txt:猿田守一 構成:編集部

ファーム(AtomOS 8.31)アップで広がる新しい機能とは?

ATOMOSのSHOGUN INFERNOであるが、今回最新ファーム(AtomOS 8.31)が搭載された事により3G-SDI×4のクワッドリンクSDIが使用出来るようになった。またCINEMA DNG RAW記録にも対応している。

SHOGUN INFERNOは4Kレコーダーとしてだけではなく、Log収録現場での映像管理、また1500nitの高輝度パネルによるHDRモニタリングや最新のPQガンマへの対応で収録時における作品イメージを確認する事ができ、展示会などでのHDRモニターへの動画再生機などとしての活用も期待できる。

主な仕様

  • 消費電力:10〜27W
  • スクリーンサイズ:7.1インチ
  • 解像度:1920×1200
  • 輝度:1500nit
  • 3D LUTサポート、アナモフィック、デスクイーズ表示対応
  • Atom HDR、PQ/HLG入出力
  • 各社Log対応、各社Gamut対応 記録bit深度:10bit
  • 記録コーデック:
    ProRes HQ、4:2:2、LT Avid DNxHR、HQX、HQ、SQ、LB、Cinema DNG RAW
  • 記録解像度/フレームレート:
    4K DCI/UHD:24/25/30/50/60p
    2K/HD:24/25/30/50/60/100/120/200/240p
    *入力方法や記録モードにより収録可能なモードに違いがある

仕様の詳細はこちら

この度ATOMOSさんより最新ファームが搭載されたSHOGUN INFERNOをお借りする事ができたので、筆者所有のPanasonic GH5と組み合わせた使用感などをレポートしていきたいと思う。今回のGH5の起用についてだが、4月に発表されたGH5の最新のファームからHDMI(Ver2.0)より60P 4:2:2 10bitの信号を出力できるようになった。この10bit記録の時は内部SDカード記録が出来ないため、今回お借りしたSHOGUN INFERNOの様な録画機でないとその恩恵にあずかれない。

10bitのおさらい

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/06/ATOMOSReview_05_Still07.jpg4K60P 4:2:2 8bit
※画像をクリックすると拡大します
http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/06/ATOMOSReview_05_Still08.jpg4K60P 4:2:2 10bit
※画像をクリックすると拡大します

SHOGUN INFERNOで収録した映像(ProRes HQ収録)をEDIUSにてV-LogのLUTを適用し、分かりやすいように彩度を上げてみた(分かりやすい部分をPhotoshopで切り取っている)。Bokeh(ボケは日本発らしい)ている部分はグラデーションになるので8bitと10bitの差が出やすい部分だ。8bitでは唇や頬の部分にバンディングが出ていることがよくわかる。

2017年6月現在においてHDMI2.0を搭載し60P 4:2:2 10bit出力に対応しているカメラというのはGH5以外ないというのが現状だそうだ。Sony F55やFS7、Panasonic DVX200などもHDMIから60P 4K出力できるのだが、HDMI出力は4:2:0 8bitという事になっている。実際の撮影現場での4:2:2 10bit映像のモニタリングを行おうとするとカメラの出力がそれに対応していないとリアルタイムでの確認は難しい。

今回お借りしたSHOGUN INFERNOはHPRC社製ケース付きのタイプである。ケース内には写真の通り、本体、バッテリー×2、オーディオ変換ケーブル、iLinkケーブル、SSD/HDD用キャディー、キャディー用USB3.0リーダー、ACアダプター×2(本体用/充電用)、バッテリーチャージャー、フード、DC-D-Tapケーブル等が付属する。内容からするとかなりお得なセットとなっている。

GH5とSHOGUN INFERNOを接続しているHDMI2.0ケーブルは別売

本体には2つのバッテリーを付ける事ができる。形状はSony NP-F970Lシリーズとの互換形状になっているのだが、SHOGUN INFERNOの4K収録時の消費電力が大きいためSony純正のNP-Fシリーズではバッテリー保護回路が働いてしまい電力の供給が止まってしまうので使用できない。同梱されているバッテリーならば問題なく動作する。

バッテリーバンク2つとDC入力表示

本体に接続された2つのバッテリーは順次給電していくので、一つ目が無くなった場合は次のバッテリーに自動で乗り換えてくれる。その間に空になったバッテリーを交換すればノンストップで長時間収録する事ができる。また、本機はD-Tap端子からも給電可能。この時モニター右上部に外部電源からの給電表示がされる(ACアダプター運用でも同じように表示)。長時間のロケであれば是非使っていただきたい機能でもある。

入出力系

本機は1.5/3/6/12Gの入力や、Sony F55やCanon C700などの3G SDI 4本接続のクワッドリンクに対応している。C700のCFastカードには、4:2:2 ProRes記録は4K30pまでなので、本機を使う事により4K60P ProRes収録を行う事が出来る。またHDMIはVer.2.0に対応しており、4K60P HDR信号をそのまま出力可能。ダウンコンバート機能を持っているので4K収録時でもHDMI/SDI出力からHD信号を出すこともできる。またモニターモード/カスタムLOOKモード時に3D LUTが適用された信号をビデオ出力する事が可能。他のレコーダーでLUTが当たった状態の映像を記録する事ができる。

Sony F55とSHOGUN INFERNOの組み合わせでは2SI/SDともに自動認識して4K DCI 60pの入力が可能Canon C700ではQuadLinkはSD出力のみとなるが、SHOGUN INFERNOで4K DCI 60pまで接続できる

加えて、ビデオ信号入力時のスルー出力は常時SDI/HDMI相互でコンバート出力する仕様になっており、HDMI 2.0 4K60p入力を12G SDI+HDMI2.0で同時出力したり、3G QuadLink 4K60p入力を12G SDI+HDMI2.0に同時出力が可能。後述するHDR出力機能や3D LUT適用出力機能を使うことで、撮影時のイメージを他のモニターでも共有できるので、活用範囲はかなり広い。

アナログオーディオ入力にも対応しており側面のコネクターから付属のXLRケーブルを繋ぐことで外部からのオーディオ信号を入力することができる(オプションのXLR入出力ケーブルで、XLR出力にも対応)。

HDRモニタリング機能

外光の強い屋外でも1500nitの輝度の液晶と付属のフードでかなり視認性が高いことがわかる

SHOGUN INFERNOでは1500nitの輝度での表示を実現している。通常のSDRモニターの輝度は100nit(BT.709)までといわれているので、本機の1500nitという輝度は外ロケ時のモニタリングなどで威力を発揮する。ちなみにnitという単位はカンデラ(cd/m2)と同じである。

SHOGUN INFERNOには、Rec.709/AtomHDR/Log to Video/Custom Lookの4つのモードがある。Rec.709は標準的なHD収録での輝度と色域の範囲で表示を行うモードとなる。Atom HDRはLogガンマ収録時のHDR映像としてのモニタリングを行うモードである。カメラメーカーとLog、Gamutを選択する事でポストプロダクション段階でのLog映像の見え方をつかむことができる。

Rec.709V-Log

撮影時高輝度の被写体を撮影する場合など、どの部分をどこまで飛ばしてもよいのか、あるいは抑えるべきか悩む部分である。

Atom HDRモードではモニタリング時にどの程度高輝度部分が飛んでいるのかを確認できる。Scene Brightness Rangeの下にあるスライダーバーを左右に動かすことでRec.709 100%域からHDR 1490%までのダイナミックレンジを設定できる。ダイナミックレンジを広くする=暗く映るのでカメラからの入力画像の高輝度部分の飛び具合を容易に観察することができる。例えば青空に浮かぶ雲など、カメラモニターだけではどの部分でクリップしているのか判断しにくいのだが、本機でのモニタリングではこのスライダーバーを動かすことで飛び具合を詳細に観察できる。Log収録時における適正露出を見極めるのには有効だと感じた。

Log to VideoモードはLogガンマの映像を3D LUTを用いてRec.709の映像としてモニタリングできる。設定方法はAtom HDRと同様にカメラベンダー(Camera)、Gamma、Gamutをセットする。

Custom LookモードはカメラメーカーやDaVinci Resolveなどで生成された3D LUTファイル(.cube)を読み込むことで、収録時のモニタリングやProRes/DNxファイルにLUTを適用した状態での記録ができるようになる。

これからのHDR収録で一般的になるであろうPQ(ST2084)、HLG(BT2100)のガンマへ対応しており、これらの信号を扱えるグレーディング機器からの出力をモニタリングできる。また、HDR出力機能をONにするとカメラからのLogガンマ映像をリアルタイムでPQやHLGガンマに変換しHDMIや12G SDIから出力することが可能となっている。

Cinema DNGへの対応

今回のファームアップによりCinema DNGへ対応できるようになった。Sony FS RAW (FS700/FS5/FS7+XCDA-FS7)、Canon RAW(C300 Mark II/C500)、Panasonic VARICAM LT RAWに対応している。RAW記録は4K30pまでではあるが、それでもビットレートは3.2Gbps(400MB/s)に達する事もあり、収録メディアも相当高速書き込みができるタイプのSSDでなければ動作しない。今回、動作検証が取れているSonyのProffesional SSD「SV-GS96」をお借りした。

このSSDの書き込み速度は500MB/s(メーカー発表値)とSSDの中でもかなりの高速なメディアだ。動画収録に特化した、安定した記録と寿命を兼ね備えたSSDである。Cinrma DNGによるRAW記録ではProRes記録よりも解像度感が上がるという話も聞く。今回は残念ながらCinemaDNGでの検証には至らなかったが、機会があれば検証してみたい。

使い心地の良さを実感

今回実際にSHOGUN INFERNOを使用してみて思ったことはメニュー構成など画面から直接アクセスでき直感的に操作できる点は今まで通り使い心地がいい。以前SHOGUNでのセット品に同梱されていたACアダプターは形状が同じでバッテリー充電用と本体用と分かれていたため、間違えて充電用の容量の小さいタイプのACアダプターを本体に使用してしまい録画途中で落ちてしまうというアクシデントに見舞われた経験が恥ずかしながらある。今回のセットでは2個とも高容量型のACアダプターとなっており、間違いが起こらないようになっている。

しかし、残念な点が一つ。今回のセットに含まれているフードを物凄く気に入っていたのだが、フードのベース部分(2つのピースから構成されている)の張り合わせが両面テープのため、直射日光下では熱のため剥がれてしまうというアクシデントに見舞われた。この部分は是非ミシン縫いか超音波溶着などしてもらいたいと思う。それ以外はフェースパネルなどは磁石でフード本体に張り付く仕組みになっていたり、画面操作がしやすいように底面にはゴム製のスリットが設けられており、そこから手を入れてパネルにアクセスするなど結構凝った造りになっている。ベルクロなどは使っていない。

今年4月に訪れたNABでは放送向けの2K/4K/HDRであるBT.2100の展示が意外と目についた。この事は映画の世界だけではなく家庭用のテレビに向けたハイダイナミックレンジの扉を開く新たなうねりが起こりつつあるように感じる。Log収録を行われている方はすでに多くいらっしゃると思うが、実際にHDRモニターで確認されている方はまだまだごく一部ではないかと思う。3種類の収録フォーマットに対応した収録機&HDRモニターなので、それぞれの撮影現場で大いに活躍ができる1台ではないかと思う。

機材協力:ソニービジネスソリューション株式会社