城南一和のファン・ウィジョはG大阪へ移籍を果たした。(C)GAMBA OSAKA

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 韓国KリーグからのJリーグ進出ラッシュが続いている。城南一和のFWファン・ウィジョはG大阪へ、全北現代のMFキム・ボギョンは柏へ、蔚山現代のDFチョン・スンヒョンは鳥栖にやって来る。韓国人ではないが、済州ユナイテッドのブラジル人FWマルセロ・ストカーノも大宮に完全移籍することが決まった。
 
 パイオニアだったノ・ジュンユン以降、脈々と続いてきたコリアンJリーガーの系譜があるだけに韓国人選手のJリーグ進出は決して珍しいことでないが、韓国代表経験者や有望株が相次いでやって来るのは久しぶりなような気もする。
 
 というのも近年、韓国人選手の海外進出先として話題になるのはヨーロッパが多く、その次に中東、最近では中国だったからだ。GKたちのJリーグ進出ラッシュなどがあったものの、ホットイシューとなるのは常に“日本以外”だった。
 
 なぜ、今、韓国人選手のJリーグ進出が増えているのか。
 
 ひとつ言えるのは、韓国人選手の移籍先が限られてきたことだろう。日本同様に多くの選手が第一希望として欧州を上げるが、最近、韓国欧州組で活躍できているのはソン・フンミンとファン・ヒチャンぐらいで、そのほかの選手はパッとしない。
 
 また、カク・テヒ、イ・ジョンス、イ・グノ、ハン・グギョンらが渡って“オイル・マネー移籍”として話題を集めた中東からも、選手が引き揚げてくるようになった。
 
 Kリーグ歴代最高額50億ウォン(約5億円/当時)でUAEのアル・アインに渡ったイ・ミンジュもこの夏、FCソウルに移籍して韓国に戻っている。UAEは2018-2019年シーズンからアジア枠の廃止もしくは一部修正を検討しているとされているが、そうしたことも関係しているらしい。
 
 外国人枠は必然的に、実力と実績を備えたヨーロッパや南米選手で埋まることになりそうで、そうなると韓国人選手が入り込む余地はない。そうした状況を見越して、中東進出に二の足を踏む韓国人選手が増えているという。
 
 何よりも風向きが変わったのは、中国リーグにおける韓国人選手の扱いだろう。昨季まで多くの韓国人選手が“チャイナマネー”に引き寄せられて大陸に渡ったが、中国スーパーリーグは今季開幕直前に、それまで「4+1(アジア枠)だった外国人枠を「3」に削減。中東同様に3枠は有名外国人選手たちで占められ、必然的に韓国人選手の出番は少なくなっている。加えて、TAHAAD問題などで韓中関係に歪が入った。昨年までは蜜月関係と思われていた韓中サッカーだが、最近はその関係に変化があるのだ。
 こうした状況下でふたたびスポットライトが当たったのが、Jリーグだ。中東や中国が外国人削減に舵を切ったとは対照的に、Jリーグでは外国人枠3、アジア枠1、提携国枠1と「5」あり、来季からは国籍を問わず5名の外国人選手が登録できるように拡大される。
 
 ましてJリーグは韓国人選手たちにとって身近で、条件面も魅力的。年俸はKリーグよりも多く、閑古鳥が鳴くKリーグとは対照的にJのスタジアムには観客たちの熱狂がある。
 
 欧州にも行けず、中東や中国でも立場が怪しくなった韓国人選手たちの目が、ふたたびJリーグに向けられるようになるのも当然なのだ。
 
 実際、前述した選手以外にもJリーグ進出を熱望している選手は多いと聞く。元FC東京で広州富力のチャン・ヒョンスは「試合感覚の低下が代表チームでのプレーにも影響しかねない」として中国を出てJ復帰を熱望。FC東京への移籍が秒読みとも言われているし、城南FCの正GKで今年3月に韓国代表にも選出されたキム・ドンジュンのもとには、複数のJクラブからオファーがあるという。キム・ドンジュンは城南と契約を3年残しているが、城南も移籍金次第では手放すことも考えているらしい。
 
 こうしたJリーグ・ラッシュに韓国メディアの一部は危機感を募らせる。「ウィジョも行き、ボギョンも行き、マルセロも行った…ふたたび吹くJリーグ・ラッシュ」(『GOAL.COM韓国版』、「韓国選手のJリーグ進出ブーム、再点火」(『蹴球ジャーナル』)といった具合だ。一昨年夏もKリーグではスター選手たちの海外流失が相次ぎ、Kリーグは“セーリング・リーグ”と嘲笑されたが、「今度は日本に買い漁られていくのか」と落胆する声もある。
 
 果たしてKリーグからJリーグへの移籍ラッシュは今後さらに加速していくのだろうか。引き続き注目していきたい。

文:慎 武宏(スポーツライター)
 
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。