“安全の供給”はどこへ(イメージ)

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 製造業としては、戦後最大規模の倒産である。欠陥エアバッグのリコール問題で、経営難に陥っていたタカタが6月26日に民事再生法適用を申請し、東京地裁に受理された。負債総額は1兆円超。昨年の株主総会でも、株主から“資産の提供を”と糾弾されたが、“女帝”の耳にはまったく届いていないようだ。

 2年前、米国運輸省がタカタ製エアバッグの欠陥を指摘して以降、タカタはなかなか記者会見を開かず、投資家から不満の声が上がっていた。東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長によれば、

「不満を募らせていたのは投資家だけでなく、取引先も同じです。今年2月にタカタの取引先51社に聞き取り調査を行いましたが、“タカタから何の説明もないので、設備投資にも踏み切れない”との声も少なくありませんでした」

“安全の供給”はどこへ(イメージ)

 投資家や取引先を蔑ろにしているとも取れる不遜な理由は、タカタの株主構成にあった。今年3月末時点の主要株主を見ると、個人筆頭は創業家出身で、社長兼会長である高田重久氏の2・8%。法人株主の上位3位以内には52・1%と過半数を握るTKJと、1・5%を保有するエスティーなる会社が名を連ねている。経済誌の自動車担当記者の説明では、

「TKJとエスティーは、高田家の資産管理会社。重久さん名義と、この2社が保有する株式を合算すれば60%に迫る。それでタカタは投資家や取引先の声に耳を貸さず、説明責任も果たさなかったのではないでしょうか」

 そのTKJの実権を握っているのが、重久氏の実母である暁子さん(77)だといわれている。

■10億円以上の現金

 暁子さんは、慶応大学在学中にタカタの“2代目社長”重一郎さんと知り合って結婚。積極的にタカタの経営に関与して常務取締役、取締役相談役を経て、10年前から特別顧問に就任している。自動車メーカーの幹部がいうには、

「目下、暁子さんは“交通事故死の撲滅”を掲げる公益財団法人タカタ財団の理事長と、チャイルドシート連絡協議会代表幹事も務め、“タカタの女帝”と呼ばれています」

 タカタの民事再生法適用を受けて、東証は7月27日付でタカタ株の上場廃止を決定した。これで高田家が保有するタカタ株も紙屑になってしまう。だが、“女帝”は資産の提供を考えるどころか、一族の生き残りのために着々と手を打っていたのだ。

タカタの倒産はTKJとエスティーにも大打撃。ですが、債務保証をしていないので、タカタ株は失っても2社で10億円以上の現金が残る計算になります」

 こう耳打ちするのは、自動車専門誌のデスクだ。

「実は、高田家には社員もほとんど知らない会社が多数存在するのです。2年前、重久さんが5億円ともいわれる豪邸を新築しましたが、先の2社とは別に、暁子さんが代表を務める会社が所有していた土地でした」

 その会社の本社住所はTKJと同じく東京・赤坂。ここには重久社長兼会長や暁子さんが代表を務める会社が、他にも最低2社登記されている。さらに、

「タカタが存亡の瀬戸際に立たされていた昨年8月、暁子さんは『ドーンインターナショナル』なる不動産管理会社を設立していました。しかも、本社のあるマンションは、彼女自身がオーナーなのです」(同)

 タカタの事業は、中国企業傘下の米国自動車部品メーカーへ譲渡される。今後は、裁判所の管理下で再建の道を探るが、債権者から女帝の資産が熱視線を集めることは間違いない。

「週刊新潮」2017年7月6日号 掲載