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どうせなら革ジャンと革パンでまたがりたい。

BMWのバイクといえば、横にシリンダーが張り出した水平対向エンジンが有名ですが、そのエンジンを使ってカフェレーサーを作ると、こんなにカッコ良くなるなんて!

カフェレーサーとは、1960〜70年代のイギリスで、カフェを拠点に改造した愛車で夜な夜なレースに明け暮れていたライダーたちと、彼らが乗っていたバイクのこと。ハンドルを低くし、カウルやシングルシートなどを装着したスタイルが主流でした。

そのスタイルを現代の技術で再現したモデルがBMWの『R nineT Racer』です。



BMW Motorrad Japan

R nineT Racer

価格:183万円

カフェレーサーの世界観をBMW独自技術で再現



5月に発売されたのこのモデル、同社の『R nine T』というモデルをベースに、ちょっとクラシカルなロケットカウルとシングルシート、それに低くセットされたハンドルと、カフェレーサーの文脈に沿ったカスタマイズが施されています。



▲ショートタイプのロケットカウル。丸みを帯びたラインが美しいです。



▲低めのセパレートハンドルはレーサーには欠かせません。クラシカルなメーターもいい雰囲気。



▲ショートタイプのシングルシートを装着。これもカフェレーサースタイルの文脈に沿ったもの。



▲マフラーはシンプルな一本出しタイプ。排気音は静かなものの力強い音を響かせてくれます。

心臓部に積まれているのは、左右に張り出したシリンダーが特徴の水平対向エンジン。1923年にデビューしたBMW最初のバイク『R32』から受け継がれる伝統のエンジンです。ボクサーエンジンとも呼ばれ、独特のエンジンの鼓動はBMWならではの個性にもなっています。同社の水平対向エンジンには水冷式もありますが、エンジン音や振動をダイレクトに感じられる空冷方式をあえて採用。近年のBMWが積極的に採用しているドライブモードなどの電子制御も、トラクションコントロールを除いてあえて装備されていません。



▲シルバーのヘッドカバーと空冷の特徴であるフィンが美しい。排気量は1169ccで最高出力は110PS。

駆動方式もBMWらしさが詰まっており、一般的なチェーンドライブではなく、ドライブシャフトで駆動力を伝えるシャフトドライブに。ボクサーエンジンとともに『R32』から採用されている機構です。サスペンションもシャフトドライブと相性のよい「パラレバー」と呼ばれる独自のシステムが採用されています。



▲BMW独自のリアサス構造パラレバー。アクセルを開けたときに、車体が左右に揺れるトルクリアクションを防いでくれる。

レーシーなポジションなのに乗りやすい



車体にまたがり、遠目で低いハンドルグリップを握ると、自然とタンクの上に体を押し付けるようなライディングポジションになり、レーサー気分が否が応にも高まります。



▲ ハンドルは低く、ステップ位置は高いので、ヒザが鋭角に曲がりレーサーっぽいライディングポジションになります。

走り出してみると、エンジンのドドドドという低く穏やかな音と小気味いい鼓動がなんとも心地よい。低回転からも十分にトルクがあり、「レーサー」と名乗ってはいますがピーキーということはなく、乗りやすい。

ボクサーエンジンバイクに共通する低重心からくるバランスの良さや安定性は健在。足回りも現代のスーパースポーツマシンほど硬くないので、街乗り程度の速度でも気持ち良く倒し込めます。車重210kgという大排気量を忘れさせてくれる軽快な乗り心地は、カーブの多いコースをいつまでも回っていたいと思うほど魅力的でした。



▲やべえ、これ超楽しい……。

誰と競争しているわけでもないのに、さっきよりも速く走れたか気になってしまう。純粋にバイクで走ることの楽しさを感じられる一台です。

カスタムを前提としたモデル展開



『R nineT』はヨーロッパを中心として再燃しているクラシックカスタム人気に応えるべく、送り出されたシリーズ。カスタムビルダーに頼らなければ難しいようなスタイリングをメーカー純正として提供し、ライダーにとって特別な一台が手に入るよう「カスタムを楽しむ」ことを前提に設計されています。BMWらしい独自の機構は残しつつも、4つの部分で構成されるフレーム、取り外し可能なリアフレームなどを採用し、手を入れやすい構成にしています。モデルは続々と展開されており、ちょっとした荒地でも走れる『R nineT Scrambler』、よりベーシックな装備で手頃な価格に抑えた『R nineT Pure』とバリエーションを増やしています。



▲タンカラーのシートとフォークブーツがクラシックな印象を際だてる『R nineT Scrambler』(価格:176万5000円)。

スクランブラータイプの『R nineT Scrambler』にも試乗しました。スクランブラーもまた1960年代に登場したバイクのカスタムスタイルで、オフロード専用のモデルがなかった当時、アップタイプのマフラーやブロックタイヤを履かせて走破性を高めたのが始まりです。『R nineT Scrambler』もブロックタイヤこそ履いていないものの、インナーフォークを小石や泥から守るフォークブーツを装備していることやアップライトなポジションなど、ちょっとした未舗装路なら走れてしまう設計となっています。



▲アップタイプの二本出しマフラー。デザイン性もよくカッコイイ!

鼓動感やエンジンのパワフルさは『R nineT』そのままですが、やはり乗り心地が違います。ホイールベースが若干長いためか、さらに直進安定性が高く、ポジションともあいまってゆったりと乗れます。

違いが顕著だったのはコーナリング。フロントホイールが少し大きい19インチになっており、緩やかなハンドリング特性です。よりゆっくりと倒し込んでいくので、気持ちにゆとりが持てます。

試乗コースだけでなく、街中でも乗りましたが、気負わず流すのがとにかく楽しい。ツーリングや普段使いなら間違い無くこちらがオススメです。

走りに没頭できる『R nineT Racer』と気軽に走りを楽しめる『R nineT Scrambler』。メーカー純正でも、昔憧れたスタイルと最新の走りが手に入るようになったなんて、いい時代になったものです。

文/増谷茂樹 撮影/石川順一

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