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■どんなクルマ?

新型の5代目ディスカバリー(以下、ディスコ5)は、最近の新世代ランドローバー各車の顔ぶれから考えて、ある意味で予想どおりの成り立ちといっていい。

基本骨格は同社ヒエラルキーでは兄貴分にあたるレンジローバー(以下、レンジ)と共通点が多いアルミモノコックで、内外装デザインは直系弟分たるディスカバリー・スポーツの拡大版。ダッシュボードのレイアウトがレンジと酷似するのは当然だが、センターパネル両端のアルミ(調)支柱が上まで貫通する意匠は、ディスカバリー・スポーツに似る。

さよならラダーフレーム アルミモノコックに

骨格設計が先代のビルトイン・ラダーフレームからアルミモノコックとなったことで、本国メーカーでは「最大360kgの軽量化」と主張するが、さすがにそれは大げさ(ウソではないだろうが、比較の条件設定が極端)。日本仕様の新旧ディスコ(スーパーチャージドV6ガソリンの7人乗り:写真橙)の車検証重量で比較したら、その差は130kgだった。まあ、大幅に軽くなったのは間違いないが。


ディスコ5はついに日本でも待望のディーゼル(写真黒)が用意されて、日本での売れ筋も圧倒的にディーゼルになることが予想される。日本仕様はひとまずディーゼル、ガソリンともに3.0ℓV6過給で、新世代エンジンらしく、ディーゼルといっても極端に重くないのが嬉しい。


ディスコ5のディーゼル車は同ガソリン車比で重量増はわずか20kg。しかも、そのうちのエンジン重量が影響する前軸量の増加は10kgで、後軸にかかる残り10kgの大半はディーゼル特有の排ガス処理システム分と考えればいい。いずれにしても、2.4t級のクルマでの20kgだから、運動性能に明確な影響をあたえるほどの重さはない。
 

■どんな感じ?

ホントに “フル” 7シーター?

ディスコ伝統のサードシートは居住性とシート収納機構の両面で明確に進化している。2列目スライドを最後端にセットしても、身長178cmの私が3列目に座って、身体のどこかが当たることはない。モノコック構造最大の恩恵は低床化で、ディスコ4でも優秀だった3列目のヒール段差はさらに改善。「フル7シーター」のキャッチフレーズに偽りや誇張はなく、多少の閉所感(とあくまで2人掛けであること)をのぞけば、アルファード/ヴェルファイアなどのミニバンの3列目より健康的な空間に思えるほどだ。

サードシート収納/展開機構もより使いやすくなっており、ワンタッチ(もしくはオプションで電動化も可能!)で、座面が斜め後方に沈みながらフラットになる。


内装の質感表現はさすが本体価格800万円級のクルマらしく高級。一見すると「レンジなみ?」と思える高級感だが、各部の素材づかいはレンジとは巧妙に差別化されている。今回の試乗会にはレンジも置かれていたのだが、2台をならべて比較すると、やはりレンジのほうが圧倒的に高級である。


車両感覚もしかり。ディスコ5は絶対的に小さなクルマではないが、レンジと比較するとわずかに低く、そしてひとまわりコンパクトなハンディ感がある。操縦性や身のこなしもレンジよりワンランク軽快だ。
 

先代より明確に “軽い”

ディスコ5では荷重変化に応じて車高を自動的に維持して、乗降時には自動的にローダウンする電子制御エアサスが標準装備となるが、可変ダンパーは用意されない。

そんなディスコ5は先代ディスコ4よりも明らかに軽く、オンロードでの正確性が飛躍的に増した。ディスコ4はオフローダーらしくステアリングの復元力が少し弱く、交差点などでも出口に向かって意識してステアリングを戻すことが必要だったが、ディスコ5ではそんなコツはまったく不要。ごくごく普通の感覚で運転できる。


標準タイヤサイズが55偏平の20インチということで、少しばかり危惧された「タイヤの過剰感」もほとんど抱かされることがない。鋭い段差の突き上げでこそエアボリュームの小ささを少し感じさせるものの、大半の路面での乗り心地や挙動の一体感に不満はない。まあ、これで19インチならさぞかし……と期待する気持ちもなくはないが。


今回は売れ筋になるであろうディーゼル中心の試乗となったが、とにかく静粛性が印象的。アイドルストップからの再始動でこそズドンという爆発力でそれと分かるものの、それ以外のアイドリングや加速時にはまるでディーゼルを感じさせない。
 

モノコック構造化 どう考える?

大トルクのおかけで、ごく普通の走行では常にガソリンより高めのギアを選んで、キックダウン頻度も明らかに低い。よって、意識せずにいると、ガソリンより静かに感じるくらいである。


ディスコ4より最低地上高が小さくなり、ボディも完全なモノコック構造となったことで、エキスパートが求める極限の悪路走破性では後退した部分もあるだろう。


ただ、現行ランドローバーにおいて、ディスコは当然のごとく頂点レベルの悪路性能が確保されており、走破性の各性能指標でもディスコ4よりレベルアップしている。

私のようなシロートが、あくまで舗装路主体で使って、せいぜい河川敷を這いずる程度なら、ディスコ5への刷新にデメリットはほとんどない。「オフローダーは古典なほど魅力的」というマニアな精神論を別にすれば……。
 

■「買い」か?

ディスコ5は「大人7人が健康的に常用できる高級SUV」という意味では、日本で入手可能なほぼ唯一の存在であり、さらに抜群のブランド力と最新鋭ディーゼルのアドバンテージも加味すれば、今の日本ではこれ以外の選択肢はなかなかない。


ただ、売れ筋のディーゼルHSEの本体価格は800万円を切るが、そのツルシ状態では意外なほど質素であることは意識しておくべき。たとえば、ディスコは「3列7人乗り」であることがレンジに対する最大の機能的特徴だが、じつは標準は2列5人乗り。3列目シート追加も28.8万円のオプションなのだ。

さらにアダプティブクルーズコントロールや車線逸脱警告、自動ブレーキなどのアドバンストセーフティ機構、プライバシーガラスに各部のヒーターなど、この価格帯のレジャーカーで「当然あるべき」装備の多くもオプションあつかいである。よって、ディスコ5にそれ相応の装備を加えると、HSEでも少なくとも850万円、油断すると、あっという間に900万円超のクルマになる。


国産車で唯一の競合車といえそうなトヨタ・ランドクルーザー200の価格を考えると、前記のめぼしい装備を備えたうえで700万円台のモデルがほしいところである。その場合は、エンジンは本国にある2.0ℓディーゼルでもかまわない。

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ランドローバー・ディスカバリーHSE(ディーゼル)

■価格 7,990,000円 
■全長×全幅×全高 4970×2000×1890mm 
■最高速度 209km/h 
■0-100km/h加速 8.1秒 
■燃費 11.6km/ℓ 
■CO2排出量 189g/km 
■乾燥重量 2380kg 
■エンジン V型6気筒2993cc 
■最高出力 258ps/3750rpm 
■最大トルク 61.2kg-m/1750rpm 
■ギアボックス 8速オートマティック