東京の女性たちは勘違いをしているかもしれない。

結婚できれば、それでハッピーエンドだと。

だが、生活を共にし始めてからが結婚生活の本番だ。

ー人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、 記憶力の欠如によって再婚する。

フランスの劇作家、アルマン・サラクルーの言葉のように、「結婚維持」のキーワードは果たして、忍耐なのか?

この連載では、東京で「結婚維持活動」に勤しむリアルな夫婦の姿をお届けしよう。

今週は、夫に不満こそないものの、敷地内同居をしている姑に悩まされる結子の結婚維持活動を取材した。

結子は、待ち合わせ時間に30分ほど遅れてやって来た。




<今週の結婚維持活動に励む妻>
名前:結子
年齢:34歳
職業:専業主婦
結婚生活:6年
住まい:成城


なんていうか、支配型の姑なんです。


遅れてしまってごめんなさい。

私、夫の母が近くに住んでいるもので…ええ、敷地内同居です。建物はべつなんですが。急な用事を言いつけられることが多いんですよ。

今朝も急に、ご近所のお稽古仲間の家に届け物をして欲しいって、どうしてもお義母さまが仰るんです。

ええ、こうしたことなんてしょっちゅうですよ。

やっと下の子が幼稚園に入ってなんとか自分の時間が確保できる、ってなった途端に今度はお義母さまのご用事に追われる毎日です。

やれあそこへ行って限定のお菓子を買ってこいだの、生け花の展示会に付き合えだの。

自分の時間なんて、あってないようなものなんです。

それに、もう私のことを何から何まで支配しないと気が済まないんですよ。

やだごめんなさい、私ったら来た早々お義母さまの愚痴ばかり。

でもね、お使いやお付き合いは私別に苦ではないんです。お出かけは楽しいですし。

ただ、お義母さまの一番嫌なところって、人使いが荒いところじゃないんですよね。


人使いが荒いだけではない、姑の本性


じわじわと相手をコントロールする68歳。


夫とは、実は食事会で知り合って結婚しました。28歳の時です。

大学卒業後に銀行の一般職として就職し、ある程度仕事をしてきましたが、夫と出会ってトントン拍子に結婚が決まって、銀行は辞めました。

28歳での結婚って、今の東京では別に遅い結婚ではないと思うのですが、結婚のご挨拶に伺った時、お義母さまが凄くびっくりなさって。

「あら、28歳なの?随分とお若く見えるわ。孝太郎、もっと若い方と結婚するかと思った。」って仰ったんです。

この発言、少し、違和感感じませんか?

最初は若く見えることを褒められたと思ったんですが、”もっと若い方と結婚するかと思った”って発言、なんだか引っかかってしまって。

夫には2人のお姉さまがいるんですが、2人とも23歳とか24歳でご結婚されたとかで、暗に比べられていたみたいです。

お姉さまたちは大学を卒業したらお家で家事手伝いをしてすぐ嫁いだらしく、その後お2人の色々な自慢をされました。

「女とは、こうあるべき」という確固たる理念があるみたいです。




近隣に住んでいるお姉さま達はその理念を体現した存在っていうのかしら。お二方とも、非の打ち所がない専業主婦です。私にも見習って欲しいんでしょうね。

お義母さまって、すごく厳しいとか、すごく嫌な方というわけじゃないんですよ。

なんていうのかしら、物凄く人のこと褒めてくださるし。

ただ、褒めるんですけど、妙に含んだ表現をする方なんです。コントロールしようとする、って言った方が正しい表現かしら。

「結子さん、そのワンピースとっても華やかでいいわね。さすが若い方の感性だわ。でも今日は私みたいな年寄りも多く来るから、もっと大人しい色もいいかもしれないわね。」

そう言って、お姉さまが実家に置いていった古い形のネイビーのワンピースを手渡された時には、心底びっくりしました。絶対に着替えなくてはいけない雰囲気を、こう出すんです。

私の服、髪型、料理、子供の教育、夫への態度…。

一時が万事この調子でゆるやかに全部ご自分の思い通りになさるんです。しかも敷地内同居でお夕飯も一緒のことが多い。

最初の1年は、頭がおかしくなるかと思いました。


そんな妻が限界を感じた夜


義母より自分を選んでくれた夫


そんな状態が続いたせいか、私、円形脱毛症になってしまったんですよ。

夫のことが大好きだったし、子供達のためにと愚痴も言わずに我慢していたんですが…。

あれは、31歳の時でした。

ちょうど2人目が産まれて寝不足で、上の子もイヤイヤ期真っ最中だというのに、お義母さま、私の育児をあの調子でやんわり批判し続けてきたんです。

「あら、スマホ見せてるの?しょうがないわよね、赤ちゃん生まれたばかりで忙しいんだもの。でも…。」

「離乳食、美味しそう!でもまた同じものなのね。大変だものね。でも同じだから食べないのかもしれないわ。」

柔らかい口調で言ってくるんですけど、限界でしたね。挙句が円形脱毛症です。

また別の日に、お義母さまに色々言われている時に、夫もいたんですがボロボロ涙が溢れてきてしまって。

彼、びっくりしてすぐに話を聞いてくれました。

今までのこと全部話したら、「そんなに辛かったのに、気付いてやれなくてごめんな、今すぐに引っ越して親子4人だけで暮らそう」って言ってくれたんです。

お義母さんにも凄く毅然とした態度で文句を言ってくれて…。

納得いかない感じでしたけど、しぶしぶという雰囲気で謝られました。「口うるさかったのなら、謝るわ。ごめんなさいね」って。

彼、すごく優しいでしょう?本当に、素敵な夫なんです。

この間の結婚記念日には、お義母さんに子供2人を預けて、夫が『オザミトーキョー』に食事に連れて行ってくれました。




とっても夜景が綺麗な場所で、本当にロマンチックでした。

普段この成城エリア内でしか生活していないので、夫の職場の近くに行くことも、とっても新鮮で。

日頃のお義母さんへの不満や、子育てのストレスも忘れるくらい素敵な夜でした。

なんで夫が提案してくれたのに、引っ越さなかったかって?

やはり、夫の両親の土地に戸建てを建てさせてもらっていますし、ここからなら成城幼稚園も、初等学校も徒歩圏内なんです。

上の子は来年から小学生なので、今住所を変えるのも気が進まなくて…。

お義母さまは、はっきり申し上げて全く変わっていないし、近隣に住むお姉さまたちも本当に遠回しにですが、色々と私たち家族に干渉してきます。

かわいい弟の嫁を、自分達の思い通りにしたいんでしょうね。

だけど、いいんです。

あの時夫がこうして私の味方になって、俺の母親が嫌ならいつでも引っ越すとまで言ってくれたことが本当に嬉しかったんです。

彼と子供たちの為なら私、これからもきっと色々な理不尽に耐えられる。そんな風に思います。

▶NEXT:7月4日 火曜更新予定
結子の夫、孝太郎の結婚維持活動に迫る。

【これまでの結婚維持活動夫妻たち】
Vol.1:婚活よりも大変な、結婚生活の“維持”。その秘訣とは?
Vol.2:子供を持ちたい夫 vs 持ちたくない妻。結婚維持活動の妥結点とは?
Vol.3:余裕がある分、悩み多き専業主婦。私の存在価値を作るのは、夫ではない
Vol.4:「母親みたいな女性」と結婚したつもりの、夫の誤算と苦悩