習近平氏(GettyImages)

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前回までのあらすじ:江沢民派ナンバー2の逮捕は近い? 習近平政権、内外情報機関の取り締まりを強化(1)

 2.中国人富豪の肖建華と呉小暉が相次いで逮捕

 6月13日、中国国内メディは、保険会社大手の安邦集団会長の呉小暉が9日に取り調べのため当局に身柄拘束されたと報じた。14日安邦集団は、呉は「個人的な理由」で職務を全うすることができなくなったとの声明を発表した。実に、国内外では、今まで「呉が当局に逮捕された」とのうわさが絶えなかった。

 中国最高指導部に近い情報筋は大紀元に対して、安邦集団は曽慶紅一家と密接な関係になったと話した。今年1月末に当局が香港から本土へと連行した富豪の肖建華と今回逮捕された呉小暉は、曽一族のために不正蓄財を行い、また様々な方法で江派閥人員らのためにマネーロンダリングや密輸を行っていた。同時に、肖と呉は江派閥に属する諜報員でもあった。国際的な大富豪として、ビジネス取引などを通じて、欧米政治要人らを賄賂し丸め込む工作を担当した。

 呉が当局によって拘束されたと報じられた13日に、中国政府系メディア「廉政嘹望」誌が中国語版ラインの「微信」公式アカウントで、中国人民大学の毛昭暉教授が5月初めに作成した『金融反腐敗は始まったばかりで、まだ高潮に達していない』をタイトルとする評論記事を掲載した。習陣営がこの記事掲載で、呉小暉の拘束は、安邦集団の背後にいる江勢力を打撃する、初歩段階であることを示唆したとみられる。

 3. オーストラリアのメディアが中国共産党の浸透を報道

 オーストラリアメディアの「フェアファクス・メディア」とオーストラリア放送協会(ABC)の時事報道番組「フォー・コーナーズ(Four Corners)」はこのほど、合同調査を行い、少なくとも5人の中国系富豪が政治献金を通じて同国の内政に干渉したと報道した。

 この5人のうち、アメリカとオーストラリア情報機関が、中国の諜報員であると認識している厳雪瑞、オーストラリア政界に巨額な政治献金を行う中国系億万長者の周沢栄と黄向墨、オーストラリア軍事要地のダーウィン港を99年間借りた中国企業の嵐橋(ランドブリッジ)集団会長の葉成があげられた。また同調査では、オーストラリアの中国学生会は中国大使館の支配の下に置かれていると示された。

 調査結果に対して同国国民は大きな衝撃を受けた。中国共産党の浸透で、同国の主権、国家安全および政治公平に大きな害を与えたと追及されて、辞任せざるを得ない政治家が多数いた。

 欧米諸国に対する中国共産党の浸透は周知の事実だ。しかし、オーストラリア主要メディアのこの突如の報道は、国際社会が中国共産党に対する姿勢が大きく変わったことを反映した。今後、より多くの国のメディアは同様に、中国共産党の浸透勢力を暴いていくのではとみる。

 4.習近平陣営は国家安全部にメスを入れる

 習陣営が、江派が掌握している情報当局への取り締まりを強化している。香港紙「星島日報」の5月15日の報道によると、習近平の元部下である王小洪は、党中央国家安全委員会弁公室の常務副主任に昇任した。王は、将来的に同弁公室トップである常務主任になる公算が非常に大きいとされた。

 王は2016年5月から公安部副部長を務め、公安当局内の序列ではナンバー6だった。党中央国家安全委員会弁公室の常務副主任への就任によって、公安当局での序列がナンバー4と急進した。

 習近平が1990年〜2002年まで福建省福州市党委員会書記や福建省長の在任中、王小洪は福州市公安局副局長、市党委員会副書記、公安局長、福建省公安庁副庁長などを歴任した。

 王は2013年、河南省長補佐兼同省公安庁長に、15年北京市副市長兼同市公安局長、16年には公安部副部長と北京市副市長と同市公安局長を兼任した。

 王の非常に速い出世には、習近平が政法当局と国家安全当局で、江派に取って代わり自らの影響力を拡大する狙いがあると見て取れる。

 今年2月17日、政府系メディアの中央テレビは同ニュース番組「新聞聯播」で、習近平が国家安全工作座談会を開き、同会議で発言したと約5分間以上にわたって報道した。これは、2013年習近平が国家安全委員会を設立してから、委員らが初めてメディアで露出した。習当局は今まで、国家安全委員会について詳細に言及したことがなかった。2月の報道は、同委員会が実務展開への第一歩だとみられる。

 昨年12月9日に習近平は中央政治局会議において、『国家安全工作に関する意見』を審査し通過した。これは、国家安全当局を整頓し再建するシグナルだとみられる。習は、国家安全当局への指導権を国家安全委員会に集中させ、委員会の実権を拡大させていく目的があったとされる。

 今年5月、習近平が国家安全当局への再建に関する詳細が報道された。一部のメディアによると、新しい情報機関は国家安全委員会の管理の下に置かれる。また、人民解放軍内の情報機関もすべて一つの部署に集中され、軍トップの中央軍事委員会主席がその部署を直接管理する。情報筋によると、新たな軍内情報機関の将校任命は、現在と比べてさらに厳しくなる。このような調整では、中央軍事委員会の統一管理に有利だとした。

 また、習近平はアメリカの中央情報局(CIA)に倣い、国家安全部を「国家情報総局(署)」にと名称を改める計画があると報じられている。「国家情報総局」の業務は対外の反諜報活動と情報収集に限定され、内政に入らず、対内にも法的執行力を有しないという。この計画が事実であれば、今後、対内で「社会安定を維持する」道具でもある各県・各市の国家安全機関の人員が大幅に削減されるだろう。

 

 国家安全当局を整頓するのに、習近平の片腕である王岐山の元部下である陳文清がすでに昨年11月に国家安全部長に就任した。陳は2012年11月から、反腐敗運動を推進してきた「中央紀律検査委員会」の常務委員と副書記を務めていた。2015年4月に国家安全部の党委員会書記に赴任した。

 もう一つの動きも、習近平が国家安全当局への整頓を加速していると証明した。今年2月、中国最高検察院(最高検)は、国家安全部元副部長の馬健が収賄の疑いとして立件調査を始めたと発表した。馬は、2015年1月に失脚している。各報道を見ると、馬は江派中心人物の周永康、令計画と曽慶紅と深いつながりがある。

 馬健のほかに、国家安全部にいる江派人員の多くが、スキャンダラスに報じられたことがあり、前途が危うくなっている。例えば、同部元部長の許永躍は多数の政府高官と愛人関係を結ぶ女商人の李薇と不義の関係にあったと報じられた。周永康と非常に近い関係にある同部前部長の耿恵昌が在任中、陸忠偉副部長の秘書である李輝は、米国CIAなどに情報を提供する多重スパイであることが発覚された。許永躍と陸忠偉はすでに当局によって定年退職され、耿恵昌は昨年末全国政治協商会議香港マカオ台湾僑委員会の副主任に退任した。しかし江派との関係から、許らは将来習当局に追及される可能性が高いとみる。

習近平、江派特務工作機関を一掃する

 今年3月17日、大紀元は情報筋の情報提供で、当局に拘束された金融界大物の肖建華は取り調べで、江派に関する汚職や不正蓄財などを全部自白したと報じた。肖の自白で入手した情報を通して、中紀委は多くの江派「大トラ」の汚職証拠を掴んだ。習当局はこのほど、中紀委の「第2弾特別捜査プロジェクト」を始動させた。同プロジェクトのターゲットは江派ナンバー2、前国家主席の曽慶紅だという。

 この半年、特に近日、曽慶紅が掌握している香港マフィアへの取り締まり強化や、ビジネス界における高級スパイである肖建華と呉小暉の拘束、オーストラリアメディアが浸透工作を行うスパイ勢力への暴露などの動きをみると、習近平当局が江派の特務工作機関を全面的に粛清しているのを読み取れる。

 国内外特務工作、情報機関は江派が習近平当局に対抗していく上で重要なカードである。このため、それに対する全面的な粛清は、必死に反撃してきた江派側の完敗を意味する。同時に、曽慶紅と江沢民への逮捕と法的処罰の実現を阻む障害はまた一つ取り除かれたことを意味する。

(おわり)

(時事評論員・謝天奇、翻訳編集・張哲)