抗生物質の効かない細菌「スーパーバグ」が現れており、世界中で流行すれば人類に大きな危機をもたらしかねないと懸念されています。では、どうやってスーパーバグに対処すればよいのか、新しい方法を実践している科学者がいます。

スーパーバグにどうやって立ち向かうかについて、以下のThe Atlanticのムービー「How to Fight Superbugs」で説明されています。

How to Fight Superbugs - YouTube

毎年、抗生物質が効かない感染症で70万人の人が命を失っています。



このような抗生物質の効かない耐性菌「スーパーバグ」の出現は、私たちが想像している以上に深刻な危機をもたらしかねないと指摘されています。



しかし、抗生物質に耐性を持つバクテリア(細菌)の登場は、細菌を抗生物質で殺し封じ込めるというプロセスから、生物学的には避けられない現象です。



薬として投与された抗生物質は、体外に漏れ出して身近な環境に大量に存在しています。これらの抗生物質に、同じく身近な環境に大量に存在する細菌が触れることは避けられません。



投与された抗生物質の実に30%が体外の環境に放出されると試算されています。



耐性菌の誕生は、家畜への抗生物質投与から始まりました。



自然環境に存在する抗生物質に触れた一部の細菌は……



組織を変えることで、抗生物質への抵抗力を持つ細菌に変化しました。



これは「Antibiotic Resistance(抗生物質耐性)」と呼ばれています。



ある抗生物質に対して耐性を持った細菌が現れると、それを殺すために新しい抗生物質が開発されます。



しかし、新しい抗生物質に対する耐性を持つように変化した新しい細菌が生まれます。



抗生物質の耐性菌の進化のいたちごっこの末に、ついには抗生物質が働かないスーパーバグが誕生したというわけです。



耐性菌との戦いのために、これまでとは異なるアプローチをロンドン大学のアダム・ロバーツ博士が始めています。



それは、世界初の抗生物質であるペニシリンが発見された時代のような古いアプローチです。



これまで抗生物質は研究室で研究され発見されてきました。



これに対してロバーツ博士は、身近な環境にあるバクテリアを収集して、有効な抗生物質を探すというアプローチを採ります。木の根元にある土や……



ゴミ箱から出る汚水や……



犬の鼻や……



マウス・キーボード・スマートフォンなどの機器に付着したバクテリアを集めようとしています。



ロバーツ博士はありとあらゆる種類の細菌を収集するために「クラウドソーシング」という仕組みを活用しようと考え、世界中の人に、身の回りの細菌を送ってくれるように募っています。例えば、スマートフォンの画面の細菌を採取するために、綿棒で画面をこすります。



これだけで細菌が綿棒に付着するので、この綿棒をロバーツ博士に送ればいい、というわけです。



「世界中にまだ調べられたことのない細菌が数多く生息しており、耐性菌を殺す細菌が必ずいるはずだ」というのがロバーツ博士のアイデアで、新しい細菌の化学的配列を分類しようとしています。



そして分類した化学的配列を組み合わせることで、耐性菌への効き目を調べるという地道な作業が行われます。



1960年代以降、細菌を殺す抗生物質の開発は研究室内でのみ行われていたそうですが、自然環境でなければ生まれない細菌もあることから、ロバーツ博士はかつての原始的な手法を見直してスーパーバグに対抗できる手段を見つけ出そうというわけです。



とはいえ、ロバーツ博士が行う地道な作業は、あくまでスーパーバグの誕生のスピードを抑制するためのものだとのこと。スピードを鈍らせている間に、他の抜本的な化学技術の誕生を待つのが狙いです。



ロバーツ博士は2015年から「Swab and Send」というクラウドソーシングキャンペーンをFacebook上で行っています。参加者は5ポンド(約700円)支払うことでバクテリア検出キットを手に入れ、身近にある汚れた場所からバクテリアを採取して送ることができるとのこと。Swab and Sendキャンペーンが始まると、2カ月で1000ポンド(約14万円)分以上の綿棒が送られてきたそうで、集められた試料から抗生物質の効かない15種類の大腸菌株を殺す細菌18種類を発見することに成功しています。