<挑発外交の道具にされたアメリカ市民の命。中国による説得を待つ時期は終わった>

北朝鮮を旅行中に逮捕され、1年5カ月にわたり拘束されていた米国人大学生オットー・ワームビアが、6月中旬に昏睡状態で解放されて帰国。約1週間後に死亡した。1年近く意識不明だったとされ、拘束中の不当な扱いで脳に損傷を負ったともみられている。

法の支配や適正手続きをないがしろにし、最も基本的な市民の自由も無視した、あるまじき人権侵害だ。ジョン・マケイン米上院議員も、無責任な国家による「殺人」だと北朝鮮を強く非難している。

これを機に、米政府は北朝鮮に対する態度を明確に変えるべきであり、今回の件を1つのニュースとして終わらせてはならない。ましてや、まだ3人の米国人が北朝鮮に拘束されているのだ。

しかし残念ながら、トランプ政権の対北朝鮮政策が目立って変わる気配はない。6月21日に開かれた米中の閣僚級による初の外交・安全保障対話の直前に、スーザン・ソーントン米国務次官補代行(東アジア太平洋担当)は、拘束中の3人をできるだけ早く帰国させたいが、「今回の最重要課題とは考えていない」と語った。

対話に出席したマティス米国防長官は、ワームビアの件に言及して北朝鮮を非難。挑発を繰り返す北朝鮮に「米国民はいら立ちを募らせている」とも述べたが、今すぐアメリカが中国を飛び越えて何かをすることはなさそうだ。

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状況は異なるが、米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーが1年以上テロ組織ISIS(自称イスラム国)の人質となり、14年に殺害映像が公開されたときのことを思い出す。世論の激しい怒りは、当時のオバマ政権がイラクやシリアに対する「中立的な態度」を転換するきっかけの1つにもなった。

今回はそこまで極端な反応はなさそうだし、望ましくもない。しかし、トランプ政権に明確な態度を取るように要求する上で、これ以上のタイミングはないだろう。

米政府が取るべき行動の1つは、言うまでもなく、北朝鮮に拘束されている米国人を速やかに解放させることだ。そして、北朝鮮を再びテロ支援国家に指定し、米国人による外交以外の北朝鮮訪問を全面的に禁止することだ。

一方で、北朝鮮との間に拉致問題を抱える日本にも関係がありそうだ。日本は以前から、北朝鮮に拉致の責任を認めさせることの重要性を訴えてきたが、米政権はうわべの関心を示すだけだった。日本にとっては、問題をアメリカと共有する機会にすることもできる。

[2017.7. 4号掲載]

J・バークシャー・ミラー(本誌コラムニスト、米外交問題評議会国際問題フェロー)