@AUTOCAR

写真拡大

■どんなクルマ?

数字の魅力、感情をゆさぶる魅力

デビューから6年を経てのフルモデルチェンジで、アウディRS5はより大きく、しかし軽くなり、速さもクリーンさも、抜け目のなさも、先代以上のレベルに達した。

それを支える根幹が、最新バージョンのMLBプラットフォームであり、そこには長年使い続けた自然吸気4.2ℓV8に代わる新型エンジンが搭載された。数年前にポルシェと共同開発した、最新世代の2.9ℓV6ツインターボである。

当然ながら、カタログスペックはほぼすべての項目が向上し、それはうれしい材料だと言える。とはいえ、先代のエンジンは数字で測れないほど魅力的だった。おそらく、アウディの自然吸気V8としては最後の強力無比なユニットで、至上のスロットルレスポンスと8250rpmに届く回りっぷり、血沸き肉躍るようなサウンドも備えていた。

失ってみて初めて、ありがたみを感じることは多い。そのエンジンサウンドも、アウディらしい音だというくらいにしか思っていなかった、というのが正直なところだ。

というのも、先代RS5はあまりに重く、夢中になれるような走りという点では、BMWやメルセデスが送り出す後輪駆動のライバルたちに大きく水をあけられていたから、関心が薄かったのだ。

新型RS5、何がどう変わった?

新型のスペックで、まず目を引くのが60kgの軽量化だ。そのうちの31kgは、V6となったエンジンが稼ぎ出している。

もちろん、クワトロ4WDシステムは標準装備で、各輪独立制御のトルクコントロール機構も継承する。また、英国仕様は機械式のスポーツLSDも標準装備だ。

サスペンションも刷新され、前後とも5リンク化して、アダプティブ・ダンパーを備える。オプションで、「RSスポーツサスペンション」と「ダイナミックライドコントロール」のセットを用意。RSエグゾースト・システムはオプション装着してもいいかもしれない。

トランスミッションも変更された。先代のV8には7速DCTが組み合わされたが、今回はZF製の8速トルコンATを選択している。ギアボックスはS5用の改良版だ。

エンジンはポルシェの新型パナメーラ4Sと基本的に同じものだが、スペックは異なり、RS5のほうが10psほどアップしている。これは、先代が積んだV8に出力を並べるためだ。

トルクは61.1kg-mで、先代の43.8kg-mを大きく凌ぎ、ポルシェ版の56.1kg-mにも差をつけている。CO2排出量は、先代比で17%削減した。

■どんな感じ?

RSでも「やりすぎない」

インゴルシュタットのスポーツモデルを扱うアウディ・スポーツ部門の商品として、またRSモデルとして、ルックスは順当にまとめられた。

15mm拡幅したブリスターフェンダーやボディ各部に穿たれたダクト、極太の楕円形テールパイプなどを備えるが、相対的にはアウディのデザインの方向性を崩すことのない、いつも通りの穏当なモディファイだ。

全長も74mm延長されているが、もとより2765mmものホイールベースを持つだけに、プロポーションはベースのA5と大きく変わるものではない。

インテリアもまた、おなじみの光景が広がる。

作りがよく、見た目も手触りも申し分ない。英国仕様には、アウディご自慢のデジタル計器盤であるバーチャルコックピットも標準装備だ。

ピレネー山中のアンドラ公国で試乗したこの個体には、ステアリングホイールやシフトレバー、ドアトリムにアルカンターラが張り込まれ、S5とはひと味違う雰囲気を醸し出していた。

迫力はあるが、押し付けがましくない

アウディ・スポーツはエンジン音のチューニングを徹底したようで、B5世代のRS4に積まれたV6ターボを思わせる骨太なサウンドが轟く。

しかし、低音を聞かせたそれは、シリンダーバンクの間に配置されたターボの風音を覆い隠すことはできていない。かつてのV8のバイブレーションや、自然吸気らしい無駄な干渉物のないメロディが恋しくなるのは正直なところ。

とはいえ、それは予期できた。パフォーマンスについても同様で、クランクシャフトの回転は低脂肪乳のようにサラサラとしたフィール。

先代のV8がレッドゾーンめがけて荒々しく回転を上げたのに対し、このV6は中回転域のさらに中盤で力を発揮するタイプだ。

その高まりは強力だが、淡々としたシームレスなものでもある。ティプトロニックはリズミカルでシュアなシフトアップにより、S5で見せた活気のなさを払拭している。

エンジンの性格が全く異なることで、クルマも全く違う性格となった。

不快な思いをせずに済む

ラインナップにおける、GTカー的な立ち位置はそれほど強調されていない。フランスの人里離れた、いつにない暑さにさらされた直線で試すと、これはアウディのラインナップで最も快適なクルマだと、すぐさまみなすことができる。

コンフォートモードでは、伝統的に悩みの種だった短周波のハードな突き上げが、アダプティブダンパーによって解決され、ボディの大きな振動も素直で不快感のないものとされている。

ダイナミックステアリングシステムのデキはよくなり、正確さも十分。走行車線を流すには上々の仕上がりで、装着しても長距離ドライブもこなせるものになった。

かつてのV8がそうだったように、新型V6もまた存在を声高に主張しないが、これもまた快適性の上では美点となっている。

しかしながら欠点も

欠点はハンドリングにある。相変わらずそれは穏当に過ぎて、夢中になれるようなものではない。自信をもって大胆に走れるかというのとはまた別の問題だ。

ノーズが軽くなり、LSDが備わることで、これまでになく敏捷性は高まり、リアの外輪の回転を上げてより速くコーナリングすることもできる。

とはいえ、ドライバーがアジャストできる幅は狭く、スタビリティコントロールをオフにしても、ドライブトレインがさっさと辻褄を合わせてしまう。

オーバースピードやスロットルの開きすぎは、アウディにつきもののアンダーステア対策を呼び覚ますだけだ。

もっとも、このメーカーが直進安定性に固執していることを理解していれば、それもあきらめがつくのだが。

■「買い」か?

先代ほどの「買う意義」はある?

先代モデルを選ぶ最大の動機は、魅惑的な4.2ℓV8を積む最後のモデルだという点にあったが、今回はそれが失われた。新型は、エンジンが売りのクルマではなくなった。

これをどう評価するかは、その立ち位置の変化をどう捉えるか次第で変わる。モンスターGT的な雰囲気を見出し、アウディらしいインテリアの華麗さやエッジの利いたシャープなルックス、技術的な秀逸さに好感を抱くなら、有力な選択肢となるだろう。

アウディRS5

■価格 £62,900(904万円) 
■全長×全幅×全高 NA 
■最高速度 280km/h 
■0-100km/h加速 3.9秒 
■燃費 11.5km/ℓ 
■CO2排出量 197g/km 
■乾燥重量 1665kg 
■エンジン V型6気筒2894ccツインターボガソリン 
■最高出力 450ps/5700rpm 
■最大トルク 61.1kg-m/1900-5000rpm 
■ギアボックス 8速オートマティック