苦手な仕事の担当に。どう向き合う?

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問題:未経験の部署へ異動することになった。自分にできるだろうか。どう思えばいい?

■京セラセオリーなら――まずはやってみる

人事異動で自分が苦手だと思っている仕事を任されたら、あきらめるしかないのだろうか。

「若い人は、何でもやってみたらいい。自分でこれは苦手、これは得意と決めてしまうのはもったいない」

とアドバイスするのは京セラの山口悟郎社長だ。

「僕は営業の経験しかないけれど、営業の中ではいろいろと担当が替わり、そのたびに不安になったものです。実際、担当エリアが関東から関西になったときは相当に苦労しました。関西の電機メーカーは関東に比べてずっとシビアですからね(笑)。でも、やっていくうちに人脈が広がり、いい成績をあげることができました。経験もないのに苦手と考えるのは、単なる思い込みです。やってみれば案外うまくいくもの。やらない理由を並べるより、一歩踏み出してみることが大事だと思います」

JAL客室本部の瀬貫由美氏も、苦手意識のあった仕事に担当になって戸惑いを感じた経験がある。JALはグループ会社も含め各部門の社員を選抜して、1年間、フィロソフィ教育の進行役として社員の意識改革にあたらせている。進行役に選ばれるのは名誉なことだが、客室乗務員としてのキャリアが長い瀬貫氏は、大役に不安を抱えていた。

「進行役は社員のみなさんとともに2時間、JALのフィロソフィについて語ります。受講するのは、多いときで80人くらい。フライト中に1対1でお客様とお話しするのは慣れていますが、大勢の前で話すのは恥ずかしくて、腰が引けていました」

それでも挑戦したのは、稲盛和夫氏の著書の中に「まずはその仕事を好きになる努力をしよう」という言葉を見つけたからだ。

「進行役になれば、部署の壁を超えて多くの仲間と出会い、一体感を味わうことができます。その喜びを意識するようにしたら、大勢の人の前で話すことが苦ではなくなりました。いまでも人前で話すのは上手ではないかもしれません。前向きに取り組めたのは、単純にその仕事を好きになったからだと思います」

■セブン思考なら――本気でやれば同じ

それぞれの仕事の面白みを見つけ出して苦手意識を払拭する京セラ・JALセオリーに対して、セブン思考では、仕事の本質的な面白さはどれも変わらないと考える。

セブン銀行の設立時は、本体の流通からも人がきてプロジェクトチームをつくった。流通業界にどっぷり浸かっていた人にとって、銀行業は未知の世界。内心では、自分には向いていないと考えていた社員もいたはずだ。しかし、実際は向き不向きはほとんど影響しなかった。セブン銀行代表取締役会長の安齋隆氏は説明する。

「セブン−イレブンもセブン銀行も、仕事は共通しています。セブン−イレブンは独自の商品開発をして、製造にも深く関わっている。私たちがATMを開発したときも、基本的には同じやり方ですよ。お店のリクルートや、オーナーさんにアドバイスをするオペレーションの部分もかぶっている部分が多い。結局、業種や職種が違っても、仕事のキモは変わりません。そう考えると、あの仕事は得意だが、これは苦手という人は疑わしい。仕事の本質を押さえていれば、どの仕事だって結果を残せるんじゃないですか」

ちなみにセブン−イレブンからセブン銀行に出向した後、セブン−イレブンに戻らずに、そのままセブン銀行に残ることを選んだ社員も多かった。前向きに取り組めば、やりがいは見つかるのだ。

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山口悟郎
京セラ社長。1978年、同志社大工学部卒。京都セラミック(現京セラ)入社。半導体部品国内営業部長、半導体部品事業本部長などを経て2013年から現職。
 
瀬貫由美
日本航空客室本部チーフキャビンアテンダント。客室乗務員歴は20年超。2014年、JALフィロソフィ教育の進行役を務め、社員の意識改革にあたった。
 
安齋 隆
セブン銀行会長。1963年、東北大学法学部卒業後、日本銀行入行。2001年にアイワイバンク銀行(現セブン銀行)設立、社長に就任、10年から現職。
 

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(ジャーナリスト 村上 敬 撮影=的野弘路、尾関裕士)