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中国で商売をし、かつ拡大していくためにはきれい事や正直だけではうまくいくわけがないと考えるべきです。古くから中国では、「賢い兎は巣穴を三つ持っている。一つつぶされてもまだ二つ、二つつぶされてもまだ一つある」そうやってとにかく生き残りを図る、という言い伝えがあります。「賢く」生きなければと思います。

■新たに合弁を組み危機を脱出
2000年4月に着任して3カ月くらいたったころ、政府当局からの突然の一通の文書によって、企業活動が極端に制限され、有効な対応策が見いだせず、会社責任者として困り果てていました。

そんな時に、1993年会社設立時に支援していただいた方が、現在の独資状態対策に窮していることを聞きつけ、手を差し伸べてくれました。新しく合弁をスタートさせたらどうか、と提案してくれたのです。

それを受けて、日本本社との間に立って交渉し、基本的合意に至りました。その後も合弁協議はとんとん拍子に進み、2001年7月には改めて日中合弁企業として登録することができ、大きな難題は解消されることになりました。

パートナー側から1名の方に董事会(役員会に相当)に入ってもらい、経営陣の構成も固まりました。その協議の中で、パートナー側は対外的な対応を重点とすること、当方は会社の経営や内部運営を行うというふうに仕事の分担も明確にしました。

■合弁の成功が事業発展につながる
合弁会社の運営については、日本では暗黙の了解などという曖昧な状態であることが少なくありませんが、中国では、はっきりとした方がパートナー側もやりやすくなり、お互いに良いと思います。合弁契約書とは別に運営合意内容を文書にまとめ、双方が保管することとしました。

上海で経験した「同床異夢」になってしまってはならないと考えました。双方が向かい合わせになって対峙(たいじ)するのではなく、両者が同じ方向を向くことが大切で、そうすれば業容の発展に寄与することは間違いありません。

合弁が失敗する多くの原因が、日方中方間のコミュニケーションの不足にあるのではないかと私は思います。そのため、私はパートナー側から派遣された董事(役員)の方と、毎朝意見交換を行い、コミュニケーションを十分取ることにしました。それは私がいた2012年末までずっと継続し、双方の意思疎通を見事に成し遂げ、そのことが、業績向上や会社発展の上で、大きな力を発揮したのではないかと思っています。

■三本の柱で経営・運営を安定
“賢い兎”のように、会社も三本柱の収入源をもって経営を安定させ、日頃の運営についてもがっちりとした三本の柱で安定させなければなりません。柱が一本ではすぐにぐらついてしまいます。二本でも不安定でなかなか自立できません。

「会社の幹部社員」という柱、「社外の協力者」という二番目の柱に加え、この新たな合弁により、対外対応をしてくれる三番目の柱を持つことができ、安定した会社運営が可能になりました。

さて、この第二次合弁は極めてうまく、そして気持ちよく展開できました。そして何より安心して事業展開ができるようになり、会社発展のスピードがぐんぐん上がっていくことになりました。

古来中国の兵法書である「兵法三十六計」には、戦いに勝つ方策を解説してあります。誤解を恐れずに言うならば、それらの言わんとするところは、いかにして相手を攪乱(かくらん)し、騙し、味方を有利に導くかということであると思います。そういう厳しい現実の中で生き抜かなければなりません。そのリーダーとして、智恵を絞りに絞って戦うことが必要です。

社員の向こう側には妻や子供たちといった彼らの家族がいて、その生活がかかっているのです。中国独特のカントリーリスクも時には立ちはだかってきます。会社を守り、社員達を守るには、せめて三つくらいの備えがないと対応しきれません。「賢い兎」でなければ生き残れないということです。

■筆者プロフィール:曽賀 善雄
1949年和歌山県生まれ。1971年大手セキュリティサービス会社に入社。1998年6月、中国・上海のグループ現地法人の総経理(社長)として勤務。2000年4月から13年近くにわたり中国・大連の現法で総経理(社長)として勤務。2013年1月に帰国、本社勤務を経て2014年7月リタイア。