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●悪玉菌として名高いヘリコバクター・ピロリ

新学期、新しい仕事環境にもようやく慣れてきたのに、体の調子が良くないと感じることはないだろうか。だが胃もたれや吐き気、空腹時に胃がキリキリするなど、胃に不快感を覚えることが多くなっても、「疲れているから」などと対策を練らず、放置している人も少なくないだろう。

ただ、これらの不調は体からのSOSであることが往々にしてある。特に胃炎や腸炎を繰り返している人は、ピロリ菌に感染しているかもしれない。聖マリアンナ医科大学 特任教授の井上肇医師にピロリ菌について聞いてみた。

○ピロリ菌の正体

ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)で、略して「ピロリ」と呼ぶ。胃の中(詳しくは胃粘膜上)に細菌が潜んでいるということは100年以上前くらいから言われ続けていたが、実際に認められるまでにはいたらなかった。胃の中は極めて強い酸が存在しているおり、この中で細菌が常に生き抜いて、増殖できるなどということは誰も思っていなかったためだ。

「ですが1980年代になり、この胃の中に潜む細菌がヘリコバクター・ピロリ菌であることが初めて認められたのです。先にお伝えしておきますが、細菌のすべてが体に悪いとは限りません。逆に体に常在してくれているおかげで、他のばい菌から体を防御する善玉の細菌もいます。皮膚の常在細菌(表皮ブドウ球菌やウイルスまで)、腸内の常在菌(乳酸菌)などが有名です」

逆に言えば、善玉の微生物(細菌)で健康な体を維持している(体が守られている)と考えた方がよい。その中でも、いくつかの細菌やウイルスが体に悪影響を及ぼす病原微生物として働いていると考えた方が正しいだろう。

そしてヘリコバクター・ピロリは悪玉の菌として有名。ヘリコバクター・ピロリが逆流性食道炎を予防しているなどという報告も一部されているが、胃がんを誘発する可能性のある菌である以上、除菌するに越したことはないだろう。

●ママから子どもへの「口うつし」も危険?

ヘリコバクター・ピロリに感染すると、全例が胃腸症状を示すと思われがちだが、症状が発症するのは3割程度と言われている。保菌していても、大半が何も症状が出ていないケースがほとんどとのこと。

「感染した場合の症状ですが、通常の消化性胃・十二指腸潰瘍と同様で、食後(胃潰瘍)、食前(十二指腸潰瘍)の胃痛や胃部不快感を特徴とします。重症化すれば、吐血やタール便といった下血を認めます」

○ヘリコバクターの感染経路

ヘリコバクターの感染経路は未だに明確にわかっていない。経口感染であることは間違いないが、「いつ」「どうやって」感染したのかという詳細については不明のままだ。

「主な感染は家族性で、母子感染が知られています。幼児に食事を与える際には注意が必要でしょう。この菌自体は酸性下でも生き延び、増殖できる特殊な性質を持っていますが、胃内の酸性度が低ければヘリコバクター・ピロリがより生きやすい環境になります。幼児などは胃内の酸性度が比較的弱いので、感染リスクは高いと考えられています」と井上医師は話す。

一番の恐怖は、ヘリコバクター感染が消化器であれば胃がんの原因になること。同時に子宮がんのリスクを上昇させることも知られている。ヘリコバクター・ピロリは、発がん微生物として初めて知られた細菌であるため、注意が必要だ。その他、特発性血小板減少性紫斑病やある種のリンパ腫に影響することも明らかになりつつあるとのこと。

○ピロリ菌の有無を調べる方法

ピロリ菌の検査方法にはいくつか種類があり、複数の検査を行うことで正確な診断につなげる。基本は、鼻や口から吐く息の中にヘリコバクター・ピロリが生存するときに放出するガスの有無を検査したり、内視鏡で直接ヘリコバクター・ピロリの存在を胃粘膜上で確かめたりする方法など。これらの検査は消化器内科で可能となっている。

●菌の具体的な除去法&予防策は

ヘリコバクター・ピロリの除菌は重要で、基本的には2種類の抗生物質、1種類の酸分泌抑制薬を併用することで除菌を試みる。最近は耐性菌も増えてきており、1回の除菌では成功しないケースも30%くらいあるという。こういった場合には、新たな抗菌剤を用いて除菌を試みる。

近年は治療の際、ある種類のヨーグルト(乳酸菌)を治療期間中に摂取させれば、除菌率が向上することも知られている。いずれも、耐性菌を生み出さぬよう中断せずにしっかりと治療することが重要となる。

「現在、『除菌後のヘリコバクター・ピロリの感染予防』といって、いろいろな食材の利用が叫ばれていますが、動物実験レベルでの効果をうたっているだけで、実際の臨床への適用がどれだけ効果的かはまだ明らかではありません。しかし近年、乳酸菌の一部にさまざまな疾病予防の効果、疾病の進行抑制、疾病の治療補助効果があることが知られています。ヘリコバクター・ピロリ感染においても例外でなく、乳酸菌には大きな期待が寄せられています」

胃もたれやキリキリした症状を「いつものこと」とせず、この機会に検査を受けてみるのもいいかもしれない。

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