相撲ファンは、1990年代の“若貴ブーム”をもじって、同じ田子ノ浦部屋所属の稀勢の里と高安を合わせ、“稀勢高(きせたか)ブーム”と呼んで盛り上がっているが、互いを思いやる兄弟弟子は、今後、どうなるのか…。

 新大関の高安(27)が7月9日から始まる名古屋場所での“優勝宣言”をして、注目を集めている。
 高安の魅力の一つに、向こうっ気の強さがある。これは、力士の基礎を叩き込んだ先代師匠(元横綱隆の里)に、「土俵の中では、たとえ相手が誰だろうと気を使うな」と教えられたからだそうで、その手加減や遠慮なしの相撲には定評がある。平幕時代には、横綱日馬富士の横面を思い切り張ってみせた。
 「畳の上では横綱に敬意を払わなくてはいけないけど、土俵の上では(番付の)上も下もありませんから」
 平然とこのように答えていたくらいだから、優勝宣言ぐらいで驚いてはいけないのかもしれない。

 6月11日、茨城県水戸市にある名横綱常陸山の銅像の前で、兄弟子・稀勢の里が奉納土俵入りを披露。その際、大関としては異例の太刀持ちを務めた高安は、最後の太刀持ちとあってこんなリップサービスをした。
 「(この4カ月半)横綱の太刀持ちをさせていただき、とてもいい経験をした。(身近に)土俵入りを見られて刺激になった。今度は自分も違う形でこの場に戻って来られたらと思います」

 “違う形”とはつまり、優勝者であり、横綱を意識しての発言だ。だが、高安のビッグマウスは、これにとどまらない。大関昇進前の記者会見で、次なる目標を問われたときのこと。
 「優勝です。上(横綱)に這い上がるには優勝しないとできませんから」

 こうなると、気になるのが稀勢の里との関係だ。先場所、途中休場してファンをがっかりさせているだけに、失地回復には優勝しかない。本人もその気十分で、6月15日には千葉県習志野市の阿武松部屋に、休場以来、初めて出稽古を敢行し、先場所、新入幕で敢闘賞を獲得した阿武咲を相手に指名した。
 「見ての通り。いいんじゃないですか」

 左肩にテーピングもせずに15番を取り、笑顔を見せていた。翌日には高安との稽古も再開。だが、もしこの2人が優勝決定戦にもつれ込むような事態になったらどうなるか。
 「自分のために一生懸命やりたい」

 高安は、兄弟子に遠慮する気はサラサラない。ガチンコでぶつかっていくだろう。モンゴル勢も指をくわえて見ているはずはない。土俵は「暑く、熱く、篤く」名古屋場所が盛り上がることは間違いない。