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継続的な頭痛や発熱、項部(こうぶ)硬直などの症状を呈し、脳炎まで移行するとけいれんや意識障害が起きて後遺症をもたらすケースもある髄膜炎。夏風邪の原因ウイルスで発病することもあり、これから夏にかけての時期はウイルス性髄膜炎に注意が必要となる。

本稿では高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師の解説をもとに髄膜炎の予防と治療法を紹介する。

○成人と子ども向けのワクチンは異なる

髄膜炎罹患の原因となるものとしてはウイルスや細菌、真菌(カビ)、結核菌

などがあるが、ウイルスが原因の場合が最も多い。具体的な原因ウイルスとしては「コクサッキ―ウイルス」「エコ―ウイルス」「ヘルペスウイルス」がある。一般的にウイルス性髄膜炎は重篤化しにくいが、ヘルペスウイルスだけは別。髄膜炎からヘルペス脳炎まで移行すると記憶障害や意識障害などを引き起こすケースもあるため、特に注意が必要となる。

その次に髄膜炎の原因として多いのが細菌だ。細菌性髄膜炎は、これまで成人に比べ小児に多いとされてきた。発症年齢によって原因菌の頻度は異なるが、本邦では、インフルエンザ菌が原因となる頻度が最も高く、次いで肺炎球菌、B群溶血連鎖球菌、大腸菌や黄色ブドウ球菌と続いている。ウイルス性と細菌性を比較すると、細菌性髄膜炎の方が重篤化しやすい傾向にある。

ウイルス性は季節性のものもあるが、細菌性は年中を通して罹患の危険が潜む。それだけに予防が重要となってくるが、細菌性に関しては主要な原因となるインフルエンザ菌b型(ヒブ)と肺炎球菌に対するワクチンの有用性が認められている。子どもの場合、このヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンが2013年4月から定期接種化(公費負担)されており、生後2カ月から接種可能となっている。

一方、成人向けの予防接種には髄膜炎菌ワクチンがある。髄膜炎菌性髄膜炎は日本では少ないが、アフリカや欧米では多く報告されている。厚生労働省検疫所によると、髄膜炎菌性髄膜炎はアフリカ中央部に多発しており、「髄膜炎ベルト地帯」と呼ばれる地域もあるという。特に海外へ渡航する際は髄膜炎菌ワクチンを接種しておいた方が無難と言えそうだ。

「ワクチン以外に成人で一般的に言われている予防法としては、規則正しい生活をすることでしょうか。『免疫が落ちている』『体力が低下している』『不規則な生活で食事もままならない状態で仕事を無理して続けていた』……。こういった生活上の負担で髄膜炎を発病することがあります。十分な食事と睡眠をしっかりとり、規則正しい生活を送ることが予防につながるというのは、髄膜炎だけではなく、ほかのどの病気でも一緒ですね」

○後遺症をもたらすサイトカインとは

治療に関しては、基本的には投薬中心の保存的治療を実施する。病気に罹患する原因が複数あるため、その治療法も当然、原因に沿ったものとなる。

「ウイルス性髄膜炎ならば抗ウイルス薬を用いますし、細菌性髄膜炎のケースであれば抗菌薬を投与します。また、結核・真菌に関しては抗真菌薬、抗結核薬という選択ですね」

ただ、髄膜炎の治療に際して注意しないといけないのがサイトカイン(細胞間で細胞の増殖や分化、細胞死や治癒といった情報伝達を行うたんぱく質の総称)の存在だという。

一般的に、免疫細胞が細菌などの存在を感知するとサイトカインを放出し、感染症の増悪を防ぐ。ところが免疫系が過剰に反応すると、この炎症促進作用のあるサイトカインやそれによって誘導された炎症細胞が正常な神経細胞の組織破壊を引き起こしてしまうことがある。

「副腎皮質ステロイドは免疫機能を低下させるため、感染症治療にはタブーとされてきました。しかしながら、この過剰な炎症の連鎖を断ち切るため、副腎皮質ステロイドを投与することがあります。そうすることで二次的に起こっている過剰な炎症反応を止めるのです」と福島医師は話す。

いずれにしろ早急に適切な治療が行われないでいると、髄膜炎が重症化し、たとえ救命できたとしても後遺症が生じる可能性がある。髄膜炎に罹患した人の多くは社会復帰を果たせているが、それでも2〜3割ほどは後遺症に悩まされてしまうとのこと。すべての病気に共通するが、特に髄膜炎に関しては、ほかの病気以上に早期治療の重要性が高いと言えるだろう。

※写真と本文は関係ありません

○記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。