カンヌ映画祭での波紋も記憶に新しい、少女が巨大生物「オクジャ」を守るために激闘を繰り広げる、近未来SF動物映画『オクジャ/okja』。

今回は本作を手がけた韓国の鬼才ポン・ジュノ監督と、主人公の少女ミジャを演じた、13歳ながらもキャリア10年の女優アン・ソヒョンさんにインタビューして参りました。なお、本編の内容にやや触れていますので、ネタバレが気になる方はご注意ください。


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Photo: ギズモード・ジャパン編集部
アン・ソヒョンさん(左)とポン・ジュノ監督(右)


――本作はNetflixオリジナル映画ということで、配信がメインの作品という印象がありますが、製作において何か意識したことはあるのでしょうか?

ポン・ジュノ(以下、ジュノ):配信だからといって何か特別な撮り方をするということはまったく念頭に置いていませんでした。これまでの映画、劇場のスクリーンで鑑賞する映画と同じ撮り方をしています。

本作はカンヌ映画祭でも上映されましたし、他のさまざまな映画祭でも上映されますし、韓国、アメリカ、イギリスでは一部の劇場でも公開されることになっています。なので、これまでに作ってきた映画と同じように、大画面のスクリーンを前提に撮りました。

私たちは日頃、劇場で映画が公開された後に一定の期間が経つと、DVDやブルーレイ、ケーブルテレビ、ストリーミング、飛行機の中、ホテルなど、さまざまな環境で映画を観ますよね。本作もそれと同じような流れだと思います。また、大きな画面で見て美しいものは、小さな画面で見ても美しいというのが真理ではないか?と私は考えています。


――製作の中で一番難しかったシーン、そして一番楽しかったシーンはなんでしょうか?

ジュノ:本作ではミジャがオクジャを抱きしめたり、さわったり、または並んで一緒に寝そべったりといったシーンがたくさんあります。実写の俳優がVFXのキャラクターとお互いに密着した状態で映っているのは、視覚効果の領域では難しいとされていて、実際に難しいのですが、同時に非常に楽しい作業でもありました。

たとえば、ミジャとオクジャが抱き合ったり、ミジャがオクジャのお腹の上で寝ていたりといったシーンでは、ソヒョンさんが虚構に向かってやるわけにはいかないので、オクジャのかわりになる、スタッフがある程度コントロールできる塊を現場に用意したんです。それは「スタッフィー」と呼ばれるものだったんですが、最初にスタッフィーが現場に登場したときにはあまりなじみのないものだったものの、すぐに親しくなれました。

私たちはスタッフィーを使って撮影をしていたわけですが、実際に現場で見ていると、その光景がとてもおもしろいんです。もちろん、完成された映画では美しいシーンとして描かれていて、ミジャが動物とコミュニケーションをとっている、心を通わせているシーンとして描かれていますが、スタッフィーを使って現場で撮影している様子というのはおもしろいものがありました。

スタッフィーとの経験がどうだったのかは、ミジャ本人にぜひ聞いてください。


ソヒョン:私にとってもスタッフィーとの演技は、難しくもあり、楽しくもありました。最初、オクジャとなるスタッフィーは目と鼻と耳がついているだけのスポンジの塊で、「この動物を愛して、愛するという気持ちで演技をしてね」と言われたときは本当に戸惑ってしまって、たくさん心配もしました。

でも、スタッフィーの中に入ってオクジャの動きを調節してくれるスタッフがいて、その方とすぐに仲良くなれたので、それ以降はオクジャと楽しい時間が過ごせたんです。なので、撮影が始まってしばらく経ってからは、スタッフィーのスポンジのにおいなどの細かい部分まで、オクジャだと思えるようになりました。CGで描かれたオクジャを見ているときと同じような気持ちで、オクジャと一緒にいられたので、とても楽しい気分になれたんです。

オクジャのお腹の上でミジャが寝ているシーンでは、そのシーン用に別の丸い塊を作ってくれて、それを回しながら撮影しました。スタッフが塊を回すんですけど、私が回る方向と別の方向へ回さないといけないので、息を合わせることが大事でしたね。私が速く回りすぎてもダメですし、スタッフが速く回しすぎると落ちてしまうので緊張もしましたけど、演じるのがすごく楽しかったシーンでもあります。


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Image: (c) Netflix. All Rights Reserved.


――ミジャにはアクションシーンも多くありますが、どのくらいソヒョンさん自身が演じたのでしょうか?

ジュノ:危険なシーンを子どもが直接演じるわけにはいかないので、そういった場面ではもちろん大人のスタントマンを起用しています。でも、顔が映っているシーンはほぼすべてソヒョンさんが演じています。


ソヒョン:私の顔が出ているシーンはほとんど自分で演じています。中でも、トラックから落ちるシーンが一番大変でした。

マットレスを敷いての撮影で、いっぺんに落ちるのであればそこまで難しくなかったと思うんですけど、転がりながら、しかも顔も見せながら自然に落ちないといけなかったのが本当に難しかったです。落ちたときの姿勢があまり良くなくて撮り直しになったり、何回か撮ったので、記憶に残っています。


ジュノ:スタントマンに代わってもらうこともできたと思うんですけど、あえて「顔をとにかく見せるようにしてね」と言ったのを覚えています(笑)。


ソヒョン:本当に大変でしたね(笑)。


――あのシーンはかっこよかったです!


ソヒョン:ありがとうございます(笑)。


――本作、そして過去作の『グエムル-漢江の怪物-』でも描かれている「普通の動物を超えた存在」に監督が魅力を感じるのはなぜでしょうか?

ジュノ:我々が日常では目にすることのない、接することのない生命体をスクリーンで見る経験そのものに、なにか不思議な魅力があると思います。これは映画ならではの見せ方であり、魅力です。

たとえば、小説で1ページにわたって詳細に生命体について描写したとしても、映画館の大きなスクリーン上で見る、その生命体の肌や皮膚、歯といったイメージが与える圧倒的な魅力に匹敵することは難しいと思います。たとえ、それが3秒しかないシーンであってもです。

実際に河川や湖などが汚染されると、そこからすこし変形した魚が生まれてくることがありますよね。『グエムル-漢江の怪物-』はそういった事実から出発し、汚染によって生まれた背骨が曲がってしまっている魚などから形やデザインのイメージを得て、作り上げた映画です。

今回の『オクジャ』の場合はブタ、異常に大きいブタです。大きいということは、それだけ肉がたくさんある、食べるところが多い、イコール食品であるという考えに至るので、オクジャの大きさが、まさにオクジャの悲しい運命を表現しているように思います。食品であると同時に、その背後にはミランドという多国籍企業が存在していて、これは外食産業に関わる話だということを表しています。


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Image: (c) Netflix. All Rights Reserved.
ジェイク・ギレンホールが演じる、動物学者のジョニー・ウィルコックス博士。
この他にも『スイス・アーミー・マン』も待ち遠しいポール・ダノ、
『ウォーキング・デッド』のグレン役でおなじみのスティーヴン・ユァン
といった豪華なキャスト陣が名を連ねる。


――ソヒョンさんにとって、さまざまな国籍の俳優が多く出演している作品は本作が初めてだったのではないかと思いますが、現場で印象に残っている出来事はなんでしょうか?

ソヒョン:本作には何カ国語もの言葉が出てきます。さまざまな国の俳優たちがいて、全員がコミュニケーションのとれる言語は英語でしたが、それぞれの出身の国の言葉があるわけで、現場ではいろんな言葉が混じり合っていました。

最初はお話できないんじゃないか?という心配があって、入っていくのが怖かったんですけど、撮影しながらいろんなコミュニケーションをとっていくうちに、人が心を通じ合わせることに言葉はあまり関係がないんだなということを感じました。

ジュノ:彼女は動物とも会話していましたからね(笑)。


――本作はモンスター映画というよりは動物映画だと思うのですが、監督が好きな、または影響を受けた、そして本作の参考になった動物映画があれば教えてください。

ジュノ:ブタが登場する、しかもそのブタがしゃべる映画『ベイブ』の続編、『ベイブ/都会へ行く』が特に好きですね。『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー監督が撮った作品です。

あとはシナリオを書いていたときにすごくいい日本映画、前田哲監督の『ブタがいた教室』(2008年)に出会いました。田舎の小学校の校庭で飼われていたブタを、食べるか否かで激論を繰り広げるといった内容の作品です。

中でも、教室にいる子どものセリフがとても印象的で、彼はおじいさんからこんな風に聞いたという流れで「家畜というのは、牛や豚を食べるということは殺すためではなく、その動物の生命を受け継いでいくことなんだ」といったことを言います。これは「自然の形態での肉食は美しいものだ」ということを表す、肉食に関する重要な問いかけだと思います。要するに、肉食そのものに反対しているわけではないんです。

『オクジャ』も肉食そのものへ反対しているわけではなく、資本主義による利潤を目的とした工場生産式の畜産などについて批判をしています。過去に人間が行ってきた、自然な形態での肉食に反対しているわけではありません。そういったこともあって、『ブタがいた教室』のセリフは『オクジャ』に引用したいくらい、とても良いものだと感じました。


――本作の中で一番見てほしいシーンはどこでしょうか?

ソヒョン:個人的にはオクジャがミランドの施設へ連れて行かれる場面は、映画全体の中でもすごく大切なシーンだと思います。

そこで山奥にいた少女であるミジャと非常に大きな企業の重要人物が出会うわけですが、本当だったら出会うはずのない二人の出会いが一体どんな風に見えるのか?にぜひ注目してもらえるとうれしいです。


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Image: (c) Netflix. All Rights Reserved.
ミジャは、ティルダ・スウィントンが演じるルーシー・ミランドに出会い……


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「食べる」ということ、「コミュニケーションをとる」ということ、そして「翻訳する」ということについて考えさせられる、Netflixオリジナル映画『オクジャ/okja』は6月29日(木)に配信開始。


Video: Netflix Japan

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Photo: ギズモード・ジャパン編集部
Image: (c) Netflix. All Rights Reserved.
Source: Netflix, YouTube

(スタナー松井)