西村義明プロデューサー

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 日本の手描き背景美術を守るために……米林宏昌監督の長編アニメーション作品『メアリと魔女の花』には、西村義明プロデューサーが立ち上げたアニメーション制作会社スタジオポノック以外にも、あるスタジオが重要な役割を果たしている。そのスタジオこそ、西村と川上量生(ドワンゴ)、庵野秀明(株式会社カラー)らが立ち上げた背景美術スタジオ「でほぎゃらりー」だ。

 アニメーションといえばキャラクターが動く姿が真っ先に思い浮かぶかもしれないが、その画面の大部分を占めているのはキャラクターの後ろの風景を彩る背景だ。世界が誇る手描きの背景美術を今後もつなげていくために……西村プロデューサーは2015年2月、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』がノミネートされた米アカデミー賞授賞式の場で、新たな背景美術スタジオを立ち上げることを決断したという。

 「2015年2月に決断をして、川上さんと庵野さんのお二人に協力を願いました。(ジブリで『平成狸合戦ぽんぽこ』『もののけ姫』などを担当してきた)男鹿和雄さんと、同じくジブリの背景美術の中心を担ってきた武重洋二さんにも、意図を説明してご賛同いただいて」(西村プロデューサー)。その前年の2014年には、スタジオジブリが制作部門を解散する方針であると公表されていた。

 「ジブリの制作部門が解散されて、ジブリに所属していたクリエイターがバラバラになりつつあったんです。3分の1は業界を去り、3分の1はテレビシリーズに行き、3分の1が劇場用アニメーションの現場に残りました。自分たちが価値あるアニメーションを作ろうとしたときに、優れた美術スタッフがいないと実現は困難です。志だけではアニメーション映画は作れません。彼らの描く美しい美術をなくしてはいけないと、一人一人に意義を説明して参加を呼びかけました」(西村プロデューサー)。

 発案から5か月後、2015年7月にでほぎゃらりーは設立された。「アカデミー賞の帰りの空港のロビーで川上さんにお話ししたのが最初です。川上さんからは、庵野さんにも協力してもらいましょうと言われ、庵野さんとお会いし、賛同をいただいて。『アニメーションの画面の7割は背景美術が占めている。美術スタジオの運営は経済的な苦しさも付きまとうけど、新しい才能の育成も含めてアニメーション業界に貢献していきましょう』と。庵野秀明さんの存在は非常に大きいです。そういう気持ちをお持ちの方々と、こうして一緒にできることは幸運です」。

 そして7月8日より公開される『メアリと魔女の花』で、その技術力を世に知らしめることになるでほぎゃらりー。しかも今回の作品の美術監督は、劇場長編作品の美術監督は初めてという31歳の久保友孝を抜てきし、彼を名立たる美術スタッフが支えるという構図で制作した。これからでほぎゃらりーの主戦場は、劇場長編アニメーション作品を予定しているそう。西村プロデューサーは「僕らもこれからもアニメーション映画を作っていきたいし、個人的にも庵野さんの作品が楽しみなんです。人物やアニメートばかりに目が行きがちなアニメーション映画ですが、背景美術にも注目してもらえると違った楽しみ方もできると思います」とも語っていた。彼らには、7月1日に開催される『メアリと魔女の花』“でほぎゃらりー株主鼎談”付き特別試写会で集まる予定がある。(編集部・井本早紀)