後継機が発売されると、旧モデルは注目されなくなりがち。とはいえ、新旧の差が少ない製品も多く、旧モデルが実はお買い得というケースも少なくない。そこで、人気の入門機、キヤノン EOS Kiss X9iとX8iを比較。前半となる今回は、画質や操作性などをチェックした。カメラ初心者的視点で吉森信哉さん、プロカメラマンの視点で永山昌克さんの評価を交え、両機を評価する。

↑EOS Kiss X9i(左)とX8i。外観上の差は少なく、基本的な操作性も同様の2機種だけに、その性能差や価格差が気になる

 

【基本スペック比較】 画素数こそ差はないが、連写性能や感度などがUP

EOS Kiss X9iの撮像素子は、APS-Cサイズの有効約2420万画素でX8i同様。だが、映像エンジンが「DIGIC6」から「DIGIC7」となったことなどで、連写速度が最高約5コマ/秒から約6コマ/秒に、常用感度が最高ISO12800から25600にアップしている。拡張ISO感度も25600から51200になった。何よりAFが全面的に強化され、ファインダー撮影時のAF測距点が19点から45点と大幅に増加した点は大きい。

 

ライブビュー撮影時のAFは、位相差AFとコントラストAFを併用した「ハイブリッド CMOS AF 掘廚ら高速・高精度な像面位相差AFが可能な「デュアルピクセルCMOS AF」となった。「AFに関しては上位モデルのEOS 80Dと同等で、ファインダー撮影、ライブビュー撮影ともにX9iがワンランク上」(永山)という。エントリーモデルでは重要な大きさや質量もわずかながら小さく、軽くなっている。また、キットの標準ズームレンズも、新設計となって小型化された。

↑X9iのスペックで目を引くのが、45点と大幅に増えたAF測距点。精度の高いオールクロスタイプが採用され、ファインダー内の広いエリアでのAFが可能となった。Bluetoothに対応し、スマホとの常時接続が可能。スマホ側の操作のみで素速いWi-Fi接続が行える

 

↑EOS Kiss X9i(左)とX8iのAF測距点。X9iでは、45点と数が増えたことで、主に左右方向のAFカバーエリアが広がった。1点AFでの撮影時もより細かくAF位置が設定でき、フレーミングの自由度が高まっている。X8iもオールクロスタイプ採用で、測距点数は19点と劣るが精度は同程度

 

【吉森信哉さんの基本スペックの10段階評価】

●EOS Kiss X9i・9/10
●EOS Kiss X8i・7/10

さすがにX9i の45 点AFは驚き。ただスペック的には、それ以外は大きな差ではないと感じる。連写が1コマ/秒多いが、動きモノを撮るのでなければ差は気にならない。

 

【永山昌克さんの基本スペックの10段階評価】

●EOS Kiss X9i・10/10
●EOS Kiss X8i・7/10

45 点AFに加え「デュアルピクセル CMOS AF」採用で、ライブビューでも差がある。ほかは数値上の差は少ないが、実写してみると全体のパフォーマンスはX9iが格上。

 

【操作性比較】Kiss X9iはUIがわかりやすく進化

X9iはX8iに比べて、ボディの大きさが多少小さくなっているものの外観上の差は少なく、基本的なボタンレイアウトも同様だ。「EOS Kissシリーズの操作性は、世代間の変化が少ないのが1つの魅力。完成されたレイアウトゆえに、旧機種のX8iを購入しても損した印象は少ない。ベテランユーザーの方で、Kissシリーズを買い換えながら、ずっと使い続けているという話をよく耳にしますが、頷けますね」(吉森)。

 

その一方で、背面モニターに表示される撮影情報などのUIは大きく進化した。作例写真付きの「ビジュアルガイド」が表示可能など、一眼レフ初級者でも迷わず撮影できるように工夫されている。「X9iで絞りの効果などが表示されるのは、初心者にはうれしい改良だと思います。プロやハイアマチュアには必要ない機能ですが、従来同様の表示も選択できるので問題ありません」(永山)。

↑EOS Kiss X9iとX8iの外観。基本的なボタンレイアウトなどはほぼ同じといえる

 

 

↑EOS Kiss X9iのUI(上)。全体にグラフィカルになり、撮影モード変更時などは作例付きの「ビジュアルガイド」が表示される(下)。初級者でも操作に迷わず、絞りやシャッター速度の効果などを生かせる

 

↑EOS Kiss X8iのUI。設定の解説文などは表示されるが、グラフィックとしては少し地味。撮影情報の視認性は高く、カメラに慣れたユーザーには使いやすい

 

【吉森信哉さんの操作性の10段階評価】

●EOS Kiss X9i・9/10
●EOS Kiss X8i・8/10

外観や操作性の差は少ない。初心者向けという点で新UIのわかりやすさは評価に値するが、X8iも基本的な操作ガイドは搭載しており、価格差を考えるとX8iでも十分。

 

【永山昌克さんの操作性の10段階評価】

●EOS Kiss X9i・9/10
●EOS Kiss X8i・8/10

両機とも従来同様の高い操作性を保っており、中級〜上級ユーザーやプロも迷わず使える。撮影に慣れると、UIは必要な情報が整理されている旧来の表示が使いやすい。

 

【画質を比較】高感度撮影時にわずかな差が出た

画素数が同じということもあり、ISO100〜1600程度で撮る場合は画質的な差は少ないといえる。ただ、さすがにISO6400や12800の超高感度では新エンジンを搭載したX9iのほうがわずかながらノイズは少なめ。とはいえ、X8iも高感度の質感描写はそれほど損なわれておらず、最高感度のISO12800でも嫌な印象は受けない。

 

感度だけを見ると、ISO25600が必要かどうかで選択が分かれる。「最近はレンズの手ブレ補正も強化されています。そのため、室内スポーツなどを撮るのでなければ、1段程度の感度の差はあまり気にならないと思います」(吉森)。「確かに画質面での差は少ないといえますが、それでも、感度を上げたときに画質が乱れにくいのはメリットといえます。特に1/30秒以下の低速シャッターが使用できない動画撮影を行うなら、高感度に強いほうが有利でしょう」(永山)。

↑両機の低感度時の画質を比較。ピクチャースタイルやホワイトバランスはオートに設定して標準感度のISO100で撮影。色傾向や露出傾向に大きな差は見られなかった。レンズは、それぞれのキットレンズのワイド端(28.8ミリ相当)で撮影したが、解像感の差もほぼない。感度を上げない撮影では、両機の画質差はないといえる

 

↑両機の高感度時の画質を比較。X8iの常用感度としては最高感度となるISO12800で比較。X8iでは、空や薄暗い部分などに多少のムラが出るのに対し、X9iはムラが少なめだ。ただ、いずれも高感度での画質としては悪くなく、質感も十分見て取れる。よほど大きくプリントするのでなければ、問題ないレベルといえる

 

【吉森信哉さんの画質の10段階評価】

●EOS Kiss X9i・9/10
●EOS Kiss X8i・8/10

最高感度は1段分違っているが、通常の撮影で問題になることはまずない。画質の差もわずかなので、手持ちで夜景を撮るケースが多い人以外は、X8iでもよさそう。

 

【永山昌克さんの画質の10段階評価】

●EOS Kiss X9i・10/10
●EOS Kiss X8i・9/10

動画撮影時の最高感度は、X9iが常用でISO12800、X8iがISO6400となっている。この差は小さくなく、室内で動画を撮る場合などは
X9iが有利になる。

 

(後半へ続く)