落語家・春風亭昇々に学ぶ、緊張のほぐし方&堂々と見せるコツ
アピールする、対話する、場を読みつつ話をする......楽しませながらのコミュニケーション術に長けたエンタテインメントのプロたちに、日常生活で活かせるコミュニケーション力アップのスキルや心得を伝授していただく短期連載、第1回のゲストは人気の若手落語家、春風亭昇々さんです。 前編では、緊張対策の特効薬も伺いました。
「技」よりも、まずは「心」。本気がなければ伝えられない

「どうしたら上手く喋ることができるか?」みたいなことはよく聞かれるんですけれどね。何でもそうだとは思うんですが、コミュニケーションだって「心・技・体」のバランスだと思うんです。ただ。その中でも「心」がいちばん重要でしょうね。「どうしても伝えたい」という魂、心。本気で伝えたいことは何なのか。しっかりと考えて準備しておかなければ、伝えたい相手にきちんと伝わらないですよ。話し手の情熱とか、感動みたいなものを聞き手がしっかりと受け止められたときって、やはり、その人が本気で伝えたいと思っているんですよね。上手く喋ろうなんて思ってないです、その人。僕は情熱を感じると、つい聞き入ってしまいます。僕、将棋をするので加藤一二三九段の話をよく聞くんです。あの人、喋り方は正直、上手ではないと思います。けれど、情熱がある。他人からどう思われるとかいうのが無い。本気でそう思って話しておられる。もちろん、聴きやすく話すことも大切だけれど、それよりも大切なのはそういう気持ち、魂だと信じています。
プロだって緊張する。だからこそ、準備する

「緊張すると上手く話せない。昇々さんは緊張しないのですか?」などと聞かれることもあります。毎日のように高座に上がる僕も、もちろん緊張しますよ。「今日は絶対に滑れない」と思うと緊張します。不安感があると、人はどうしても緊張します。ダメかもしれないと思うとたちまち緊張する。だから、僕はとことん稽古します。稽古をして自信をつけるしか、緊張から遠ざかる方法はありませんから。あ、僕たち落語家は稽古するのが仕事みたいなものですね。
スピーチや会議でのプレゼンテーション、あるいは商談なんかでいつも緊張してしまうというなら、とことん練習してみるのがいちばんだと思います。話したいことを原稿にしてもいいし。セリフにして覚えられるようにできれば万全です。地道な方法ですが、これがいちばん。稽古は裏切らないですよ。日々、経験していますからね、間違いありません。逆に、全然緊張しないときもあるんです。けれど、そういうときは決まって高座の出来がよくないんですよ。だから、楽屋で「今日は全然緊張していないな」と思ったときは、むしろ緊張しようと集中を試みます。ドキドキするように必死で仕向けますよ(笑)。ある程度は緊張していないと、いい高座にならないのも事実なんです。適度な緊張感を持っておくことの大切さ。皆さんの場合も、それは同じだと思います。
緊張のあまり、沈黙してしまったら? そんなときは......黙っていればいいんですよ。慌てることはない。僕なんて、次の言葉が出るまで微笑んで堂々と座ってます。僕焦って、お客さん、つまり聞き手が不安になることがいちばんよくないんです。
なぜ笑ってくれないのか、ウケないのか?を考えてみたら......
落語の世界で考えてみると、"不自然"があるとどうにもお客さんに受けないんです。緊張しているな、とか、噛んだな、とか、不自然なものを少しでも感じたら、お客さんはもう笑えないんですよね。"不自然"には皆さん、敏感で。すぐに肌で感じちゃいますから。桂枝雀師匠がかつて、「なぜ人は笑うのか」を理論的に説かれていて。落語やお笑いの世界では有名なんですが、枝雀師匠は「緊張が緩和したとき笑いが生まれる」と。で、僕は反対に、「なぜ人は笑わないのか、ウケないのか」を理論的に考えてみた。その結果、「"不自然"があると人は笑わない、ウケない」という結論に至ったわけです。みなさんは、必ずしも相手を笑わせなくてもいいでしょうけれど、"不自然"があると聞き手に話の内容が入りにくくなるのは同じ。受け入れてもらうには、「本当にそう思ってるな」と思ってもらえる"自然さ"が大切だと思います。