「ロードレースの大聖堂(Cathedral of Speed)」で10勝目。バレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)が今季初勝利で、会場を埋めたファンを大いに沸かせた。


伝統のオランダGPを制したのは、38歳のロッシ(中央)「ダッチTT」の通称で知られるオランダGPは、1949年のロードレース世界選手権初年度から現在に至るまで、途切れることなく連綿と毎年レースカレンダーに組み込まれている唯一の大会である。さらに、会場のTTサーキット・アッセンで行なうダッチTTとしての歴史はさらに長く、第1回の開催は1925年にさかのぼる。まさに歴史と伝統に裏打ちされた由緒あるレースだ。

 ロッシがそこで初優勝を遂げたのは125cc時代の1997年。翌1998年には250ccで優勝。その後、最高峰クラスに昇格してからは2002、2004、2005、2007、2009、2013、2015の各年に勝利を挙げ、今年で10回目となった。アッセンの歴史に名を残すライダーであることは間違いないが、38歳の現役最年長となった今でもスーパースターとしての人気が衰える気配はいっこうになく、今年も大勢のファンが会場を埋め尽くした。ロッシ自身、レースで勝つのは昨年の第7戦・カタルーニャGP以来19戦ぶりだから、喜びも一入(ひとしお)だ。

 表彰式を終えたロッシは、その後に行なわれたプレスカンファレンスの会場で「1時間前の素晴らしい余韻が残っている」と充ち足りた表情をうかべ、「レース後の5〜6時間後まで続くこの余韻を味わうために、レースを戦っているんだ」と述べた。

 今回のレースは、さまざまな面で不確定要素や予想外の波乱が待ち受けていただけに、満足感はさらに大きかったことだろう。

 前戦のカタルーニャGPは、本来ならヤマハ勢が有利と目されていたコースだが、ロッシはトップから大きく引き離された8位。チームメイトでランキング首位に立つマーベリック・ビニャーレスはさらに後方の10位でレースを終えた。カタルーニャGPでもロッシは過去に10勝を挙げており、カタルーニャは相性の面でも抜群のはずだったが、今年のレースは課題しか残らなかった一戦になった。

 そのカタルーニャGP後に行なった事後テストで、ヤマハは今シーズンの問題を解消すべく、ファクトリーの両名に新しい車体を投入した。両選手とも好感触を得た様子だったが、そのテスト後最初のレースとなった今大会では、ロッシは金曜のフリープラクティスからこの新しい車体を試してフィーリングのよさを確認できたと、6番手タイムで終えたセッション後の夕刻に話した。

 翌日の土曜は雨の1日になった。ここアッセンは、1日のなかでめまぐるしく変わる天気でも有名で、今年のレースウィークも曜日ごとに異なったコンディションになった。午前午後とも雨のセッションを終えて、ロッシは2列目4番グリッドを獲得。

「新しい車体がウェットでどう機能するか、ということに興味があった。17年型(スタンダード)ではウェットコンディションで苦労していたので、今日は悪くなかった」

 その口ぶりや表情からも、決勝レースでトップ争いの一角を占める自信はありありとうかがえた。

 日曜午後の決勝は、ドライコンディションを維持したものの、どんよりと重い空の下、いつ雨が来てもおかしくない状況でレースがスタートした。ロッシは序盤から先頭グループを構成し、12周目にトップに立った。

 ダニロ・ペトルッチ(プラマック・レーシング/ドゥカティ)と激しいトップ争いを続けていた19周目には、「フラッグ・トゥ・フラッグ」ルールでマシン交換(今回の場合はドライ用のスリックタイヤからウェット用のレインタイヤを装着したマシンへの乗り換え)を許可する白旗がコース上のマーシャルポストに提示された。マシン交換のためにピットへ戻れば、トップグループから脱落してしまう。だが、雨が激しくなれば、早めにマシン交換をした者が一気に有利なポジションに躍り出る。

 上位陣の選手たちは、互いの動向を見極めながらも誰もピットには戻らず、コース上に残って争い続けた。幸い、雨脚が強くなることはなく、ロッシとペトルッチの一騎打ち状態が続き、26周の戦いを終えたロッシはペトルッチよりも0.063秒早くチェッカーフラッグを受けた。

 優勝したロッシの背後では、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が3位でゴールし、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)が5位でレースを終えた。開幕以来、ランキング首位を維持してきたビニャーレスが転倒ノーポイントで終わったために、ドヴィツィオーゾが115ポイントでトップに立ち、ポイント加算のなかったビニャーレスを4点上回った。ビニャーレスと3点差でロッシが続き、さらにその4点後方にマルケスと、チャンピオン争いは緊迫度を増している。

「次のザクセンリンク(ドイツGP)はホンダが速く、特にマルケスが圧倒的に強い。でも、今年は一戦ごとに様相ががらりと変わるので、次がどうなるのか興味深いところだ」とロッシ。

 一方、ランキング首位に立ったドヴィツィオーゾは、ドゥカティの特性とコースの相性が気になるところだが、レース後に「今回(アッセン)もそこが不安だったけど、(激しい3位争いの結果)5位で終えた。だから、もう何も心配しないよ」とリラックスした笑顔で述べた。

 この状況で、レースは2週連続開催の第9戦・ドイツGPへと向かう。

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