サポーターが待ちに待ったホーム初勝利。清水はようやく今季4勝目を挙げた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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「今日は割りきったサッカーができました。ホームだと勝たなきゃいけないという強迫観念があって、人数をかけて攻めた裏をカウンターでやられたことが何回もあったので、後半に入る時、みんなに切り替えの意識をもう一度強調して言いました。0-0でもいいという割りきった戦いができたことが、一番の勝因だと思います」
 
 一昨年夏に清水に来てから、J1で初めてホームでの勝利を掴んだ鄭大世は、試合後にそう語った。
 
 試合内容も、まさにその言葉通りだった。ホームで甲府と戦うということで、もっとボールを支配する戦いを期待していたサポーターは多かったかもしれないが、清水は慎重なリスク管理を徹底させながら攻撃し、決して無理をしない。守備の際には、早めにブロックを作って甲府にボールを持たせる時間も多くなったが、ペナルティエリア内では何もさせなかった。
 
 前半は清水のシュートが2本、甲府が0本。0-0のまま後半に折り返したのは、清水にとってはまさに思惑通りだった。なぜなら今の清水にとっては、下手に早い時間に先制するよりも、後半まで0-0のほうが逃げに入る時間が短くなって勝利につながりやすいからだ。実際、ここまで勝った3試合はすべて前半を0-0で終えている。
 
 そして後半は、リスク管理の徹底は継続させながらジワジワと圧力を増し、セットプレーの回数を増やしていく。チアゴ・アウベスのキックは相変わらず質が高く、得点の匂いが濃くなり始めた60分、T・アウベスの左CKをファーサイドのカヌが競り合い、こぼれたボールを二見宏志が角度のないところから見事に突き刺し、先制した。形としても時間帯としても、ほぼ思惑通りの点の取り方だった。
 
 その後、守りに入りすぎたことは今後の課題だが、全員で声をかけ合って甲府に隙を与えず、決定機をひとつも与えないままタイムアップ。何度も痛い経験を重ねた末に、ようやく今季のホーム初勝利を掴んだ。
 
 このような勝ち方は、古くからの清水サポーターの美意識にはそぐわないかもしれない。終盤に接触プレーがあった際に、たっぷり時間を使って味方に一息つかせる選手が目立ったことも、清水にはあまり見られなかった一面だ。静岡の古くからのサッカーファンには、そうした勝ち方を嫌う人もいる。
 
 だが、キャプテンの鄭は「うちはそんなことを言っていられる立場じゃない」と言う。J2からJ1に戻ったばかりで、まだ残留できるかどうかも分からないチーム。しかもJ1ではホームで2年も勝てていない。プライドがどうこうと言っている状況ではないかもしれない。
 
 いずれにしても、この試合ではチーム全員が現実主義に徹して、勝てる戦い方の糸口を掴んだ。静岡県出身の竹内涼も「去年掴めていた“勝ち方”というのをJ1仕様に変えていかないといけない。今日の戦い方をベースとして、攻守に質を上げていけば良いと思います」と語る。
 
 清水の変化を、好ましいと考えるか、好ましくないと考えるかは、人それぞれのサッカー観だろう。ただ、チームとしてはプライドよりも結果を求めて、新たな道を踏み出し始めている。
 
取材・文:前島芳雄(スポーツライター)