サウジ・イラン「戦争」の危険性、見過ごす米露の身勝手な思惑

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サウジアラビアとイランの直接的な軍事衝突の可能性は高まっている。対立が本格化すれば、中東産原油の供給には混乱が生じ、1バレル当たりの価格は再び60ドル(約6700円)、あるいは100ドルの水準にまで高騰する恐れがある。

だが、水圧破砕法(フラッキング)によって生産量を増やした米国の石油・ガス開発業者らは、両国の衝突をどこかで期待しているのかもしれない。そうなれば原油は供給不足に陥り、各社は石油を必要とする米国の同盟国のために、短期間に大幅な増産を求められるからだ。

サウジアラビアとイランは何年も前から「代理戦争」という形で両国間の宗教的、政治的な争いを収束させようとしてきた。そのためこれまでのところ、原油価格にはほとんど影響を与えてこなかった。

そうしてきた理由は簡単だ。ペルシャ湾沿岸地域で産出される原油の輸送に混乱を生じさせたくなかったからだ。そして、同地域からアジア・欧州の米国の同盟国への円滑な輸送は事実上、米政府によって保証されてきた。

だが、その二国の態度に変化が見え始めている。ペルシャ湾岸で実際に軍事衝突が起きれば、中東産原油の供給体制は混乱。価格は数週間ということはなくとも数か月のうちに、急騰する可能性がある。

「ペルシャ湾でそうした事態になれば、供給ルートは深刻な影響を受ける」と指摘するギリシャ・アテネを拠点とするある専門家は、「臨界点に達したとき、市場はより神経質になり、安定している時期に比べて物事に暴力的な反応を示すようになる」と警戒感を示す。

さらに、「必ずしも1956年にホルムズ海峡が完全に封鎖されたときのようなことにはならないだろう」の考えを示す一方で、「封鎖と(流通の)混乱の可能性は動揺を招き、原油相場は強気になるだろう。全ての市場関係者らはヘッジの必要性からロングポジションを取り始め、価格は1バレル当たり60ドル以上の水準に高騰すると考えられる」と述べている。こうした状況になれば、米国の採掘業者は供給不足を補うために生産量の引き上げを急ぐことになる。

「損益分岐点は1バレル当たり32〜55ドルと業者によって大きく異なるだろうが、同50ドルを超えれば圧倒的多数が利益を得ることになる。米国はあっという間に貿易赤字を解消し、さらに主要な石油輸出国としての強固な立場を築くことができるだろう。中東の潜在的危機が長期化するほど、米国の関連企業の市場シェアは拡大する。米国の政治的安定は、多くの消費国にとって原油の円滑な供給を保証するものになり得るからだ」

だからこそ米政府は、両国の直接的な対立を阻止するような行動に出たがらないのかもしれない。そして、ロシアも同様の考えかもしれない。原油価格が値上がりすれば、自国の関連企業が潤うことになるのだ。

また、皮肉なことではあるがイランとの「戦争」は、サウジアラビアにも利益をもたらすことになる。原油価格の上昇は、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)に向け、有利な状況を生み出すことになるだろう。