東京発「地方おこし」の仕掛け人10人

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東京から地域の人たちと新しい価値を創造している人がいる━。地方に詳しい専門家17人によるアドバイザリーボードの推薦のもと、フォーブス ジャパンが選んだ仕掛け人を紹介する。

地域の「新価値」創造人/じゃらんリサーチセンター 沢登次彦

2005年、熱海市ー。「東京発地方活性化」に長く携わってきた第一人者、じゃらんリサーチセンター長・沢登次彦。彼の活動の起点は、当時、廃れた温泉街だった熱海の再生、進化にある。「消費者の立場で、地域の人が見えづらくなっている魅力・宝を、しっかりと地域の人たちに伝えていく大事さ」が原点だと言う。

「『素晴らしいところもあるよ』と伝えるため、定量調査により客観的なデータを揃えて、地域の魅力を地域の人たちに理解・発見してもらった」
 
地域の人から観光に向かないと評された場所も、沢登には魅力的だった。たとえば、生活排水が流れず水質がきれいな人工ビーチ。しかも、禁煙。特定の人たちには興味があるのでは、という仮説が立った。

都市部に住む人たちに「知っているか?」「興味があるか?」と聞いた結果、「東京在住の小さな子供を持つ家族連れの”海デビュー”に最適」という新たな価値が生まれた。本来は魅力があるが、日常の中に埋没している地域資源に目を向け、組み合わせる工夫で、光り輝くことを実体験した。
 
じゃらんリサーチセンターでは現在までに、奈良県十津川村での「過疎地と都市部を結ぶ”幸せのブリッジ”プロジェクト」や青森県深浦町の深浦マグロステーキ丼に代表される「新・ご当地グルメ」の開発、都市部のクリエーターや起業家などと地域の人たちを紡ぐ「コ・クリエーション(共創)」など、様々な取り組みで、地域に新たな価値を創造し、需要、消費を生み出してきた。


奈良県十津川村での「過疎地と都市部を結ぶ”幸せのブチッジ”プロジェクト」では都会の若者や子供が多数参加した。

「10年前と比較すると、自分たちの住んでいる地域で何かをはじめようという人たちは確実に増えています。その種火が消えないために、まきをくべて、地域が自走するまで火を絶やさないのが、我々外部にいる人間の役割です」。

ICTで生産性工場へ/熱意ある地方創生ベンチャー連合 山野智久

「スタートラインに立った実感はあります。ただ、取り組んでいる社会課題が大きいがゆえに、成果が出るまでにはまだ時間が必要です」
 
東京のベンチャー企業が中心となり2015年7月に設立した「熱意ある地方創生ベンチャー連合」の代表理事を務める山野智久は、これまでの道のりをそう評価する。

山野が社長を務める、体験予約サイト運営のアソビューは、三重県と連携し、小規模耕作地を農業体験に活用して収益化を図る組織を立ち上げた。同じくベンチャー連合のメンバーで、クラウドソーシングサービスを運営するランサーズは、横須賀市と同サービスを活用した新事業をはじめた。

同メンバーで、空きスペースの貸し借りをネットで仲介するスペースマーケットは、同じく横須賀市と猿島という無人島を貸し出すなど、様々な取り組みが出始めている。浜松市職員が同団体事務局へ派遣されるなど、人材交流も始まっている。

なぜ、山野は「ベンチャー連合」を設立したのか。ICT(情報通信技術)で観光産業の生産性を上げることにより、売り上げが上がり、新しい挑戦をする地域の事業者の姿をアソビューで何度も見ていく中で、「ICT活用によって地域の生産性を上げられる伸びしろは、観光分野以外にもある」という思いが出てきた。一方で、自治体とベンチャーとの距離は遠く、情報が遮断されている現状に課題を感じたからだという。


「アソビュー」により、鳥取県のシーカヤック事業者が盛況に。ICT活用による生産性支援の可能性は大きい。

「熱意のある地域が、持続可能な経済成長をするために、少ない予算で成果を出すベンチャーのノウハウを活用し、チャンスの芽をつくる」ー。それが山野の掲げる地方創生支援の姿。だからこそ、様々な業種のベンチャー総計29社が集う、「東京からできること」は多い。

とらわれない”発想”で革新的な風邪を
/umari 古田秘馬

「僕の中には都市から地方という考え方はありません。歴史的に見ると、新しいものが生まれてきているのは都市ではなく地域側ですから」
 
そう話すのは数多くの地域プロデュース・企業ブランディングを手がけるumari代表の古田秘馬だ。古田は次にこう続け、概念を再定義していく。

「グローバル経済の反対は、コミュニティ経済。そのコミュニティが派生しやすいのが地域です」
 
彼が企画・運営する市民講座「丸の内朝大学」では、学びを軸にコミュニティがつくられ、地域とつながっている。たとえば、和太鼓クラスでは、佐渡島で活躍する有名な「鼓童」という和太鼓グループに演奏を学びにいく。佐渡島にただ観光に行くことよりも、鼓童に学ぶことに価値が生まれる。

「観光地化ではなく、新しい関係地づくりです。人が地域に入っていく土壌をつくることが大切です」
 
そんな古田が現在、手がけているのは、高速バス大手WILLERと共に行う、自然や街の風景を眺めながら料理を楽しむ「レストランバス」。さらに、キリンと共に、食文化を中心に地元を盛り上げるプロジェクトを生み出す人たちをつなぐという企業を巻き込んだ新しいアライアンスを行っている。

そして鉄道ファンのアイデアを実現するローカル鉄道ファンドによる地域コンテンツへの投資だ。これらはいずれも地域にとって補助金だけではない「新しい選択肢」につながるという。


現在、新潟プランと熊本プランがある「レストランバス」。地域内での利用者も増え、地域にいい循環を起こしている。

「そもそも、地方創生という言葉が好きではないんですよ。事例紹介にも興味がない。そんな簡単に成功しないからです。自分たちで努力し失敗も重ね、それでも何かをつくった地域はそれが一つの地域モデルになる。ただ、挑戦をするうえでは、企業との連携など『新しい選択肢』が重要になる。それをつくるのが地域外にいる僕の仕事です」

地域おこしの仕掛け人10人

秋好陽介 ━ランサーズ社長/「熱意ある地方創生ベンチャー連合」代表理事

地方自治体などと提携し、日本全体に仕事を再分配する「地方創生」事業を開始。クラウドソーシングで、好きな場所に住み、好きな時間に働ける社会へ。(1981年、大阪府生まれ。2005年ニフティに入社し、ITサービス企画・開発を担当。08年クラウドソーシングサービス運営の同社創業)

大社充 ━グローバルキャンパス理事長/DMO推進機構代表理事

町おこしや地域資源を活用した集客コンテンツの開発、人材育成に取り組む。事業構想大学院大学で「観光まちづくり(DMO)プロジェクト研究」も担当。(1961年、兵庫県生まれ。87年エルダーホステル協会の創設に参画、2000年専務理事。13年日本観光振興協会理事。14年より現職)

沢登次彦 ━じゃらんリサーチセンター長/とーりまかし編集長

観光産業発展のため、消費者の需要創造や地域の魅力向上を目指す、じゃらんリサーチセンター長。観光庁や地方自治体の審議会委員も務める。(1969年、東京都生まれ。93年入社。2002年旅行事業へ。関東近郊のエリアプロデューサーとして地域活性に携わる。07年より現職)

重松大輔 ━スペースマーケットCEO

シェアリングエコノミーで、地域の古民家でIT会議をする外国人、温泉街で株主総会などのニーズを開拓。「熱意ある地方創生ベンチャー連合」メンバー。(1976年、千葉県生まれ。NTT東日本、フォトクリエイトを経て、2014年、スペースの貸し借りをネットで仲介する同社を創業)

田中仁 ━ジンズ社長

2014年に、田中仁財団を設立し、「GUNMA INNOVATION AWARD」をはじめ、生まれ故郷・群馬の地から次世代を担う起業家の発掘・育成を行う。(1963年、群馬県生まれ。88年ジェイアイエヌ(現ジンズ)設立。2001年アイウエア事業の「JINS」を開始。14年「田中仁財団」設立)

馬場正尊 ━Open A代表/東北芸術工科大学教授

使われなくなった、地方自治体の公共空間の情報を集め、買いたい、借りたい、使いたい市民や企業をマッチングする「公共R不動産」を運営。(1968年、佐賀県生まれ。博報堂を経て、02年Open Aを設立。「東京R不動産」「公共R不動産」などを運営。建築家)

平出淑恵 ━コーポ・サチ社長

日本酒造青年協議会に参画、世界最大規模のワインコンペティション(IWC)に日本酒部門創設など、日本酒を世界に広める酒サムライとして活躍中。(1962年、東京都生まれ。83年日本航空入社。シニアソムリエ資格取得後、日本酒を通じて日本の文化を世界に紹介するべく、2011年創業)

古田秘馬 ━umari代表

「レストランバス」、農業実験レストラン「六本木農園」、「Peace Kitchenプロジェクト」など都市と地域、世代をつなぐ仕組みづくりを行う。(東京都生まれ。慶應義塾大学中退。「丸の内朝大学」など地域プロデュース・企業ブランディングを数多く手がける。プロジェクトデザイナー)

山野智久 ━アソビュー社長・「熱意ある地方創生ベンチャー連合」代表理事

「熱意ある地方創生連合」代表理事。総計29社のベンチャーと地方創生に取り組む。体験予約サイト「アソビュー」を運営し感じた地域の可能性に挑む。(1983年生まれ。学生時代に起業、フリーペーパーを発行。2007年リクルートに入社。11年、体験予約サイトを運営する同社を創業)

ルーカス・バデキ・バルコ ━ニーハイメディア・ジャパン代表

雑誌「PAPERSKY」などメディアを通じて地域バリューを発信、企業や自治体と連携してコンテンツビジネスを展開。新ソーシャル・アクティビティーを開拓中。(アメリカ生まれ。カリフォルニア大学卒業後に来日。NTTドコモのアプリメディアや日本再発見の旅プロジェクトも手がける)