。これまでもそういう風にいろいろと試行錯誤しながらやってきているけど、以前よりも「こんな音像で歌いたい」「こういう声色がいい」というイメージはクリアになってきたね。

ーー『LOVE YOUR LOVE』というタイトルを決めたのはいつですか?

KUMI:いちばん最後かな。「タイトル、どうしよう」と思いながら、なかなか思い浮かばなくて。今回はアルバムをひとつのテーマや言葉でまとめるのが難しくて、『LOVE YOUR LOVE』もタイトルという感じより、メッセージみたいなものなんです。

ーー“LOVE”はLOVE PSYCHDELICOがずっと表現してきたテーマですが、このタイミングで改めて打ち出したのはどうでしてなんですか?

KUMI:何て言うか、LOVEの本質がやっとリアルになってきた気がして。自分も含め、世の中もそういう時代じゃないかなと。大変なことも多いけど、そっちは本当じゃなくて、LOVEが本質なんだよって。

ーー実際に起きたこと、社会の雰囲気も影響している?

KUMI:きっと。私はあまりニュースを見たりはしないんだけど、肌で感じていることや、人と話すことで見聞きすることを大切にしているので。

ーー無意識のうちに情報過多になるのを避けているのかも。時代性を楽曲のなかに反映させることもないですよね?

KUMI:自分たちの音楽が社会と無関係だとは思ってないけど、そういうメッセージをダイレクトに込めることはないかな。もっと根っこの部分、言葉にできないところなんだよね、伝えたいのは。楽しいことや明るいこと、美しいことを“愛”という言葉で括って、「それこそが本質なんだよ」ということが伝わるといいなと思って音楽を作ってるので。

ーーそのスタンスをNAOKIさんと共有しているのも、LOVE PSYCHEDELICOの魅力だと思います。NAOKIさんとの関係性も変わらないですか?

KUMI:あまり変わらないかな。LOVE PSYCHDELICOはもともとバンドだったし、メンバーが抜けて2人になってた時期にデビューが決まったんだけど、自分としてはずっとバンドだと思っていて。制作はずっと2人だけど、一緒に演奏する仲間は増えたね。

ーー2人で音楽を作り続けて、まったくインスピレーションが衰えないのはすごいですよね。

KUMI:そういうことはないね。音作りは繊細になっていくし、イメージしている音に辿り着く速度は早くなっていくけど、それは技術的なことであって、根本的にやってることは変わっていない。ただ、作ってるときに「この音はちょっとイキイキしていないね」みたいな話はするね。

■「自分たちの核を再確認できたことで演奏の自由度が広がった」

ーーアルバムのリリース後は夏フェス、そして秋からは全国ツアーがスタート。

KUMI:新しい曲を演奏できるのはすごく楽しみだね。バンドのメンバーも新しくなるし、当然、アンサンブルも変わってくるだろうから。

ーー2004年以降、バンドメンバー(堀江博久/Key、高桑圭/Ba、白根賢一/Dr、権藤智彦/Programming etc.)は固定されてましたよね。

KUMI:そう、10年以上ずっと同じメンバーでやってきたんだけど、また新しい仲間と音を鳴らしていこうと。これまでは楽曲の再現性を重視して同期に頼ることも多かったんだけど、もっとオーガニックなサウンドで表現したいなと。

ーー自然な変化だったということですか?

KUMI:そうだね。「メンバーを変えて、新しくしましょう」ということではないので。きっかけはベストアルバムのツアーにドラムで高橋幸宏さんが参加してくれたことで、「決まったメンバー以外のミュージシャンと一緒にやることで新しい可能性や発見が生まれるんだな」と。私たちはこれまで、どんなライブでもずっと一緒にやってきたメンバーと共にステージに立つということを大切にしてきたんだけど、幸宏さんと一緒にやったことで「いろんなミュージシャンとやってみるのもいいね」という発想になれたんだよね。10年以上同じメンバーとやったことで、バンドは完成形に近づいていたと思う。彼らと演奏するのは本当に楽しいし、これからも関係は続いていくけど、新しいことをやってみようとしていろいろな出会いがあって、一昨年のアジアツアーではT-SQUAREの坂東慧くんに叩いてもらったり。秋からのツアーも彼とできたらいいなと思ってるんだけどね。

ーー坂東さんはドリカムのツアーにも参加してましたよね。

KUMI:そうだね。知り合いに誘われてT−SQUAREのライブを観に行ったら、ドラムがすごく良くて。ちょうどその頃、アジアツアーのメンバーを探してたから「一緒にやりませんか」って声をかけさせたもらったら、「喜んで」と言ってくれて。T-SQUAREに憧れてドラムをはじめて、本当にバンドに入っちゃったという確かなテクニックを持っている人で、素晴らしいスピリットを持っている。

ーージャズ・フュージョンを軸にして、幅広いビートにも対応できるドラマーですよね。なるほど、彼がドラムなら同期のトラックは必要ないですね。

KUMI:それから、「TWO OF US」というNAOKIと私の2人だけのアコースティックライブを始めたことも、意識が変わるきっかけだったんだよね。2人で演奏するためにアレンジして、ライブ中の互いの呼吸を改めて意識したりして。そこで自分たちの核を再確認できたことで演奏の自由度が広がったと思えたし、変化することを楽しめるようになったんじゃないかな。

ーーなるほど。

KUMI:ずっと一緒にやってきたメンバーはみんな素晴らしいミュージシャンで、多々依存していた部分もあったと思うんだよね。NAOKIと私がちょっとくらい曖昧でも、みんなとやれば何とかなるというか。アコースティックライブをやったことで、その意識も変わったんじゃないかな。サウンドや楽曲の大事なポイントを掴めたことで、自由度が増したから。

ーーLOVE PSYCHDELICOの活動がスタートして約20年になりますが、KUMIさんにとって人生における音楽の存在も変わってきていますか?

KUMI:以前はもっと混沌としてたかも。「仕事って何だろう?」「社会人ってどういうことだろう?」みたいなことから曖昧だったから。いまはもっとシンプルに「私の人生に音楽があって、それをやらせてもらっている。幸せだなあ」と素直に思ってる。あとは「それがときどき仕事になる」っていうくらいかな。

ーー周囲のペースに巻き込まれず、丁寧に音楽を作って、それをしっかり届けて。リリースのペースを含めて活動のスタイルが確立できているし、いまのLOVE PSYCHDELICOの在り方は理想的ですよね。

KUMI:「やらせてもらえている」という気持ちですね、そこは。誠実に音楽と向き合って、それが仕事として成り立っているのはすごくありがたいことだなって。それができなくなったり、やる意味を見つけられなくなったら他のことをやるんだろうしすごく幸せですね。(取材・文=森朋之/撮影=林直幸)