各国が防衛や攻撃のために配備している軍用機にもコンピューター化が進み、今や戦闘機も大きな情報システムの一部に組み込まれるようになっています。そして現在研究開発が進められている将来の戦闘機の姿は、現在のように人間のパイロットが操縦する「親機」に、無人のドローン戦闘機が複数連なるという形になるものとみられています。

The future of the Air Force is fighter pilots leading drone swarms into battle | Popular Science

http://www.popsci.com/future-air-force-fighters-leading-drone-swarms

各国が防衛のために配備している戦闘機は、年々レベルが高くなる機体性能の向上要求や、複雑さを極めるシステムなどのおかげで、機体価格および周辺を含めた運用コストが高騰を続けています。それに加え、実戦時にに敵機に撃墜されてしまうと、高価な機体に加えてこれまでに育成してきた貴重なパイロットをも失ってしまうことになるため、さまざまな面でのデメリットが発生します。

そんな中、アメリカ空軍の一組織である空軍研究所と、ドローン機の開発を行っている防衛関連航空機メーカーのKratosが開発している将来の戦闘機は、ステルス性を備えて人間が操縦する一機1億ドル(約111億円)のジェット戦闘機に、それを自動で追尾する一機300万ドル(約3億3500万円)の無人ドローン機が複数追従する形式のものになっています。

この方式の利点は、なんといっても運用コストの低さと、人的・物的の両面で被害が軽減できるところにあるといえます。敵機との戦闘の中で被弾して機体とパイロットを喪失すること、そして激しい操縦で10G以上の強い旋回を行うことでブラックアウト(意識喪失)を起こし、場合によってはそのまま墜落してしまうというケースも起こり得る戦闘の現場において、無人ドローンを用いることはパイロットの人命を保護することが可能。さらに、機体の単価が低いこととパイロット不要という特性を活かし、ドローン戦闘機を大量に投入できるというメリットも生まれます。

F-16戦闘機のパイロットが訓練中に気絶、直後に安全装置が作動して墜落を回避する映像が機密解除で公開される - GIGAZINE



Kratosは、防衛用語で「喪失した場合にも替わりのものを投入できるほど安価なもの」という意味を持つ「attritable」という専門用語で表される無人ドローンを開発する能力がある企業。同社の無人ドローン部門を統括するSteve Fendley氏は「弊社が設立時から育んできた伝統は、地上で攻撃を受けた場合にも耐えられるほど強固な無人航空機システムを高くはない費用で開発することです。弊社の機体は、例え翼に攻撃を受けたとしても、その部分だけが破損し、残りの部分はパラシュートを使って着地します。その後、破損した部分だけを交換し、コストをかけずに再び飛ばすことが可能です」と語っています。

Kratosが開発しているドローン機「Mako」のイメージ図はこんな感じ。Kratosが製造している標的機「BQM-167A」を基本に設計されるもので、離陸時にはロケットエンジンを補助的に使用することで、長い滑走路を使わずに真上に離陸することが可能。離陸後は、ターボファンエンジンを使用して親機とタンデム飛行することになります。機体には複数の装備品や武器を搭載することが可能で、燃料の増量タンクを追加して航続距離を伸ばすことや、爆弾を投下したり、対空ミサイルを搭載して敵機を攻撃したりが可能になるとのこと。



Makoは高度20フィートから5万フィート(約6メートル〜1万5000メートル)という非常に幅広い範囲での飛行が可能で、最高速度は時速約1100km、飛行可能範囲は片道約1130km。機体価格は、仕様などにより150万ドルから200万ドル(約1億6500万円〜2億2200万円)とのことで、一機数百億円と言われる最新型の戦闘機などと比べると非常に低いコストで戦力を増強させることができるといえそう。

Makoよりも大きなサイズのドローン機「Valkyrie」は、全長約8.8メートル、翼端幅が約6.7メートルの機体。ビジネスジェット機などに用いられる燃費の良いターボファンエンジンを搭載することで、Makoよりも最高速度はわずかに低くなるものの、アメリカ大陸を横断できるほどの長い航続距離性能を備えています。Makoと同じように、高度50フィートから4万5000フィート(約15メートル〜1万3700メートル)の間を飛行可能で、任務後はパラシュートを使って地上に帰還させ、再利用することを可能にしています。



まだこれらの機体が実戦に投入される時期は不明ですが、その暁にはついに「無人ドローン同士の空中戦」が実現するのか、またはさらに近代的な情報戦が繰り広げられることになるのか、次世代の戦闘機の在り方すらも変えてしまうような概念が生まれることになりそうです。