米国務省は27日、世界各国の人身売買に関する2017年版の年次報告書を発表した。ティラーソン国務長官は発表に際しての演説で、北朝鮮は5万〜8万人の労働者を中国やロシアに送り込んで強制労働に従事させ、不法に外貨稼ぎをしていると非難。受け入れ国に対し、労働者らを北朝鮮に送り返すよう求めた。

北朝鮮は同報告書で、15年連続で4段階中の最低ランクに位置付けられている。

一方、報告書は昨年まで下から2番目にランク付けされていた中国について、北朝鮮労働者の強制労働について対策を講じていないなどとして、最低ランクに引き下げた。最低ランクはほかに、イランや北朝鮮、ロシア、シリアなどだ。

米国務省が、北朝鮮労働者の強制労働を問題視したことは、各国の関心を呼び起こす上で歓迎すべきことだ。

ただ、北朝鮮と中国における人身売買で言及されるべきことは、この問題だけではない。

北朝鮮と陸続きの中国には大勢の脱北者が逃げ込んでおり、いまも万単位の人が、韓国などへ逃れることができず潜伏している。中国当局は北朝鮮に協力し、そうした人々を摘発しては強制送還しているのだ。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

そのような状況下、脱北女性がブローカーに監禁され性的搾取を受けたり、人身売買の被害に遭ったりしている実情については何度も述べてきた。

たとえば12歳の時に家族に先立たれ、独りでコチェビ暮らしをしていた女性は、中国に行けば豊かな暮らしができるというブローカーの話を聞き、17歳の時に国境を越えた。

ところが、それ自体が人身売買の罠だった。本人も金額はわからないが、13歳年上の中国人男性に売られて「結婚生活」を送った。

その後、夫の暴力に耐えかねて「嫁ぎ先」から脱出し、米国の脱北者団体に助けを求めた。

この女性はソウルで記者会見した際、「まだ幼い北朝鮮の女性たちが中国で人身売買の被害にあっている。生き抜くために中国にやってきたが言葉と身分の壁を超えられず韓国行きを決心した。韓国では人間らしい暮らしがしたい」と話していた。

北朝鮮が核実験を強行するたび、国際社会は対北制裁における中国の「本気度」に疑いの目を向けてきたが、このような状況を問題視しないのはナンセンスである。

何故なら、北朝鮮の核・ミサイルの暴走を止めるには金正恩体制の変更を考えねばならず、それは北朝鮮の民主化を考えるのと同義だからだ。中朝国境地帯で北朝鮮の人々の人権が守られないならば、北朝鮮内部に変化を望むことはほとんど不可能なのである。

中朝国境地帯でいま何が起きているかを知ることは、アジアの安全保障を考えるうえでも重要なことなのだ。