試合終了間際の90分、福田晃斗がトドメのゴールをねじ込む。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

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[J1リーグ16節] サガン鳥栖 2-1 浦和レッズ
6月25日/ベストアメニティスタジアム
 
 日曜のナイターにもかかわらずベアスタはアウェーゴール裏の最上階を除いて、すべての観客席が埋まった。フランクフルトへの移籍が内定した鎌田大地を送り出そうと、メインとバックスタンド、そして北側ゴール裏はサガンブルー一色に染まり、ホームらしい雰囲気を作り出していた。
 
 ホームチームが立ち上がりからアグレッシブにプレスを掛けて主導権を握る。とはいえ、浦和にはR・シルバ、興梠慎三、柏木陽介ら一発で状況を打開できるタレントが揃い、一瞬たりとも気の抜けない張り詰めた緊迫感が漂う。しかも30分に原川力が負傷退場に……。早い時間帯にゲームプランの変更を余儀なくされた。
 
 それでも柏木から興梠へのキラーパスが通るものの、DF陣の素早い寄せから興梠がトラップミスを誘発させる。さらに柏木のCKに槙野智章にヘッドで合わせられたが、GK権田修一のビッグ―セーブで凌ぐ。
 
 耐えながら、勝機を見出す――。その鳥栖の真骨頂が、後半に発揮される。ファンとサポーターの大声援に後押しされて運動量は一向に衰えず、鳥栖ペースは変わらない。

 迎えた64分、原川と交代出場した田川亨介のカットインからの強烈なミドルシュートで得たCK。鎌田のキックに、下がりながら小野裕二が技ありのヘディングシュートで合わせる。するとボールはゴール隅のネットを揺らし、ついに先制に成功したのだ。
 
 その後は浦和の猛反撃を浴びながらも、ビクトル・イバルボらを軸にしたカウンターで対抗。一進一退の拮抗した展開が続いていった。

 そして90分、浦和の森脇良太から遠藤航へのバックパスに、田川がチェイシングでボール奪取に成功。そのパスを受けた福田晃斗が間髪入れずドリブルで持ち込んで右足を振り抜き、トドメの2点目を突き刺した。
 
 李忠成のPKで1点は返されたものの、5分間のアディショナルタイムを戦い抜き、鳥栖の勝利を告げる笛が鳴り響く。足もとのテクニックでは浦和の選手が上だったかもしれないが……、1対1の対決、運動量、チームへの貢献、そういった『闘う』面では鳥栖が上回っていたと言っていいだろう。
 
 なにより特筆すべきは、緊急事態を迎えながらも、交代出場の3人全員がゴールに絡んだこと。鳥栖には時間帯や戦況に柔軟に対応する臨機応変さが見られた。
 田川が先制点につながるCK獲得と2点目につながるチェイシングに成功し、池田の献身的なサイドへの追い込みと藤田優人のボール奪取が福田の一撃をもたらした。「力のある浦和に勝つためには、全員が持っている力を出し切る必要があった」とフィッカデンティ監督は語っていたが、サポーターを含め、まさに鳥栖のチーム一丸で掴んだ勝利となった。
 
 そして福田にとって、この日唯一のシュートが今季初ゴールになった。彼は試合後、この特別な勝利を誰よりも喜んでいた。
 
「(鎌田)大地は同期入団で、2年半一緒に戦ってきた大切な仲間。なんとかして勝ちを贈りたいと思っていた。その試合でゴールを決めて、勝利にかかわれて本当に良かった。これで大地を世界へ送り出せます(笑)。僕自身の初ゴールなんかより、そのことのほうが嬉しいです」
  
 ちなみに『今季初ゴール』を決めた福田に対して鎌田は、「やっぱり普段決めない選手がゴールすると勝てるな、と思えた(笑)」と、最後にパンチの利いたひと言を残した。そんな鎌田らしいコメントを、福田も苦笑い(!?)を浮かべて受け止めていた。
 
 鳥栖で2年半プレーした鎌田は、この門出で掴んだ1勝を「これまでで最高の勝利だった」と喜んだ。鳥栖とともに、成長曲線はしっかり上に向いたまま、ドイツに旅立つ。
 
「スタジアムの雰囲気がとても良く、過去一番と言えるぐらい試合内容も良かった。みんな本当に戦っていて、走っていて、チーム一体で勝利を掴むことができました」
 
 多くのドラマが詰まった、まさに『ベアスタ劇場』。間断なく降り注いでいた雨脚は徐々に弱まり、ちょうど試合終了時に止んだ。鎌田のドイツでの成功を早くも予感させる、そんな最高の夜になった。

 鎌田、福田、(さらに小野や権田や田川も……)、そして鳥栖にとって、ターニングポイントとなる1勝になった。そして鳥栖は今週末の7月2日(18時)、甲府とアウェーで対戦する。一方、鎌田はフランクフルトでメディカルチェックなどを受けて正式契約を結んだのち、7月1日に始動するチームへと合流する。
 
 取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)