降格圏から脱出するために絶対に落とせない一戦だったが……。自信を失ったまま、勝点3を献上してしまった。(C) J.LEAGUE PHOTOS

写真拡大 (全2枚)

[J1リーグ16節]広島 0-3 大宮/6月25日(日)/Eスタ
 
 これが“あの”広島なのか――。試合終了を告げるホイッスルと同時に鳴り響いたブーイングのなか、ピッチで苦悶の表情を浮かべる選手たちがやけにもの悲しげに見えた。そして、サポーターの怒りは最終的に出発を待つチームバスへも注がれた。
 
 降格圏に沈むチーム同士の対戦だった(16節キックオフ時点で広島が勝点10の17位、大宮が勝点11の16位)。だからこそ、直接対決の勝点3はいつもより価値がある。それをやすやすと相手に渡してしまった。
 
 ミックスゾーンに現われた森保一監督、そして選手たちは憔悴し切っていたと思う。90分、戦い抜いた疲労もあるだろう。だが、重要な試合を落とした現実に打ちのめされていたように感じる。
 
「応援してくれるサポーターに勝利を届けたいという気持ちで選手たちは戦ってくれた。悔いは勝てなかったこと。監督として僕自身足りないところがあるのだと思う」(森保監督)
 「なかなか勝てずに申し訳ないです」(柏好文)
 「……本当に申し訳ない気持ちです」(千葉和彦)
 
 シュート数は21対11(前半9:4、後半12:7)と、大宮のほぼ倍。決定機の数も6対3と勝っている。それでも、広島がゴールネットを揺らしたのはゼロ。対して、61分と90+4分と90+5分の3回も辛酸を舐めてしまった。
 
 前半は上手く押し込んだ。CB千葉、2ボランチの森粼和幸と青山敏弘の3人を中心に相手のハイプレスをいなす。左右ストッパーの水本裕貴、野上結貴、時にはGK林卓人もボールの避難所として機能した。
 
 そこからピッチを横断するサイドチェンジ、鋭い縦パスを供給してゴールへ迫った。仕方なくリトリートした大宮守備網の穴だけが目に付く。「得点を取りに行っていた」(柴粼晃誠)のがよく分かる。そんな展開だった。
 
 だが、「チャンスは作れていた」(柴粼)のにゴールは遠かった。そうして、徐々にトーンダウン。結果論だが、大宮の守備戦術を無効化して急所へとボールを打ち込んだ前半に先制できていれば、結果はまったく違ったものとなっていたはずだった。
 千葉は言う。「足りない部分はたくさんあるが、勝てていない状況下でみんなが迷いながらプレーしている部分もある。前半にボールを回せて、それが結果につながっていれば『次も』と積極的になれるが、今は結果が出ないからギアをもうひとつ上げ切る決断ができない」
 
 迷い、自信のなさが鎌首をもたげたのが後半だろう。大宮が布陣変更して再びハイプレスを敢行すると、安定していたパス回しが揺らぐ。前半のように外し切れない。そして、その綻びは61分に自陣低い位置でのミスとして顕在化し、先制点を許した。
 
 しかし、まだ30分ほど残っている。慌てる時間帯ではないはずだが……。失った自信はなかなか元に戻らない。沈んだメンタルを切り替えることができない。再び、千葉の言葉を借りる。
 
「先に失点して、まだ時間があるのにメンタルの回復が難しかった。最終盤に立て続けに失点したシーンも同じ。なかなか得点を奪えないなかで、後ろが頑張ってゼロで抑えなきゃいけない。でもこうして失点してしまって、最終ラインの人間として本当に申し訳ない」
 
 守備だけではない。攻撃面でも同様の焦り、迷いは見て取れた。決定機で枠に飛ばせない。それは時計の針が進むごとに顕著となった。「『ゴール前などの力が入る場面でいかに冷静になれるか』が問われていると思う」とは柏の弁だ。
 
「ひとつ勝てば、とは思うんですけど。勝つまでがすごく難しい。思い切ってやろうと声を掛けてはいるが、結果が出ないと『何を信じていいのか』というのもあるし」(千葉)。まさに負のループにはまり込んでしまっている。
 
 どうすれば浮上のきっかけを掴めるのか。何か策があるのかを聞くと、「教えてほしいですよ。それが分かるなら、教えてほしいです」。振り絞るように千葉は救いを求めた。
 
 抜本的な修正が必須なほど、広島の選手個々のプレーぶりは悪くない。ただ、選手が言うように結果が出なければ自信を取り戻すのは難しい。そして、これだけは言える。「下を向いていたら落ちていくだけ」(千葉)だ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)