川辺(左)と中村俊(右)の良好なコンビネーションが磐田の中盤を支えている。

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[J1リーグ16節]磐田2-0FC東京/6月25日/ヤマハ

 川又、アダイウトンのアベック砲でFC東京を下し、磐田がJ1で5年ぶりの3連勝を飾った。
 
「決めるべき選手が決めてくれているので、チームは本当に雰囲気がいい。周りの選手が前線のふたりを見る回数が多くなったのでチャンスが増えているし、それを結果につなげてくれるので、後ろの選手たちも苦しい時間に我慢ができている」と、勝因を語ったのは、2得点をアシストしたボランチの川辺駿だ。
 
 アタッカー陣の活躍もさることながら、その川辺と中村俊輔の攻撃の構成力やキープ力、守備の献身、そしてこのふたりの連係も、7位に浮上した磐田を支えているもののひとつだ。
 
 11分の川又の先制点は、右サイドで相手マーカーを翻弄しながらボールキープする中村俊が起点。すかさず寄っていった川辺は、一度は中央でマイナスの折り返しをもらう位置取りをしたが、中村俊がなおもタメを作るのを見て動き直し、外を周りパスを受けた。中村俊のクロスを警戒した相手守備陣の意識はゴール前に行っており、FC東京の室屋成は寄せきれず。川辺はフリーで難なくクロスを上げた。
 
 終盤、カウンターからの2点目もふたりが演出した。ボールを奪った大井健太郎から中村俊へボールが渡ると、川辺は一瞬直接もらう動きを見せたが、中村俊が相手を引きつけてから齊藤和樹に出すと察知するや、今度は離れる動きで齊藤からのワンタッチパスを引き出し、やはりフリーで丁寧なスルーパスをアダイウトンに送った。

 中村俊も川辺も、90分間、研ぎ澄まされた集中の中でプレーを続けている。ボールが足下にない時、たとえ遠くにある時でも、足を止めることも、頭の中でのプレーを止めることもない。そのなかで、細かなパス交換でチームの攻撃のリズムを生むなど、息のあったコンビネーションを見せている。また、特に川辺は中村俊との連係で、フリーでボールを受ける場面が増えた。
 
「サポートにいけば、欲しいところでパスをもらえる。相手は俊さんがボールを持つとそこに喰いついてくれるので、自分がしっかり考えて良いポジショニングさえとれば、プレッシャーをかいくぐることもできている。俊さんがいて、自分が得をしているところがある」と川辺は言う。
 
「対戦したなかで最強の選手」。昨季末、敵として対戦した中村俊を、川辺はそう評していた。1-5で敗れた横浜とのホームゲームでの中村俊は、「衝撃だった」と言う。
「間合いがすごかった。その作り方というか、位置取りがすごい。ボールをとろうとしてもとれない。ファウルになるし、かわされるからまず飛び込めない。どうしてそういうことができるのか、と驚いた」
 
 その“最強”の選手がチームメイトとなった今季は、「テクニックはもちろん、プレッシャーのかけ方、相手のプレスをどう外すかなど、常に勉強になる」と、多くを学んでいる。
 
 中村俊が初めてリーグ戦で欠場した札幌戦のあと、川辺はこうも話していた。
 
「後半の途中、ボールを動かせた時間もあった。俊さんが練習でも試合でも、ボールをとられないように味方をサポートしてくれていて、それをずっと見てきていることで、僕たちもやれるようになってきていると思う」
 
 一方、他の選手同様、チームが中村俊に頼り過ぎることを危惧もしている。中村俊と川辺のふたりは、1試合の走行距離でトップを争うことが多い。そこには、「俊さんを一番走らせるわけにはいかない」という川辺の思いもある。
 
 中村俊は、単に試合でのプレーだけではなく、チームの成長を促す、多くの刺激と力をもたらしている。川辺の充実ぶり、ふたりの好関係は、その表れだ。
 
「自分の特長をいかせ、という意味でも(川辺)駿には『どんどん前に出ていけ』と言っている。現代サッカーでは、前に出て行けるボランチでないと通用しない。後ろで配球係になるだけでよかったのはひと昔前。敵を潰すだけでも、今はしんどいだろう」と話すのは、名波監督。代表スタッフが観戦に来ていたFC東京戦後の会見で、指揮官は、記者から川辺の代表入りについて訊かれ、「(代表に)行っちゃってもいいんじゃない?」と笑顔を見せた。
 
「代表は目指しているけど、もっと結果を出しているのに選ばれていない選手もいる。このチームでもっと活躍しなければならない」
 
 会見での監督の言葉をミックゾーンで聞かされた川辺は、一瞬相好を崩したあと、そう話した。
 
 21歳の逸材は、名波監督の信頼を受け、中村俊という“最強”のチームメイトとの好関係を築くなかで、備わっているポテンシャルを存分に発揮し、楽しげにプレーしながら進化の歩を加速させている。