Cornelius、清水翔太、ハルカトミユキ、LILI LIMIT、NUUAMM…新作の“歌とリズム”を聴く

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 ダンスミュージック、ヒップホップなどを取り入れながら、加速度的に表現の幅を広げている日本のポップミュージックだが、楽曲の基本となり、その魅力を決定づけるのはやはり“歌とリズム”の関係性。そこで今回は、声、旋律、言葉、リズムの融合、組み合わせを自覚的に追求しているアーティストの新作を紹介したい。

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■Cornelius『Mellow Waves』 シングル曲「あなたがいるなら」「いつか / どこか」を含む、Corneliusの約11年ぶりの新作アルバムは、『Mellow Waves』というタイトル通り、芳醇なメロディ(歌)と波を想起させるようなリズムがゆったりと溶け合う作品となった。ビート、旋律、言葉、声はトレモロなどのエフェクトにより繊細にゆらぎ、テンポ、サウンドメイクを含め、どこか不安定な感触を聴く者に与える。さらに印象的なのは、時間そのものをテーマにしたような歌詞。遠い未来で生きる人たちに話しかける「未来の人へ」(作詞:坂本慎太郎)、螺旋を行き来しながら変化を繰り返す命を照らし出すような「Helix / Spiral」(作詞:小山田圭吾)など、時間軸を歪めるような歌の世界もまた、本作の大きな魅力だ。

■清水翔太『FLY』 前作『PROUD』(2016年3月リリース)に引き続き、清水翔太が自らトラックメイクを手がけ、ヒップホップ濃度を高めたニューアルバム『FLY』。前作ではトラップ・ミュージックのテイストを多用し、現行のUSヒップホップとの親和性の高さを示していたが、シングル曲「My Boo」「FIRE」を含む今作は、オーセンティックなR&B、ソウルミュージック、ゴスペルなどの色合いが強まり、よりクラシカルな雰囲気を描き出している。ルーツ回帰を感じさせるサウンドと重なるように、自分自身をリアルに綴っている歌詞も本作の特徴。特に清水翔太として生きることを改めて示したタイトル曲「FLY」は、“良質のR&Bポップを生み出すアーティスト”から“自らをストレートに歌うシンガーソングライター”への移行を強く示す楽曲だと思う。

■ハルカトミユキ『溜息の断面図』 作曲家としてのミユキの個性が初めて発揮された前作『LOVELESS / ARTLESS』からわずか10カ月でリリースされるハルカトミユキの新作『溜息の断面図』は、ハルカ、ミユキのメロディ/サウンドメイクのセンスがしっかりとぶつかり合う、きわめて刺激的な作品となった。80sポップを想起させるミユキのダンストラックに刹那的な恋愛をテーマにしたハルカの歌詞が乗った「インスタントラブ」などは、ふたつの異なる才能が有機的に結びついた、このユニットの新たな魅力につながっていると思う。現代の社会に渦巻く欺瞞、まやかし、不誠実を照射する歌詞が多いなか、未来への希望を歌ったラストの「種を蒔く人」(作詞・作曲/ハルカ)の前向きな思いも強く心に残る。

■LILI LIMIT『LAST SUPPER EP』 エレクトロ、トロピカルハウス、ネオソウルといった海外シーンの潮流を感じさせるバンドサウンドとJ-POPの王道とも言える日本語の歌を融合させてきたLILI LIMITの新作『LAST SUPPER EP』は、より共感度の高いポップスを志向した4曲入りEP。本作のコンセプトをもっともわかりやすく示しているのがリードトラック「LAST SUPPER」。別れを決めた<僕ら>が<せっかくなら後味がこの先も続くように>と<最後の晩餐何を食べようかな>と考えているという切ない歌なのだが、軽やかに飛び跳ねるリズムとポップに振り切ったメロディによって、とことんブライトなポップチューンとして成立している。<思い出モニュメント>のリフレインをはじめ、一瞬で耳に残るキャッチーなフレーズを作れることもこのバンドの大きな武器だろう。

■NUUAMM『w/ave』 青葉市子、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)によるユニット・NUUAMMの2ndアルバム『w/ave』。前作『NUUAMM』同様、ふたりだけの親密な空間で制作されたという本作は、青葉市子の美しく凛としたギター、マヒトゥのサイケデリックなサウンドメイク、そして、ふたりが紡ぎ出す、寓話と現実が溶け合うような歌の世界がひとつになった作品に仕上がっている。コンセプトは“人間がいなくなった都市と、そこで踊る幽霊のためのサウンドトラック”。現の世界にしっかりと軸を起きながら、豊かで(ときに恐ろしい)イマジネーションの海にどこまでも深く潜れることこそが、このユニットの特性だろう。シアトリカルな要素を自然に取り入れたふたりのボーカリゼーションもきわめて興味深い。(森朋之)