<ロシア疑惑を捜査するため任命されたムラー特別検察官は高潔な人柄で、海兵隊出身で脅しにも屈しない。その捜査は当然、ロシアコネクションや司法妨害だけでなく、トランプの怪しげなビジネスにも及ぶだろう>

5月17日にロバート・ムラー元FBI長官が特別検察官に指名されて以来、ドナルド・トランプ米大統領は正気がメルトダウンを起こしているようだ。

トランプはツイッターに「これはアメリカの政治史上最悪の魔女狩りだ。ひどい悪党たちの仕業だ!」と投稿するなど、怒りを爆発させている。AP通信によれば、トランプは「ホワイトハウスでロシア疑惑を扱っているテレビを見ると声を荒げ、誰かが自分の信用を落とし大統領を辞任させようとしている、自分は陰謀の標的だ」とまくし立てるという。トランプは怒りのあまり、まだ捜査はほとんど始まっていないというのに、ムラーの解任を本気で検討しているという報道もあった。

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トランプは恐れている。理由は想像に難くない。ムラーは高潔で粘り強い人柄で誰からも尊敬されており、今は米司法省で自分の力になる一流の捜査官や弁護士から成る捜査チームを招集中だ。チーム全体として見ればもう一世紀以上にわたって複雑なホワイトカラー犯罪を解明した経験を持つ。ロシア語が堪能な捜査官もいる。まるで、20世紀前半にアル・カポネ逮捕に活躍した米財務省特別捜査チーム「アンタッチャブル」の再来だ。

トランプたちは、ムラー率いる捜査チームの信頼を傷つけようと必死だ。だが彼らが思いついたのは、ムラーが任命したメンバーのうち3人が、昨年の米大統領選で民主党候補だったヒラリー・クリントン陣営に献金をしたことぐらいだ。

捜査は金に行きつく

トランプが不安になるのは、海兵隊出身のムラーに買収や脅迫は通用しないとわかっているからだ。買収や脅迫はトランプの常套手段だ。ジェームズ・コミーFBI前長官に対して、職にとどまるのと引き換えに自分への「忠誠」を誓わせようとしたのが良い例だろう。コミーもムラーもその手には乗らない。

今トランプは、ムラーに司法妨害の疑いで捜査されている。しかもトランプはテレビで、コミーを解任したとき頭にはロシア疑惑の捜査のことがあったと語り、半ば司法妨害を認めている。だから恐れる理由は十分にある。

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それだけではない。過去の米政権に対する捜査と同様、今回の捜査は決して狭い範囲のものでは終わらない。ビル・クリントン元大統領のホワイトウォーター疑惑を思い出してほしい。当時の独立検察官は、アーカンソー州の土地取引をめぐる捜査をきっかけに、クリントンがホワイトハウス元実習生との性的関係について虚偽の宣誓供述を行ったことを突き止めた。

ムラーはロシア疑惑の真相を追及するため、トランプと側近のロシアとの間に金銭の授受があったかどうかを徹底して捜査するだろう。

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マックス・ブート (外交問題評議会シニアフェロー、国家安全保障が専門)